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「父親の存在を消したかった」〜二児の母が面会交流に前向きになるまでの軌跡〜

しばはし聡子しばはし聡子

2021/06/03

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イメージ/©︎napatcha・123RF

もともと夫婦仲はよくなかった…離婚後は「会わない」関係に

離婚後も両親で子育てする共同養育を実践しているママのインタビュー。今回は面会交流に後ろ向きだった思いが前向きになれたという経験を持つママにインタビューしました。

――離婚までの経緯を教えてください。

もともと夫婦仲はあまりよくなかったのですが、2019年2月にもめる出来事があり、それがきっかけで私は子どもを連れて家を出て、実家がある栃木へ引っ越しました。

夫も別居になることを理解していたのか、私が家を出ても追ってくることはありませんでした。

その後、直接やりとりするのは難しかったので、離婚調停を申し立てて同年11月に離婚しました。弁護士はお互い付けませんでした。

子どもたちは父親に会いたくないと言っていたので、その言葉の通り「子どもはパパに会いたくないと言っている」と調停内で伝えました。養育費は決めたのですが、面会交流については夫から条件が出てこなかったので決めないまま離婚に至りました。

――お子さんたちの様子はどのような感じでしたか。

別居後、次男がパパの話をすると、長男が「パパの話をママの前ではしちゃダメだよ」と説明している姿を何度か見ました。長男は空気を読んで私に気を遣っていたんですよね。それにもかかわらず、私は家でパパの話をしないでくれることに、正直なところ胸を撫で下ろしていました。

家を出たとき、自分自身の気持ちが整理できていなくて夫のことを許せなかったので、私は父親の存在をいかに消せるかということばかり考えていました。

会わせないで済むなら会わせたくないと思っていたので、夫が会いたいと言ってこないことも、子どもたちが父親の話をしないことも私にとっては好都合だったんです。

思い切って元夫に連絡 モヤモヤを解消

――その後、時を経てご自身の気持ちに変化はありましたか。

子どもに会えていないのに養育費を払い続けている夫に対して、家をいきなり出てしまったことにどこか私の心のなかに負い目がありました。ただ、いまさら自分がどうやって元夫と関係を築けばいいか方法が分かりませんでした。

そんなときに、たまたまあるwebサイトで共同養育の記事を読みました。私のこのモヤモヤを解決できるのではないかと思いメールをしてみたんです。その後、プレシングルマザー向けの講座に申し込み、自分の思いを言葉に出してみたら、気持ちを整理することができて考え方が変わったんです。

それまでは、父親はなきものとしてひとりで育てると思っていましたし、子どもは自分の所有物だと思っていましたが、受講後は「夫婦の問題は子どもには関係のないことだ」と思えるようになったんです。

――ご自身の変化の後、どのような行動に移されましたか。

頭では理解したものの、今更どうやって元夫に連絡をすればいいのかと悩んでいたのですが、講師の方に「手紙を出してみたら?」と提案してもらっていたので、2021年のお正月に子どもたちから年賀状をだしてみようと思いつきました。

子どもたちに突然「パパに会いたい?」って聞いてみたんです。すると、ふたりとも「会いたい」って即答したんですよね。今まで申し訳なかったなと心の底から思いました。パパに会いたい思いを私のせいで蓋を閉じさせてしまっていたんです。

子どもたちは年賀状を書くときも、父親からお返事が届いたときもとても嬉しそうでした。子どもたちの様子が明らかに変わったのが分かりました。

私も元夫へ歩み寄ろうと思い、LINEがつながっていたので、まずは養育費へのお礼を伝えました。そして、子どもたちとゲームでつながってあげてほしいと伝え、父子がゲームを通してつながるようになりました。

その後、コロナで直接会うタイミングがない間は、写真をLINEで送るなどして子どもの様子を伝えるようにしました。写真を送るだけで特に文字でのやりとりはありませんでした。

実は元夫に会いたいと思っていた子どもたち

――その後、直接会う機会はありましたか。

コロナが落ち着いたらと思っていたのですが、いつまで経っても落ち着かなくキリがないので、ゴールデンウィークに会えるようにやりとりをしました。子どもたちは父親に会えることが分かると、嬉しくてたまらなかったのか体中からワクワク感があふれ出ていました。

夫は自宅に住み続けていたので、近くまで送り届けて、父子3人水入らずで1日過ごしました。実に1年半ぶりです。一緒にゲームをしたようです。

帰った後に、お礼のLINEを送ると「どういたしまして。こちらこそありがとう」といった内容の返事がきました。夫婦でいた間は、丁寧なやり取りをできていませんでしたが、親同士になったことでいい関係性ができたと感じた瞬間でした。

――ご自身の気持ちの変化を振り返ってみて感じることは?

「会わせていない」という気持ちを抱え続けていたときは苦しかったです。「父親の存在を消すことは間違えていない」と思い込むこと自体がそもそも無理があったんですよね。子どもたちにタブーを作ってしまっていたことも苦しかったし、なにより子どもたちが苦しかったと思います。

「子どものために会える環境をつくればいいんだ」と決めたらすごく楽になりました。

――別居や離婚後の子育てで悩んでいるパパやママへメッセージをお願いします。

私は、ひとりで考える時間があったことがよかったと思っています。もし、夫が別居直後から「子どもに会わせろ」と急かしてきていたら今のような気持ちになれなかったし、もっと関係が悪化していたと思います。

私は1年半もかかってしまって、その間子どもを苦しめてしまいました。だからこそ、早いうちから離婚しても親はふたりなのだから、縁を切れるわけではないということを知っておくことが大事だと思います。そして、お互い責め合ったり奪い合ったりするのではなく、相手の気持ちを尊重すること、ときにはそっとして考える時間を与えることも大事なのかなと。

元夫は面会交流の条件も出さず、その後も連絡をしてくることもなく、それは元夫の性格的なこともありますが、結果してそのスタンスのおかげで私自身、自分を変えることができました。

考え方を変えたら、子どもの笑顔は増えたし、私自身も苦しさから解放されて前向きな気持ちになれています。今もまだまだ進行形ですが、こうやって話をすることで気持ちを整理することができています。

これからも子どもたちが自由に父親と関われる環境を作っていきたいと思いますし、同じように悩んでいる方に対して、私の経験が役に立つといいなと思っています。

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この記事を書いた人

一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント

1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️

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