母と妹に会えずに40年以上 子どもが親を知る機会を奪わないで
しばはし聡子
2020/11/04
イメージ/123RF
さまざまなカタチで離婚後も両親で子育てを行っているママの実体験を記事化したシリーズ。今回は、ご自身が離婚家庭に育ち母親と会えないまま現在に至るママをインタビューしました。
■当時、両親の離婚や再婚をどのように受け止めていましたか。
離婚したのは幼少期だったのでよく覚えていませんが、祖父母の家で育てられ週末だけ父親が来るという生活が続きました。入学式を終えたある日、父親から突然引っ越しを告げられ、父親と継母と暮らすことになりました。私の出来が悪く、躾がなっていないと怒られる日常でした。中学生の頃からは常に居場所がない、必要とされていないと感じて過ごしていました。
ある日、継母が両親の離婚の理由を教えてくれたんですよね。理由は母に原因がありました。私としては、母に原因があったことよりも、「私のせいではない」「私が捨てられたわけじゃない」ということが分かって安堵したことを今でも鮮明に覚えています。
■母親に会いたいと思っていましたか。
幼少期から会えないまま、義母が母親として育てられてきましたので、「実の母に会いたい」という思考すらありませんでした。
自分は必要とされていないと思いながら育ってきたので、実母からも必要とはされていないだろうと思っていましたし、自信もありませんでしたし、会いたいと思ってはいけないと思っていたかもしれません。
■父親へはどのような思いがありますか。
高校生になった頃から、「会いたい」というより「知りたい」という願望はありましたね。2年前くらいでしょうか。父親へ「母のことを知りたい」と伝えたら、「なんで今更」と口論になってしまいました。挙げ句の果てに父から送られてきたのは離婚裁判の書類。
私は単に母親を知りたいという気持ちだけだったのに、向き合うことのない父親と噛み合わなくなり、今は父親と縁を切っている状態なんです。父は母の存在を消そうとしましたが、私にとっての母の存在を勝手に消してほしくなかったです。
義母と私の関係においても、間に入ることをしてくれませんでした。義母も不満があったのだろうと思います。義母は自分の気持ちを正直に話してくれる人でしたが、父は私の気持ちを一度も受け止めてくれたことがなかったので、今でも許せない思いがあります。
■子どもを相手に会わせたくないと思っている方に伝えたいことはありますか。
私も親になっていろいろ思うことはあります。夫婦がこじれて会わせたくないという感情になること自体は理解できなくもないです。例えば、私がずっと育児をしてきたのにいきなり親権をほしいと言われたら奪われたくないと思うのは当然のことかもしれません。
ただ、子どもとは別人格です。子どもは別の人生を生きていることを知ってほしいです。自分の感情と子どもの感情を同一化させてはいけないですね。
親って子どもへは何をしても自分のことを許してくれると思っているところがあるように感じます。だけど、子どもには子どもの気持ちがありますよね。
また、会わせることになにが不安なんだろうとも思います。もっと自分の子どもを信じてあげてほしいです。会わせたくないのであれば、子どもが納得いくよう理由をきちんと子どもに話してあげることも大事です。子どもは何も話してもらえないと親から信じてもらえていないと思っていくものです。
■子どもに会えていない方に対して伝えたいはありますか。
親なのに子どもに会えないというのは、想像を絶するほどつらいことだと思います。ただ、子どものためにもどうか会いたいって思い続ける気持ちを諦めないでほしいです。私は法律や取り決めなど関係なく会いたいという行動をしてほしかったです。自分という存在をアピールして、子どもがいつか見つけられる方法や離れても状況を知ろうとしてほしいということです。
もし、今は会えなかったとしても、いつか子どもに会えるときのために日記に気持ちを書いたりしていてくれたら嬉しいですよね。
あとは、相手を敵視するのではなく、気持ちを理解するように努力してほしいとも思います。会わせたくないと思うほどの気持ちはどこから来るのかと。子ども抜きでまず考えてほしいです。そして、一緒に住んでいる親の意を100%汲みますから焦らないでほしいです。
親は子どもに対して「人の気持ちを思いやること」と躾をするにも関わらず、自分自身は違う意見をシャットアウトしたり攻撃しがちです。そのような姿を両親の不仲で示さないでほしいですね。
■最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
どちら側の親であっても、子どもの声を聞いてほしいし知ってほしいと思います。子どもが親の気持ちを肌で感じ取って言葉を発するようになる前に、自分の気持ちを言っていい、そんな関係性が親子で成り立っていてほしいです。
私はいつも「大丈夫」と言う癖がつきました。それが望まれている答えだと分かっていたから。しんどくてもつらくても、本当の気持ちを聞きたいのではない、大丈夫と言ってほしいのだと。
離婚がいろんなかたちがあるように、子どもにとっても不幸なこととは限りません。私にとっては離婚、再婚は自分の存在をなくすことであり、大人になってもその延長上にしか生きてこれませんでした。長男を産んだのは39歳です。それまで前向きな振りをした、でも行き当たりばったりに生きていました。子どもを産む覚悟をして、やっと自分を愛せるように訓練しました。
子どももいつか大人になるんですよね。でもそのときにどんな大人になるか、よくも悪くも子どものときに見続けた親の姿を忘れません。子どもの未来はつながって(←繋がって)います。離婚そのものよりも、その後の姿が子どもには残っていくことを知ってほしいです。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️