ゼロから学ぶ住宅ローン控除の仕組み
高橋敏則
2016/01/30
年末のローン残高の1パーセントが控除される
住宅ローン控除制度は、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれるものです。住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、10年間に渡り所得税額(一部住民税)から一定税額を控除するという制度です。
現在の計算式は、「住宅借入金の年末残高(4000万円が限度額)×1パーセント」が控除額となり、その控除が10年間続くというわけです。つまり、10年間で最大400万円の控除となります。
たとえば、2015年1月に新しい家に住み始め、住宅ローンの年末残高が3000万円だったとします。この場合、3000万円×1パーセント=30万円が控除額となります。翌年の年末残高が2500万円に減ったとすると、平成28年に関しては25万円が控除されます。
このとき、この控除は自分が納めた所得税(一部住民税)の範囲内が対象となりますので、住宅ローン控除額が30万円と計算される場合でも、納税額が20万円の場合は20万円までが還付されるという仕組みです。
ちなみにこの制度は、2019年(平成31年)6月までに新しい家に転居した人が対象となっています。もちろん、法改正が行なわれて延長される可能性はあります。
購入以外にも増改築にも適用される
この住宅ローン控除、自分の住んでいる家もしくは増改築後6カ月以内に住む家(自分が所有していることが条件)に100万円を超える費用がかかる増改築をした場合には、増改築部分について住宅ローン控除が適用(計算式は同じ)されます。
このときに注意したいのは、店舗併用住宅などでは増改築費用の2分の1以上が居住部分にあてられるものでないと適用されない点です。
たとえば、店舗部分に60万円、居住部分に50万円の増改築を行なった場合、合計で100万円を超えていますが、居住部分にかかった費用が全体の2分の1未満ですので、住宅ローン控除は適用されません。また、自分の所有していない家屋で、家族や親戚名義の家屋への増改築も適用外となります。
この増改築の住宅ローン控除には、例外があります。それが省エネ工事とバリアフリー工事です。これらの工事については「特定増改築等」という扱いとなり、増改築費用が50万円(補助金を利用する場合は控除後の額)を超える工事を、返済期間が5年以上の住宅ローンで行なった場合に、住宅借入金年末残高が1000万円を限度として所得税から一定額されます。控除される金額の限度額は、5年間で62万5000円と定められています。
認定住宅における特別控除
最後に、認定住宅の特別控除を紹介します。建築請負契約により住宅を新築したり建売住宅を購入したりしたときに、これらの住宅が認定長期優良住宅か認定低炭素住宅に該当している場合、認定住宅と呼び、一般住宅の住宅ローン控除よりも控除額が大きくなるという特別な制度です。
ちなみに、認定長期優良住宅とは「200年住宅」とも呼ばれる「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の規定により認められた住宅で、認定低炭素住宅とは都市の低炭素化の促進に関する法律」により低炭素住宅として認められた住宅を指します。
一般住宅では、対象となる住宅借入金の年末残高が4000万円を限度としていましたが、認定住宅における特別控除については5000万円までが認められるため、10年間の最大控除額が500万円となります。
このように、住宅ローン控除を知っておくことで、自分が納めた税金が還付されますので、住宅ローンを組んだときには必ずこの控除の申告を行ないましょう。
この記事を書いた人
公認会計士、税理士
1979年、中央大学商学部卒業。80年、公認会計士二次試験合格。アーンスト・アンド・ウイニー会計事務所、監査法人を経て独立、高橋会計事務所を開設し、現在に至る。経理・財務・税務の指導ほか、中小企業の経営コンサルティングに従事。 「専門知識がなくてもわかる解説」が人気となり、税務研究会、企業の社内研修会など各種セミナーの講師として活躍するほか、ビジネス書の著者としても多くの書籍を執筆している。 著書に「相続・贈与でトクする100の節税アイデア」「小さな会社の税務がすべてわかる本」、「小さな会社と個人事業主の消費税がすべてわかる本」 (ダイヤモンド社)、「不動産オーナの節税対策/知っておきたい土地建物の税金」(清文社)、「法人税/有利選択の実務」「消費税/有利選択の実務」(税務研究会)など多数