ニュースの洪水のなかに埋もれている「コロナ破綻」救済のための新制度(1/2ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/04/24
文/朝倉継道 イメージ/©︎kenishirotie・123RF
「コロナ版ローン減免制度」が昨年12月にスタート
新型コロナウイルスの国内での感染拡大が始まって1年が過ぎた。われわれはいまコロナ禍のもと2度目の春を見送ろうとしている(2021年4月下旬現在)。そうしたなか、コロナにかかわる日々のニュースといえば、やはり中心となるのは昨年の春と変わらず感染者数だ。加えて、それを踏まえた行政の動きがどうしても焦点となってくる。まん延防止措置、ワクチン、変異株と、新たな情報が引きも切らずメディアを飛び交う毎日だ。
しかし、こうしたニュースが溢れるなか、大事な情報なのに意外に人々に届いていないものもある。例えば、昨年12月に始まった通称「コロナ版ローン減免制度」もそのひとつだろう。新型コロナウイルスの影響で収入が減り、ローンの返済が困難になった人のための命綱となるかもしれない制度だ。
条件が整えば、自己破産などの厳しい道を選ぶことなく、債務の負担を減らすことができる。さらには、制度を利用してもブラックリストに登録されない、手続を支援してくれる弁護士など、専門家への費用がかからないなどメリットも多い。住宅ローンの破綻に迫られた人からの相談が最近特に増えているという。
日本経済新聞が金融庁や住宅金融支援機構のデータを基にまとめたところによると、コロナ禍以降、金融機関から返済猶予などの救済を受けた人はすでに5万人を超えている。「東日本大震災の際の5倍に達した」ということだ(21年4月8日付報道)。
矢継ぎ早の政策などによって先送りされてきた国内経済におけるコロナ禍のいわば「本番」が、これから始まる可能性も状況によっては否めないだろう。
ご自身や親族、友人らの身にいつ降りかかるともしれない危機に備えて、皆さんもコロナ版ローン減免制度のことをぜひここで知っておいてほしい。
制度の対象と利用の流れ
新制度の正式な名称は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインの新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」となる。もともとは自然災害による被災者のために生まれた制度を「コロナ」に適用したものだ。
対象となるのは、個人と個人事業主だ。これにはフリーランスも含まれる。コロナの影響で仕事を失ったり、給料が下がったり、売り上げが減ったりした結果、カードローンや事業者向けローンなどが返せなくなったり、住宅ローンが払えなくなったりした人への救済制度となる。
対象となる債務には期間の制限がある。20年2月1日以前から負担していたものか、あるいは同年10月30日までに、コロナ対応のために負担した債務でなければならない。つまり、コロナのせいで返せなくなった古い借金か、コロナのせいで新たに借りなければならなくなった借金か、いずれかにあてはまることが条件だ。
手続きの流れは以下のようになっている。
1.最も多額の借入れ先となっている金融機関などへ、制度の利用を申し出て、同意を得る
2.地元の弁護士会などを通じて、専門家による手続支援を依頼する(一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関が支援元となる)
3.専門家(登録支援専門家という)の支援を基に、債務をどのように整理するかをまとめた「調停条項案」を作成する
4.全ての借入れ先から調停条項案への同意を得たのち、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる
5. 簡易裁判所によって調停条項が確定されれば、債務の減免を伴う債務整理が成立する
単純にいえば、「(制度運営機関に指名された)弁護士の助けを得ながら、借金の減免についてすべての借入れ先に相談、同意を得たのち債務整理を行う」流れだ。つまり、当制度は、債務者が債権者と話し合い、滞った返済について解決の道を探る「任意整理」の一種ということにもなるわけだ。
この記事を書いた人
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。