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離れた親の急な入院――知っておきたいお金、準備、日頃の備えとは?

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2021/08/31

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イメージ/©︎tatunami・123RF

入院の知らせは突然やってくる

全国の新型コロナ感染者数が2万5000人を超える日も当たり前となった日本。病床のひっ迫が叫ばれているなか、ベッドが足りず、医療崩壊が危惧されている。

ところが、経済開発協力機構(OECD)の調査によれば、米国は1000人あたりの病床数が2.9床、欧州では2.5床に対して、日本は13.0床と、実に4倍以上の病床数になっている。それでも入院ベッド数が足りないのは、新型コロナは、ICU(集中治療室)や医師、看護師の人出不足も絡んでいることがある。

こうした新型コロナも心配だが、それ以上に夏場は熱中症で救急搬送される人も多い。消防庁によれば、今年(2021年)の7月、熱中症によって救急搬送されたのは2万1372人で、56.7%が高齢者だ。そのうち入院診療が必要な人は7425人、重症の患者は546人だった。

熱中症による緊急搬送人員 年齢区分別(構成比)


出典/消防庁「令和3年7月の熱中症による救急搬送状況の概要」

新型コロナに限らず、どのタイミングで、家族が緊急入院するか分からない昨今、入院にかかわるお金の問題は誰にでも関係する。突然の入院で一番困るのは、離れて暮らしている親、なかでも一人暮らしの高齢の親が倒れたという場合だ。

80代の一人暮らしの母親と離れて暮らす50代の男性Aさんの体験。

「7月の終わり、暑い中、買い物へ出かけて帰ってきたところで頭が痛くなり、高熱が出たことから自分で119番通報したということでした」

と話すAさん。しかし、母親の住む実家には緊急連絡先など明確になっておらず、なんとかAさんの連絡先を見つけた救急隊員から連絡があっという。

「救急隊員の方からは『緊急連絡先が見つからず困った』と言われました。そして、矢継ぎ早に『持病はありますか?』『普段から飲んでいる薬はありますか?』と質問されたのですが、すぐに答えられず、困ってしまいました」(Aさん)

日頃、親と連絡は取り合っていたものの、大事なことは聞いていなかったとAさんは反省しきりだ。

一人暮らしでも困らない入院の「備え」

こうしたケースでは、家族に持病がある場合、診察時間内であれば、かかりつけの医療機関に連絡して、主治医に症状を伝え、対応を仰ぐのが基本。とくに高齢者の親族と離れて暮らしている人は、

(1)家族の緊急連絡先
(2)主治医の連絡先
(3)診察券や保険証の保管場所

の3つについては、居間の壁などに貼っておくなど、万が一の備えておく必要がある。

Aさんの母親は熱中症と診断され、数日の入院で済んだが、脳梗塞などの『重病や緊急に手術が必要なケース』では、家族がやらなければならないことが増える。

「自分は近県に住んでいたので、幸い車で1時間もかからず、病院に駆けつけられましたが、慌てていたので入院時に必要なものも何も持っていなかったので、実家に取りに行きました。でも、何を持っていったらよいのか分からなくて……」(Aさん)

救急車で搬送された際、最低限必要なものは次のようなものになる。

・保険証や診察券
・普段から内服している薬
・お薬手帳
・現金
・運ばれる人の靴 など

また、入院時に必要な大ざっぱなものは、看護師が教えてくれるが、さらに着替え、履物など身の回りのものや、大まかな入院費用など細かいことについては、病院の相談室などにいる「医療ソーシャルワーカー」へ相談をすれば教えてくれる。

さらに費用としては入院時に『入院保証金』として、5万~10万円程度必要になることもあり、多めの現金か、クレジットカードなどを持っていくと安心だ。
 
とくに今はコロナ禍で、病室に家族が入れないケースがほとんど。入院してしまえば、病院の受付や看護師に衣類など必要なものを渡すだけで、直接、顔を合わせることができない。気になることがあれば、医療ソーシャルワーカーに相談することになる。

大部屋と個室、どっちに入ったらよいか?

いざ入院となると、病室は大部屋といわれる6人部屋に入るのが一般的。しかし、なるべく人がいないところで、と思う人もいるだろう。

こうした4床以下の部屋や個室へ入ると、「特別療養環境室料」と呼ばれるいわゆる「差額ベッド代」が発生する。差額ベッド代は、病院によって異なるが、個室では1日1万円以上することも珍しくない。単純に個室などに10日入院すれば、10万円以上支払うこともざらだ。

そのため予算があれば、大部屋か、個室かどっちにするか迷うところ。しかし、なんでも個室がいいというわけでもない。やはり、入院する病気によって、個室のほうがよいというものもある。

具体的には、感染症や泌尿器系、胃腸に関する病気の場合、一人で排泄ができないこともある。痛みやうめき声を伴うケースもあるので、こういった病では個室を選べば周囲を気にすることがなくなるだろう。

一方、骨折など、外傷では体調が日に日に回復する。そのため同室の患者と会話をして、気を紛らわせることができる6人部屋に入るほうがいい。ただし、大部屋はいびきや歯ぎしりなど、就寝時の問題もあるので、耳栓を用意するなど対策をしておくといいだろう。 

希望もしていないのに個室へ入れられたら…

病院側から「コロナの心配もあって、個室に入っていただけないと転院してもらうかもしれません」と言われ、差額ベッド代金も1万円がかかる個室に入院させました――。

コロナ禍の今、こうした理由でやむなく個室に家族を入院させたという人もいる。だが、こうしたケースでは、差額ベッド代金を払わなくてもよい場合もある。

「病院の都合で個室になった場合は、差額ベッド代金を支払う義務はありません。また、入院時の同意書にサインしていない場合も同様に支払う義務はありません。損をしないためにもご家族は同意書をよく読むようにしてください」

こう話すのは大手病院に務める医療ソーシャルワーカーだ。

入院時には、病院側から退院までの治療計画を記した「入院診療計画書」と検査、処置などに関する「同意書」が渡される。特に重要なのは「同意書」をよく読むことだという。

厚労省は差額ベッド代金の支払いが不要なケースをいくつか挙げ、次のように通知している。

・同意書に室料の記載がない
・同意書に患者側の署名がない
・免疫力が低下し、感染症に罹患する恐れがある
・保険適用の病室が満床である

こういった通知に該当するようであれば、病院と掛け合うことで、差額ベッド代金の支払い義務がなくなるケースも多いという。病院側と折り合いがつかないようであれば、管轄の地方厚生局へ連絡して問い合わせるのもひとつのやり方だ。

入院には、さまざまな事務手続きがあり、患者本人の希望もある。普段から「もしも入院する場合は保険証とお薬手帳はどこにある?」「個室と6人部屋、どっちがいいか?」など、面と向かって聞きづらいようであれば、日常会話からさりげなく聞いておくことが万一の備えになるだろう。

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この記事を書いた人

記者・ライター集団

政治、経済、ビジネス、マネーなどさまざまなジャンルを取材、執筆活動を行っているフリージャーナリスト、ライター、カメラマンなどによる叶舎LLC.の取材チーム。

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