一緒に住んでいるのに親権がないと親子と認められない理不尽さ(1/3ページ)
しばはし聡子
2020/10/21
イメージ/123RF
さまざまなカタチで離婚後も両親で子育てを行っているママの実体験を記事化したシリーズ。今回は、子どもを育てているにもかかわらず親権がないことでの困難を感じたママをインタビューしました。
■離婚の経緯を教えてください。
離婚を公にしたのは今年に入ってからなのですが、実は3年前に離婚届は出していました。というのも、夫が営む事業の経営不振から、家族に影響が及ぶリスクを回避するため籍を抜くことになったのです。夫と話し合ったうえで、急いで法的な意味での家族を解消しました。
その後も変わらず一緒に暮らしていました。夫の新たな事業が軌道に乗ると数億の家を現金で購入したものの、1年とたたず抵当に入れてさらに事業拡大を図り(←はかり)失敗、なんてこともありました。
そして、海外での事業展開があり、何度か行き来しているうちに昨年から海外に行ったっきり戻ってこなくなってしまったのです。
法的には離婚をしているものの、なんだか宙ぶらりんな状況が続きました。パパっ子だった娘は「パパはどこへ行ってしまったの?」と終始寂しそうにしていたので、「パパは海外にお仕事に行ってるよ」と言って、なんとかやり過ごすしかありませんでした。
夫の両親とはやりとりを重ねましたが、私の親には心配をかけたくないので状況を伝えていませんでした。息子にも相談はしていなかったので、結局ひとりで抱えていましたね。
今年、息子が高校、娘が小学校に入学のタイミングが重なったので、夫の荷物を整理して引っ越しをし、心機一転しようと決断しました。引っ越するにあたり、まとまった資金が必要だったため、初めて親に相談して支援してもらいました。ここまでの状況になっているとは思いもしなかった両親は、それはそれは驚いていましたね。
■とくに困ったことはどのようなことでしたか。
とにかく急いで離婚をしたので、内容をあまりちゃんと理解せずに離婚届を提出したんです。親権者を記入する欄があったのですが、具体的にどのような権利なのかよく分からず、きっと子どもを養育するための金銭面の責任を持つ人なのだろうと思い、夫を親権者にして届出しました。
それが後になって困ったことになったのです。ひとつめは息子のパスポートを取りに行ったときのこと。「あなたは姓も違うし親権者ではない」と一刀両断され、親権者のサインがないと手続きできないと追い返されました。離婚したとき私だけ旧姓に戻していたんですよね。親権者である夫はどこにいるか分からないと伝えても、「こちらでは決まりなので対応できません」と杓子定規な対応ばかり。
海外に行ったときも出入国の際にトラブルがありました。どこからどう見ても顔もそっくりな親子なのに姓が違い、親権者でないだけで、「本当に親なのか?」と疑われ、日本でも海外でも空港で長時間待たされた経験もあります。
今後も不便なことが起きては困ると思い、先日、裁判所で親権者変更と子どもたちの姓の変更の手続きを終えました。裁判所で夫の状況を確認するとのことで半年近くかかりました。
なぜ、私が子どもを育てているのにこんな目に合わないといけないのか、そもそもなぜ離婚するときに片方にしか親権が与えられないのか、今でも理不尽に感じますね。両方とも親であることには変わらないのに、親も子も不便でなりません。
今は手続きも終え、子どもたちも私の戸籍に入り新居にも慣れて、やっと落ち着いたといったところでしょうか。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️