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住宅取得資金の贈与を賢く受ける方法(4/6)

住宅取得資金の贈与の特例ー相続時精算課税制度とは?

土屋裕昭土屋裕昭

2016/01/31

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なぜ贈与税の税率は高いのか?

 もともと、贈与税は「相続税の課税を逃れるための生前贈与を防ぐ」という趣旨で、高い税率が課せられているものです。そのため、親から子など、次世代への財産の受け渡しは相続を通じて行なうことが一般的となっています。

 とはいえ、高齢化社会が進展したことでスムーズに次世代への相続が行なわれていない実態もあり、贈与税と相続税の垣根を取り払うことで、次世代へ早めに財産を受け継ぐために創設されたのが相続時精算課税制度です。

相続時精算課税制度の中身

 相続時精算課税制度が適用されるのは、贈与する側が60歳以上の父母または祖父母で、贈与を受ける側が20歳以上の子または孫などの直系卑属の場合と定められています。年齢に関しては贈与が行なわれる年の1月1日が基準となります。

 このような条件があることから、配偶者の親からの贈与や、成人していない子・孫への贈与には適用されません。また、父親からは相続時精算課税制度を適用して、母親からは一般贈与を適用することができるなど、汎用性に富んでいるのも特徴です。

 しかし、この相続時精算課税制度は自動的に適用されるわけではなく、届出をしなければ一般贈与とみなされ、贈与税が課税されます。

 相続時精算課税制度を選択した場合、その贈与者から贈与された金額を毎年累積し、累積された金額が2500万円を超えた場合に、その超えた金額の20パーセントを贈与税として仮納税し、相続発生時に精算ということになります。

 つまり、父親・母親から2500万円ずつの合計5000万円までの贈与は、相続時精算課税制度を適用することで相続開始まで贈与税を払う必要がないということです。

相続時精算課税制度の注意点

 このように相続前に財産の有効利用ができる相続時精算課税制度ですが、注意点があります。それは、相続時精算課税制度を一度適用してしまうと、その対象となる贈与する側からの贈与について、相続が始まるまでずっと相続時精算課税制度が続くことになります。

 つまり、相続時精算課税制度を一度適用すると、それ以降年間110万円が基礎控除される一般贈与が適用されなくなるということです。

 とはいえ、よほどの資産家でない限り、この適用については心配する必要はないかもしれません。この相続時精算課税制度の大きな目的のひとつに、日本経済の活性化があります。金融資産を持っている高齢者から子・孫世代に資産を移行することで、消費の活性化につなげようというものです。2500万円という高額が設定されているのも、住宅のような大きな買い物を促進することがいちばんの狙いです。

 実際、相続の際に相続税の課税はないだろうと思われる一般的な資産状況の人にとっては、相続時精算課税制度を積極的に活用しても特段問題はないかと思います。むしろ、この制度を活用することで、相続まで待たずに子・孫世代にお金を回すことが結果的にいいことになると思います。

 逆に、相続税が課税される可能性がある資産家は、要検討の制度です。というのも、相続税に関する諸制度は年々複雑化され、どの制度をどう使うかでかなりの損得が出てきてしまいます。相続時精算課税制度を適用するのがいいか、一般贈与のままにしておくのがいいか、それともほかの方法があるのか、一度、税理士などの専門家に相談し、アドバイスをもらいましょう。

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この記事を書いた人

税理士

CFP、宅地建物取引士 米国アラスカ出身。一般企業勤務を経て簿記知識ゼロから3年で税理士試験合格。著書に「いちばんわかりやすい確定申告の書き方」(ダイヤモンド社)など多数。HP「相続税申告のツチヤ」にはお客様の声50件超掲載。

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