そのときに遺産分割はどうすればトラブルを回避できるか(4/4ページ)
鬼塚眞子
2019/08/26
具体例を紹介しよう。
財産となるのは母が所有する1,000万円の不動産で、相続人は長男と次男の二人の子どもがいたとする。本来は、長男と次男が法定相続人で、ともに50%ずつの法定相続割合となるが、母が亡くなった場合、長男に不動産を相続させ、保険を使った代襲分割をすることで次男を同意している。
結論としては、次男に500万円の現金が渡せるようにすればいいのだから、契約者と受取人を長男に、被保険者(保険の対象となる人)を母にする保険に加入するのが一般的だ。
保険金は固有の財産として、税金もかからないというものの、考えなくてはならいのは、保険料の負担を誰がするのか、本当に長男が契約者でいいのか、母に認知機能はないのかといったことである。
何といっても、熟考しなければならないのは、相続の不動産の評価についてだ。一口に評価と言っても、時価にするのか、路線価にするのかは、はっきり言って素人判断は非常に危険だ。
ここでは相続財産は自宅の家屋にとどめているが、相談業務では地方になるほど、山林や田畑の財産があったり、首都圏でもコンビニやビル、駐車場経営など、不動山の種類は多岐にわたる。また、農地などは勝手に売買することを禁じられていて、地元の農地組合法人との相談は不可欠となる。不動産の評価を判断するプロは不動産鑑定士がいる。
家族の話だから、家族間で話し合うという思いは十分に理解できるが、素人同士だと感情論が先走るケースも珍しくない。それだけに一口に相続といっても、相続に同じものはない。弁護士、不動産鑑定士、税理士、保険FPに相談して、専門家の知恵を借り、客観的な判断を仰ぐことが重要になる。
この記事を書いた人
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長
アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/