「相手の非を責める葛藤」をどう取り下げるか 自分と向き合って分かったこと
しばはし聡子
2021/04/28
イメージ/©hetmanstock・123RF
離婚後も両親で子育てする共同養育を実践しているママのインタビュー。今回は自らの葛藤を取り下げ、元夫と仲のいいころに戻れたというママにインタビューしました。
―離婚に至ったいきさつを教えてください。
別居のきっかけは元夫の仕事上の理由からでしたが、その後夫婦トラブルに発展。元夫は、一度は家族としてやりなおしたいと家庭に戻ってきたこともありました。ただそれは夫としてではなく、父親としての話。私も元夫も、子どものために我慢をして家族というかたちを保つこともできたとは思います。でも、のちのち夫への愚痴が湧いてくるようなら、それは幸せなかたちではないと思ったんですよね。私は父親としてだけではなく、私の夫としても戻ってきてほしかったので。
―子どもと父親を会わせることに葛藤はなかったのでしょうか?
たぶん、通常なら会わせたくないと思ったでしょうね。でも、私が子どもたちから父親を奪うような主張をするのは「違うな」と思っていました。私と子どもは別の人間だし、子どもたちにとっては大切なパパなので。
もうひとつの理由は、元夫の両親は離婚していて、彼は母親一人に育てられたという経緯から。彼の父親は、子どもたちが中学生くらいになって以降、成人してからも会っていないそうです。
元夫は夫婦会議で話し合うたびに、「自分は父親とは違う」といっていたので、離婚しても子どもたちと交流を持ち続けたいのだろうと理解していました。もしかしたら、元夫は父親に会いたかったのかもしれません。だから、子どもたちにも好きなときに父親と会わせたいと思ったんですよね。
―共同養育への話し合いはどのように行われましたか?
頭に離婚がちらつき始めたとき一番心配していたことは、離婚したら子どもたちは父親を失ってしまうのではないかということでした。だから、自分なりに心理学や離婚について書かれた本を読んで情報を集めていました。
そのなかに「夫婦仲が悪い両親に育てられるより、シングルでも定期的に父親に会わせているほうが精神安定度の高い人になる」という記述を見つけたんです。夫婦関係は解消しても、親である2人が愛情を注いであげれば、子どもはよく育つ。それを知って安心しました。
その後、『離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て』を読んで共同養育という概念を知り、私が漠然と持っていた考え方にぴったり合うなと確信。「離婚しても子育ては二人でしよう」と元夫に提案しました。
彼はすんなり納得してくれました。その後、お金のこと、具体的な子どもとの接し方を決め、元夫が覚書を作ってくれたのでサインをして。
基本的に週に1回くらい、子どもたちはパパと過ごします。月1~2回はパパがひとりで子どもたちの面倒をみて、彼の家に泊まります。学校や幼稚園の行事には私と一緒に参加しますし、4人で食事もします。この前は4人でカラオケにいきました(笑)。
これは離婚のあとで聞いた話ですが、私がもし「もう子どもたちには会わせない!」といったら、元夫は離婚に同意しなかったそうです。やはりこちらが意固地になるとあちらも意地を張るので、話し合いのときに共同養育の存在を知って落ち着くことができたのは本当によかったですね。
―元の旦那さんとは、現在どんな関係を築いているのですか?
元夫にとって私はなんでもいえる存在のようです。共通の知り合いもいるし、仕事関係のことも話せるようですね。私にとっても同じです。離婚を決める直前は「顔も見たくない、大っ嫌い!」と思っていたのですが、今は仲良し。結婚当初は楽しくやっていたので、その頃に戻ったような感覚です。
紙切れ一枚とはいえ婚姻関係にいると、しがらみや果たすべき役割を意識して気負ってしまうじゃないですか。今はそれがなくなってお互いラクになれたのかもしれません。
―子どもたちはパパとママの関係をどう思っているのでしょうか?
物心ついたときから、パパは別々に暮らしていたので、もうそれが普通といった感じです。私は子どもたちにうるさく注意してしまうので、子どもたちからしたら窮屈ですよね。そこへパパが来てどこかへ連れて行ってくれるのは子どもたちにとっても楽しいし、いいバランスだと思いますよ。
ただ「パパとママは離婚した」とはいっていないので、いつ伝えればいいかは唯一の心配事ですかね。
―怒りや葛藤を取り下げられない人に向けてのメッセージはありますか?
まずは自分と徹底的に向き合うことですかね。私は元夫とトラブルになったときに精神的に落ち込んで、3人のカウンセラーさんにかかりました。それを経て気付いたのは、怒りの感情があるときってすべてを相手のせいにしてしまうこと。「自分は悪くない、こうなったのもあいつのせいだ」って、思っちゃうんです。
でも、相手の行動の前に自分にも原因がある。カウンセリングを通して、私の場合の根本的な原因は母親からの愛情不足かもしれないと気付きました。
これまで考えたこともなかったのですが、潜在的に”一心に愛されない自分”、それが当然という意識が根付いていたようです。だから無意識に自分を大事に思えなくなり、一心に愛してくれない男性でもいいやと選んでいたのではないか、というものです。
私は、私に愛情を注げない人だとうすうす知っていたのに、自ら夫を選んで結婚してしまった。そう考えることもできるのかなって。
相手に非があったとしても、相手のせいにしては何も始まらないんですよね。りむすびの対談企画で窪塚洋介さんもおっしゃっていたけど、すべては自分に原因があるのだと思います。
落ち着いて、自分と向き合って、見つめ直して、納得する。自分と向き合えればきっと、相手とも向き合えると思いますよ。そして、自分の幸せを自分で見つけていけるのだと思います。
私はもしこれからパートナー関係になる人がいるとすれば、お互い思いやりを持って何でも話せる人がいいですね。ベッタベタに甘えてみたいです(笑)。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️