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新型コロナでは特例措置もある チェックをしておきたい「契約者貸付制度」

平野 敦之平野 敦之

2021/07/12

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イメージ/©︎takasuu・123RF

家計の状況は失業やリストラ、ボーナスの減少などさまざまなことに影響を受けるため、こうした要因でお金の工面に苦労するケースも珍しくありません。

預貯金がなくなればやりくりが厳しい状況になりますが、金融機関などでお金を借りる前に確認したいことが加入している生命保険からお金を借りることができないかということです。それが「契約者貸付制度」です。

生命保険の契約者貸付制度とは?

生命保険の「契約者貸付制度」とは、自分が加入している生命保険の解約返戻金をもとにして、その一定の範囲内でお金を借りることのできる制度です。そのためお金が必要なときに加入している生命保険を解約する必要がありません。

お金に困ったときに保険を解約、その後生命保険に加入し直すと年齢の関係で保険料が高い、健康状態によっては新たに保険加入することができないこともあります。お金が必要で生命保険の解約を考えているときには、一度この制度の利用が可能かについてチェックしてみましょう。

解約返戻金をもとに貸付をするため、契約者貸付が可能になるのは貯蓄性のある積立タイプの生命保険です。主には終身保険や個人年金保険、養老保険、学資保険などが該当します。一般的に定期保険は掛け捨てタイプの保険に該当しますが、商品によっては一定期間に限り、解約返戻金が発生することがあります。

契約者貸付の借入限度額や金利

お金を借りるとなると気になるのは借りることのできる限度額や金利です。一般的に借入できる限度額は、契約している生命保険の解約返戻金の70~90%程度の範囲です。解約返戻金をもとにしているため、加入から日が浅いと保険料を多く支払っていないためお金が貯まっていません。その場合は契約者貸付の利用ができなかったり、借りることのできる限度額が少なくなることもあります。

金利については保険会社ごとに、また同じ保険会社でも保険契約をした時期などによって契約者貸付の金利は異なります。予定利率の高い時代の契約だと6%前後の貸付利率のこともありますが、2~3%台のケースもあります。保険会社によっては自社のHP上に契約者貸付が可能な保険商品や契約年次ごとの契約者貸付の金利を公開しているので確認してみてください。

貸付利率については条件次第ですが、カードローンなどを利用することを考えれば有利な点は他にもあります。

返済しないと保険失効も? メリットとデメリット

契約者貸付制度のメリットとデメリットについてもう少し掘り下げてみていきましょう。

<契約者貸付のメリット>
●一般的に他の融資などよりも金利が安いことが多い、解約返戻金が一定程度あれば他で借りることができなくても利用可能
●お金を借りる際に信用情報の確認や審査などはない
●返済に際して一括返済や分割返済、不定期での返済も可能(返済の自由度が高い)

お金を借りる人が心配することの一つが信用情報や審査ですが、契約者貸付については、この心配はありません。お金の入金も早ければ即日から数日でされるのでこのあたりもメリットといえるでしょう。

<契約者貸付のデメリット>
●契約して日が浅いと借入不可あるいは限度額が少ない
●返済をほったらかしておくと、保険契約が失効することもある
●複利で金利がかかる

契約者貸付はうるさい返済の催促があるわけではありません。お金のやりくりが大変なときにはどうしても返済が後回しになりがちです。ずっとほったらかしにしておくと契約が失効してしまうことがあります。

具体的には、元金と利息が解約返戻金を超えた後、保険会社が通知した金額を指定の期日までに返済しないと保険契約は失効となります。

コロナ禍に対応した契約者貸付の特例措置

生命保険契約では、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う各種の特別措置を実施しています。契約者貸付制度についても同様の措置が実施されており、期間限定ではありますが、多くの生命保険会社が契約者貸付の金利を0%にして対応しています。

期間や地域が限定されているので全国一律の対応ではありません。緊急事態宣言などが発動される都度に措置が出されているので対象になっているかどうかなども含めて確認するようにしてください。

返済時の注意点と活用方法

契約者貸付は返済の自由度が高く、ある意味では返済計画について自己管理が必要になります。なお、返済しないまま契約を解約すれば解約返戻金と相殺、返済途中で死亡することがあれば、死亡保険金で相殺される仕組みです。

契約者貸付制度の限度額は、保険料を払い込みが増えると増えていきます。例えばある月に契約者貸付の限度額を保険会社に確認したとして、翌月あるいは半年後、1年後には借入限度額が変わっています。契約者貸付が可能な契約か、可能であれば現時点でいくら借入が可能か確認しておくといいでしょう。制度を知らないと家計が大変なときに選択肢として思いつかないので、気がついたときにチェックしておくことが大切です。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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