生きているからこそ会える|父親を亡くした経験から想う父子の絆の大切さ〜みほさん〜
しばはし聡子
2020/05/12
イメージ/123RF
さまざまなカタチで離婚後も両親で子育てを行っているママの実体験を記事化したシリーズ。今回は、ご自身が父親を亡くした経験から、父親と子どもの絆を大切にしたいと願うママをインタビューしました。
■現在、どんなカタチで共同養育を行っていますか。
父親は遠方に住んでいるため、父親が九州に来られるタイミングに合わせて交流をしています。年に8回くらいでしょうか。どこで何をするかは、すべて父親と子どもたちに任せています。こちらの自宅には入らないということだけは暗黙の約束となっていますが、それ以外は期間や宿泊など自由にいろんなところへ出掛けていますね。
また、遠距離のためしょっちゅう会えないので、子どもがいつでも手紙を父親宛に書けるようにと返信用封筒を用意した「お手紙セット」を父親が子どもへ送ってくれるなどして、直接会えなくても交流できる方法を考えてくれています。
今は、外出自粛で父親がリモートワークなので、平日の夜、週2、3回ほどビデオ電話での交流を楽しんでいます。私も時折交わって話していますよ。
日程を決めるなどのやりとりは、親同士LINEでやりとりしています。敬語など使わずに口調もフランクですね。また、子どもの成長につれ父親との交流の仕方も変わってくるので、どうやってコミュニケーションを取っていくのがいいのかといったことも元夫とすり合わせしています。親同士としての関係は、結婚していたときよりもいいと思います。
■共同養育をするようになった経緯をお聞かせください。
離婚当時、共同養育という言葉は知りませんでしたが、当たり前のことだと思っていたので自然と始めることができました。離婚の際に公正証書は作りましたが、養育費のことだけ記載し会うのが当然だと思っていたので面会交流のことはとくに取り決めをしませんでした。
葛藤がなかったというわけではありません。父親と子どもが会っているときにこみあげてくる悲しさや寂しさ、子どもに対する罪悪感など、もがき苦しんでいる時期もありました。そのときは自分の感情をすべて元夫へぶつけていました。彼は言い返すことなくすべて受け止めてくれていました。
会わせたくないという気持ちはなかったです。私自身が子どもの頃に父親を亡くした経験があったことも大きいと思います。生きているからこそ会えるわけですから、その会う機会を私が奪うことなんて思いもしませんでした。
■共同養育するにあたり困っていること、困っていたことはありますか。
離婚して間もない頃、子どもたちが父親と会った後に寂しいと泣いていたんですよね。泣いている子どもたちを見て、どうしてあげたらいいのか分からず途方に暮れていました。
離婚したせいで子どもを苦しめているという罪悪感に襲われ、いっそ会わせない方が子どものためになるのではないかという思いがよぎったことも。子どもが泣く姿を見て、私も一緒なって泣いてごめんねと言っている時期がありました。あのときはしんどかったですね。
ただ、その後気づいたんです。泣いている子どもに対して必要なことは、何か声をかけることではなくそのままの気持ちを受け止めてあげるだけでいいんだと。子どもが素直に感情を出せる場所になってあげればいいと思えるようになったら、とても楽になりました。
忘れもしないのがある面会交流の日のこと。父親と会った後私の元へ戻って来た長女が、笑った顔をしながら目から涙がこぼしていたのです。「パパと別れるのは悲しいけれど、ママを困らせたくないから笑わなくちゃいけない」その気持ちが混在して、笑いながら泣くという状態になってしまったのでしょう。
その表情を見たときに、子どもが大きな負担を抱えていることを知り、それを機に子どものすべての感情をそのまま受け止めることこそが必要なことだと分かったんです。以来、子どもの気持ち・言葉は全て聞く、ただ言葉を返さなくても落ち着くまで抱きしめたり、ときには元夫にも子どもの言葉を共有していくことで次第に子どもの気持ちも私の気持ちも安定しました。
■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。
子どもとの関係は、父子で自由に交流を続けてもらえれば何も言うことはありません。唯一願いがあるとすれば、これから先、子どもが成長する過程で例え子どもとの接し方が分からなくなったり、子どもが思春期で父親と距離を取るようなことがあったとしても、どうか父親として失格だなどとは思わないでほしいですね。
というのも、少し前に子どもと何を話していいか分からないって言われたことがあったんですよね。異性ということもあり話題も分からないこともあると思うんです。それでも、父親は唯一無二の存在ですし自分はこの子達の父親だと自信を持ち続けてほしいと思います。
■共同養育はどんなメリットがありますか。お子さんはもちろん、ご自身にとってもいいことがあれば教えてください。
子どもが成長していくなかで、幼少期の両親との関わりはとても大事なこと。大人になってからの人間関係や社会性に影響しますし、両親から愛され続けて育つことで自己肯定感も上がりますから、共同養育は子どもの成長において必須なことですよね。
私にとってのメリットは、自分の時間ができることでしょうか。母親としてだけではなく一人の個人として人生を楽しめる時間になります。
また、一人で育てなくてはいけないという責任はとても大きな重圧ですから、二人で育てると思えると精神的な負担も減ります。子どもが生まれた瞬間から家族はチーム。それは離婚しても変わらずチームメイトであり続けたいですね。
■相手との関わりにおいて、ご自身が心がけていることはありますか。
子どもと父親が交流しているときに、遠慮しないことを心がけています。以前は父子交流の邪魔をしないようにと思っていたのですが、遠慮することで逆に子どもも遠慮するかなと。自宅で子どもたちが父親とビデオ電話でしゃべっているときには、違う部屋にいたりせずに自然体で混ざって4人で話すようにしたりしています。その方が子どもたちも楽しそうですね。
■ご自身のこれからの夢やビジョンがあれば教えてください。
共同養育はもちろんですが、人間関係などで悩んでいる人がいたら、ぜひとも自分自身と親との関係をふり返ってみてほしいという思いがあります。親との関係が自身の社会性に影響しているんですよね。もし、親と疎遠だったり、関係がよくなかったとしたら、まずはご自身の親子関係を見直してみるのもひとつです。
そして、子連れ離婚を考えている人は、離婚後も子どもと親の関わりがいかに大切なことかを知り、共同養育を実践してほしいです。これからも私自身の離婚の実体験を踏まえ、共同養育の大切さを伝えていきたいですね。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️