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相続税対策の基礎知識(4/6)

3つのステップでできる相続税額の計算

高橋敏則高橋敏則

2016/02/22

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基本的な計算の仕組みはむずかしくない

相続税の計算というと難解で複雑な計算を思い浮かべる人も多いと思います。たしかに実際の税額を計算しようとすると、財産の洗い出しなどの手間がかかりますが、基本的な計算の仕組みはそれほどむずかしくありません。ここでは、相続税対策のやり方を理解するためにも、相続税の計算方法を理解しておきましょう。

相続税は3つのステップで計算する

相続税の計算は3つのステップで行ないます。

具体的には、(1)課税価格の計算、(2)相続税の総額の計算、(3)各人の納付税額の計算、の3つです。順を追って説明していきましょう。

ステップ1 課税価格を計算する

課税価格とは、課税される物件の価格のことで、ここでは相続財産の価格を意味します。課税価格の計算とは、相続税の対象となる財産の金額を計算することです。

課税価格は、「相続により取得した財産(現金、預金や不動産など)」に「相続により取得したとみなされる財産(生命保険金や死亡退職金など)」を加え、「債務(借金など)と葬式費用」を差し引き、さらに「相続開始前3年以内の贈与財産」を加えて計算します。

相続人が、相続開始前3年以内に被相続人から財産を贈与されている場合、つまり贈与を受けてから3年以内に被相続人が亡くなった場合には、その贈与財産は相続税の対象として課税価格に加えることになっています。

ステップ2 相続税の総額を計算する

ステップ2の相続税の総額は、次のように計算します。

(a)ステップ1で計算した課税価格から「遺産に係る基礎控除額」(*)を差し引いて「課税遺産総額」を求めます。
(b)次に、その課税遺産総額をもとに各法定相続人の「法定相続財産」を計算します。
(c)それぞれの法定相続財産に相続税の税率をかけて、それぞれの税額を合計して計算します。

(*)基礎控除とは、税金の額を計算するときに、すべての納税者につき課税標準(税額算定の基準とする課税物件の数量・価格など)から一定の金額を差し引くことで、基礎控除の額を超える部分の課税標準に対してのみ課税されることになります。

遺産に係る基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人数」です。たとえば、相続人が配偶者と子どもふたりの合計3人の場合の基礎控除額は、

3000万円+600万円×3=4800万円

となります。この場合、課税価格が4800万円以下であれば相続税はかかりませんが、4800万円を超えた部分には相続税がかかります。

法定相続財産は、課税遺産総額に各法定相続人の法定相続分(民法が定めている相続によって財産を取得できる割合)をかけて計算します。相続税は、それぞれの相続人が実際にどれだけの財産を相続したかとは関係なく、法定相続人が民法で定めている割合に応じて財産を相続したものとみなして計算することになっています。

ステップ3 各相続人の納付税額を計算する

各相続人の納付税額がいくらになるかの計算は、(a)各人の相続税額の計算、(b)相続税額の加算、(c)各種の税額控除という順で行ないます。

各人の相続税額は、「相続税の総額」に「各人が実際に相続によって取得した財産が課税価格に占める割合」をかけて計算します。また、相続税額の加算は、相続人が被相続人の一親等の血族および配偶者以外の者である場合に、先に計算した各人の相続税額に20パーセントを加算するというものです。

なお、相続税の各種の税額控除は次の6つがあり、相続税額の加算後の税額から差し引きます。

・贈与税控除額
・配偶者の税額控除
・未成年控除
・障害者控除
・相次相続控除
・外国税額控除

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この記事を書いた人

公認会計士、税理士

1979年、中央大学商学部卒業。80年、公認会計士二次試験合格。アーンスト・アンド・ウイニー会計事務所、監査法人を経て独立、高橋会計事務所を開設し、現在に至る。経理・財務・税務の指導ほか、中小企業の経営コンサルティングに従事。 「専門知識がなくてもわかる解説」が人気となり、税務研究会、企業の社内研修会など各種セミナーの講師として活躍するほか、ビジネス書の著者としても多くの書籍を執筆している。 著書に「相続・贈与でトクする100の節税アイデア」「小さな会社の税務がすべてわかる本」、「小さな会社と個人事業主の消費税がすべてわかる本」 (ダイヤモンド社)、「不動産オーナの節税対策/知っておきたい土地建物の税金」(清文社)、「法人税/有利選択の実務」「消費税/有利選択の実務」(税務研究会)など多数

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