母子家庭でも幸せを感じられたのは…両親がそれぞれの役割を全うしてくれたから
しばはし聡子
2021/05/23
イメージ/©︎halfpoint・123RF
今回は、親の離婚後も父親との交流を続けてきた子どもの立場である20代男性に、親の離婚や再婚に対する捉え方や思いをお聞きしました。
母親は父親を嫌うそぶりは見せなかった
ーーご両親が離婚した頃のことや、その後のお父様とのかかわりを教えてください。
4歳位の頃に親が離婚して、母親のもとで育てられました。細かくは覚えていないのですが、離婚した後も父親とはちょくちょく会っていましたね。小学校にあがるまでは父親の家に泊まりにも行っていたように記憶しています。
小学生になってからはサッカーが忙しくなり、泊まる機会はあまりありませんでしたが、ご飯を食べに行ったり誕生日のときにプレゼントをもらったりしていました。
その後、携帯を持つようになってからは、父親と直接連絡を取って会うようになりました。今思い返せば、自分で父親に連絡を取れない年齢のときは、きっと母親が父親とやりとりをして、父親と会えるように調整してくれていたんだと思います。嫌々やり取りしているような様子は感じなかったです。
直近で父親と会ったのは昨年の秋ですね。大学在学中に父親が出張で大阪に来た時にご飯を食べました。その後はコロナで会っていませんが、連絡はちょくちょくきたりしています。
ーーご両親の離婚によって困ったことはありましたか。
困ったことやつらかったことはないんですよ。離婚後も、母親は家で父親の話をしていましたし、僕の前では父親のことを悪く言うようなこともなかったので、父親と会いづらいということもありませんでした。離婚するくらいなので本心では嫌だったのかもしれませんが、そういう素振りをみせていなかったですね。
困るというか、母親がいつも忙しそうにしているのを間近で見ていたので、大変そうだなと思って気になっていました。
ーー友達と親の離婚のことなど話したりしますか。
けっこう母子家庭の友達がいるんですよね。小さい頃に親が離婚して「お父さんに会いたい」と言っている友達もいれば、中学生以降に離婚して「別に会わなくてもいい」と言っている友達もいました。
父親のことが記憶にあるかないかでも違うのかなと。父親と過ごした記憶がある状態で、しかも幼少期に突然会えなくなったりすると寂しい思いをするんだろうと思います。中学生以降だとけっこう本人の意志だったりしますよね。
父親は一番身近な大人の社会人
ーーお父様と関わり続けていてよかったと思うのはどんなときですか。
将来のことや仕事のことなど情報を聞けるので、特にここ最近は父親と話す機会があってよかったと思うことが多いです。父親って一番身近な大人の社会人じゃないですか。父親の仕事のことも関心があります。
あと、母親との馴れ初めなんかも聞いたりしています。父親は再婚していますが、結婚当初とか付き合っていた頃とか母親をどう思っていたのかを聞いてみたくて。母親からは聞いたことあるので答え合わせ的な感じで知ってみたいんですよね。
ーーお父様は再婚されているのですね。親の再婚ってどう感じますか。
父親は再婚して子どもが二人います。僕が小学校の頃に再婚したんだと思います。父親から聞いたときは「結婚したんだー」くらいで特に何も感じなかったですね。
再婚後の子どもとは会ったことがないですが、父親は会ってほしいようなことを言っていました。会いたくないとかは全然ないんですけど、時間がないから会ってないという感じです。タイミングが合えば会うのは問題ないです。
母親は再婚していないのですが、僕には兄弟がいなくて、母親は一人なので、いい人がいれば再婚してもいいんじゃないかなと思っています。
ただ、もし自分が一緒に住むような年齢だったら複雑だったかもしれません。友達に知られるのが恥ずかしいというか。大学生になるとネタにできるんですが、高校2年位までは微妙かもしれません。
あっ、でも、家が広くなったり環境がよくなってお小遣いくれる人ならいいかも(笑)。あと、いろんな情報を教えてくれる人ならいいですね。
親の再婚 子どもに判断を委ねられたら困る
ーー親が再婚を考える際に気を付けておいてほしいことってありますか。
「再婚したいけどどう思う? いい?」みたいに判断を委ねられるのはキツイです。親が決断して引っ張られるくらいのほうがまだいいです。
あと突然っていうのも困るので、都度ラフな感じで情報提供はしてほしいですね。関心なさそうにしているかもしれませんが、子どもにとって大事な情報なので実はしっかり聞いているはずです。ただ、関心があると思われたくないので質問はしないんです。
あと、みんなで仲良くみたいのもちょっとやりづらいですね。再婚相手と自分が話している様子を母親に見られるとなんとなく気まずいので、混ざってこないでそっとしておいてほしいです。
それより何より、一番困るのは親の再婚によって自分の苗字が変わること。これは大問題です。かなり実害があるので、苗字を変えることだけは反対ですね。
ーー離婚を経験している親御さんたちへ伝えたいことはありますか。
別れ方にもよりますが、子どもの立場としては親に会えている方がいいです。子どもによっては、本心で会わなくてもいいと言っていることもあるかもしれないので難しいところですが。
一緒に住んでいる親から「会いたい?」と聞かれると判断を委ねられるようで返事がしづらいので、「会ってくれば?」と背中を押してくれるといいですね。あと、子どもの「どっちでもいい」という返事はGOサインの意味なので、引っ張って後押ししてあげてください。
離婚をした人のなかには、なかなか子どもに会えない人や会わせたくない人など、さまざまな状況の人がいてつらく大変なことがあると思いますが、少しでもポジティブに考えて頑張ってください。
そのなかでできるだけ子どものことを第一に考え、子どもの意見を尊重してあげてほしいと思います。
ーー親が離婚している子どもの立場の方へメッセージをお願いします。
両親が離婚してしまって悲しい気持ちになっているかもしれません。ただ、離婚することになったのは決してみなさんのせいではないし、仕方のないことだと思います。
なので、みなさんが責任を感じる必要は全くないし、ネガティブに捉えずに、自分自身の道を全力で歩んでほしいです。この経験がいい方向に向かうよう、頑張っていきましょう。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️