住宅ローンの借入額と返済プランはボーナス、退職金なしで考える
牧野寿和
2016/09/06
ボーナス併用払いはおすすめしません
住宅ローンの返済方法には、毎月一定額を返済する方法と、ボーナス月はいつもの月より多く返済する「ボーナス併用払いの方法」があります。
結論から申し上げてしまうと、私が住宅ローンの相談を受ける場合、お客さまにはボーナス併用払いはおすすめしませんし、ボーナスをあてにしなくてもいい返済計画を立てることが大切とお話ししています。
相談に見えるお客さまのなかには、ボーナス併用払いは、毎月の返済に加えてボーナス時には多めに返済するわけですから、年間の返済額が多くなってローンを早く返し終えられると考えておられる方もいらっしゃいます。
ですが、ボーナス併用払いにした場合も、そうしない場合も、毎年の返済額はほぼ同じです(正確には、ボーナス併用払いのほうが若干多くなります)。
ボーナス併用払いは、返済額を増やすものではなく、返済のしかたを変えるものだからです。ボーナス併用払いをしない場合は、年間の返済額を12カ月で均等に支払うのですが、ボーナス併用払いの場合は、ボーナス時の支払いを多めにするため、その分毎月の返済額が少なくなるということです。
ボーナス併用払いのデメリット
ただし、ボーナス併用払いには、明らかなデメリットがあります。それは、「ボーナスは必ずもらえるものではない」という点です。ボーナスをあてにして返済計画を立てていると、もしボーナスが出なかった場合、もしくは想定していたよりも少なかった場合、家計をやり繰りして返済額を捻出しなければならないということになりかねません。
ですから、返済プランはもちろん、借入金額についてもボーナスがゼロでも困らない前提で考えることをおすすめしているのです。
退職金をあてにすると家計は破綻する
それから、退職金をあてにするのも危険です。
これまでファイナンシャルプランナーとして、退職金の使い方について数多くの相談を受けてきました。
住宅ローンを退職金で完済する想定で、老後をシミュレーションしてみると、老齢厚生年金や老齢基礎年金のみで生計を立てる予定の人は、ほとんどの場合、70歳代後半あたりで家計が破たんすることになります。公的年金に加えて企業年金を受給予定の人も、破たんが4、5年先に延びるだけです。
返済プランの前に、何よりも現役中に完済できる額を上限に融資を受けることが大切です。
住宅ローン控除の申請を忘れずに
返済負担を少しでも減らすためにも、住宅ローン控除の申請を忘れないようにしましょう。住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてマイホームを取得(新築・購入・増改築リフォームなども対象)すると、各年末のローン残高の1%が10年にわたり所得税から控除される制度です(長期優良住宅または低炭素住宅の場合はさらに優遇されます)。
現行では、
・各年末のローン残高×控除率(1%)=1年間の控除額(最大40万円)
・控除期間:10年間
となっていて、最大の控除額は40万円×10年=400万円となります。
たとえば、住宅を購入して2年目の年末のローン残高が3200万円で、その年の所得税の納付額が35万円の場合、
3200万円×控除率(1%)=所得税の控除額32万円
35万円−32万円=3万円
となり、本来35万円を納付すべきところが、わずか3万円ですむことになります。
控除額より所得税額が低い場合は所得税がゼロとなり、控除しきれなかった分は翌年の住民税から減額されます(この制度の適用は、2019年6月30日までの予定です)。
自分で確定申告することが必要
住宅ローン控除の適用を受けるには、入居の翌年の3月15日までに自分で税務署に確定申告をしなければなりません(給与所得者であっても同じです)。自分で確定申告をしなければ、一切税金は戻ってきませんので注意してください。給与所得者の場合、確定申告が必要なのは1年目だけで、2年目以降は勤務先で年末調整してもらいます。
なお、1年目に確定申告し忘れた場合、給与所得者は5年間、自営業者は1年間さかのぼって請求できるので、あきらめずに申告しましょう。
住まい給付金もある
住宅ローン控除は、支払っている所得税等から控除するしくみのため、収入が低いほどその効果は小さくなります。
そこで2019年6月までの期間で、「すまい給付金」 という制度が施行されています。
同じ年収でも「専業主婦(夫)家庭」か「共働き家庭」か、などによって給付額は異なりますが、目安として、年収425万円以下の場合は30万円。425万円超475万円以下の場合は20万円。475万円超510万円以下の場合、10万円が給付されます。
すまい給付金を受け取るには、自分で給付申請書を作成し、申請することになります。詳しくはすまい給付金のホームページ( http://sumai-kyufu.jp/ )でご確認ください
★★★こちらも併せてお読みください★★★
住宅ローンの返済はボーナス併用払いに頼ってはいけない
家計に余裕があるうちに繰り上げ返済する、は正しいか?
住宅ローンで後悔しないために、まず理解しておくこと
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。