保険の「二重払い」「無保険期間」問題とは?
ウチコミ!タイムズ編集部
2019/08/02
トラブルはなぜ起こったのか
2019年6月、かんぽ生命で保険商品を不適切に販売していたケースがあったという報道がありました。
かんぽ生命に加入していない人でも、自分が正しく保険に入れているのかどうか気になった人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、かんぽ生命の不適切販売がどのようなものだったのか、また、現在加入している保険や見直しの際のチェックポイントをお伝えします。
まず、かんぽ生命の問題となった主な内容と件数、そしてその問題が起きた経緯が次の通りです。(2019年7月31日発表の件数)
●既契約と新規契約の保険料を二重に支払わせていた……約7万件
かんぽ生命では、新規契約が成立してから半年以内に既契約を解約すると、保険の「乗り換え」となります。この場合、営業職員にとっては新規契約という成績が立たず、営業手当も新規契約の半分しか受け取れない仕組みになっています。
そのため、解約するべき既契約の保険の解約をすすめず、半年間、既契約と新規契約の保険料を二重に払わせていたというものです。
営業職員は新規契約の営業手当を得たいがために、「半年間は解約できないんですよ」などと虚偽の説明を契約者にしていたと考えられます。
●無保険となる期間を発生させていた……約4万6000件
保険商品を見直して新しい保険に加入する場合、新しい保険の契約が成立した後にそれまでの保険を解約するというのが当然の段取りです。これは、既契約の保険と新しく加入しようとする保険の会社が別でもあっても同様です。そうでなければ、無保険の期間が発生することになり、無保険期間に万が一のことが起きてもなんの保障もされなくなるからです。
かんぽ生命では、保険の解約から3カ月以内に新しい契約が成立した場合も「乗り換え」となります。そのため、二重払いの問題と同じように、営業職員は新規契約時の手当を得ることができません。そこで、「解約から3カ月が経過してから新しい保険に入りましょう」などと説明して、無保険期間を発生させていたようです。
●無保険期間を発生させたために、新しい保険に加入できなくなった……約1万9000件
保険は持病などがあると加入できない場合があります。無保険の間に病気など加入できない条件が起きてしまい、新しい保険に加入できなくなったというトラブルです。
●解約の必要がなかった保険を解約させて、新しい保険に乗り換えさせた……約2万5000件
保険は、見直して新しい保険に加入することで、保障内容が良くなったり保険料が安くなったりすることがあります。しかし、既契約に特約をプラスするだけで十分なケースもあります。
問題となったのは、新しく加入し直す必要がない既契約を解約させて、わざわざ乗り換えさせたというもの。この場合、契約時の年齢は明らかに上がるため、保険料も上がってしまったケースがあったのではないかと考えられます。
このような問題がどの保険会社でも起こってしまうのかというと、そうではありません。
ほどんどの保険会社では、二重払いや無保険などのチェック機能がしっかり働くため、通常は起こり得ない問題です。
かんぽ生命の場合、そのチェック機能がしっかりと働いていなかったこと、そして「郵便局」に信頼を置く高齢者が営業職員の言う通りにしてしまったことなどで、問題が大きくなったのかもしれません。
そこで、かんぽ生命は全顧客を対象に実態調査を行い、顧客の意向を確認して不利益があった場合は、元の契約に戻す、過剰な保険料は返金する、旧契約なら受け取れたであろう
保険金を支払う等の対応をするとのことです。
加入している保険を理解しておくことが重要
通常は起こり得ない問題とはいえ、営業担当者とのやりとりや契約について、契約者自身も次のような点に注意を払っておく必要はあるでしょう。
【トラブル回避のチェックポイント】
□同じような保障に何本も加入していないか
□何回も繰り返し加入し直していないか
□「これは解約しないでください。半年後に解約しましょう」などと言われていないか
□無保険期間が発生しないか
また、保険商品は、医療の進化とともに変化していきます。そのため、かなり昔に加入した保険がいまの医療制度とかみ合っていなかったり、あるいは似たような保険に加入していたりといったケースもあるかもしれません。
たとえば、入院給付金の支払い対象となる日数について、過去には8日以上や20日以上入院しなければ給付されなかった保険も多かったのですが、現在は日帰りや1日目から給付される保険が多くなっています。
そこで、加入中の保険商品を確認したり見直したりする際、次のようなポイントをチェックしておきましょう。
【保険の確認&見直しのチェックポイント】
□いつ加入したか
□保障額はいくらか
□保険料が支払われる条件はどのようなときか
□加入している保険が本当に自分に必要な保障なのか
保険をチェックする際に大切なことは、「なんのために自分がその保険に加入したのか」、そして「加入している保障内容をきちんと理解する」ということです。
もしも、保険証券を見てもよく分からない場合は、家族と相談したり、専門家に聞いたり、あるいは「保険クリニック」などの保険ショップの窓口で相談してみることをおすすめします。
また、かんぽ生命でトラブルに巻き込まれた方は、郵便局を信頼しきっていた高齢者に多い傾向にあります。これを機会に、親御さんの保険もチェックしてみてはいかがでしょうか。
■取材協力:保険クリニック
1999 年に日本で初めて*オープンした保険ショップ。
日本の約90%の世帯が加入している生命保険を、視覚的に分かりやすくご説明す
るために、保険分析・検索システム『保険IQ システム』を独自に開発している。
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た プランのご提案まで、全国の『保険クリニック』でお客様にとって適切な保
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この記事を書いた人
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