離婚してもパパもママも好きでいられるために 〜共同養育コンサルタントしばはし 聡子コラム〜
しばはし聡子
2018/05/18
イメージ/©pat138241・123RF
親の離婚は、子どもにとっては人生における大事件。離婚家庭が増えてはいるものの、まさか自分の家だけは…と思っているはず。突然の出来事にこれからのことが不安になっていることでしょう。
「この先どうなってしまうの?」「お引越しをしなくてはいけないの?」「パパは別のところに住むの?」「パパと会えなくなってしまうの?」
小さい胸を痛めながら、ひとり苦しんでいるかもしれません。
親の離婚でただでさえダメージがある子どもの心が、これ以上傷つかないために親がすべきこととは。
相談できない子どもの立場
離婚に悩んでいる時、私たちには、友人や親、そしてカウンセラーや弁護士などの専門家など、相談先としてさまざまな選択肢があります。では、子どもの場合は、誰に相談すればいいのでしょうか。本来悩みごとがあると、友達や家族に相談することも多いかもしれませんが、親の離婚となるとそう簡単にはいきません。
友達に相談したら言いふらされてしまうかもしれないし、なにより恥ずかしい…。そして、不安な時に、一番甘えたい存在は親のはずなのに、渦中の人なので、迂闊に「ママ離婚するの?」なんて聞くこともできなければ、夫婦喧嘩が絶えない場合は空気を読んで黙っていることもあるでしょう。
また、兄弟姉妹がいて悩みを共有できたとしても、同じ立場なのでより不安が募るなんてことも。ひとりで抱え込むしかない子どもは、親より何倍も辛い思いをしているのではないでしょうか。
空気を読む子ども
子どもは、驚くほど母親の顔色を伺い空気を読んでいます。母親を怒らせないように悲しませないようにと、自分の気持ちを封じ込め、日々母親の様子を気にしながら発言ひとつひとつも気を使っているのです。
だからこそ、子どもに気遣いをさせないためにも、子どもが素直な気持ちを話すことができ、なんでも質問しやすい環境をつくることが大切。父親の話もタブーにせず風通し良くドーンと構えてあげましょう。
不安を取り除くためにできること
離婚問題の渦中にいると、子どもの気持ちを優先しなくてはと頭ではわかっていても、つい余裕がなくなってしまうこともあるでしょう。たとえ自分自身が不安定で辛い時期だったとしても、子どもも同様です。隠したり曖昧にしたりせず、年齢ごとにわかる言葉で状況を説明してあげることが大切。
「パパとママは喧嘩ばかりしてしまって仲直りができなくなっちゃったから、どうしても一緒に暮らせなくなってしまったの」など、離婚という言葉を使わなくても、一緒に暮らすことができなくなる事実をきちんと説明をしてあげることで、今起きている出来事を子どもなりに理解することができます。
そして、なにより大事なのは、「パパとママは仲直りできなかったんだけど、パパはずっとあなたのことを愛しているし、いつでも会えるから心配しなくていいのよ」と伝えてあげること。
もちろん、子どもの心身に危害を加えるような父親であれば、会わせることに慎重にならなくてはなりません。しかし、父親とこの先どうなるのか、父親は自分のことを捨ててしまったのか、といった不安を解消させてあげることが大切です。
これはNG。母親がしてはいけないこと
夫への不信感や嫌悪感が募るあまりついやってしまいがちですが、してはいけないことを挙げていきましょう。
◇父親の悪口を言うこと
「パパって本当に嫌よね」「パパのせいで離婚することになったのよ」「パパみたいな大人になっちゃダメよ」など…。子どもが聞いたらどんな思いをするでしょうか。
「パパのことをかばったらママが嫌がるかな、怒られるかな、パパのことを話すことはやめておこうかな」など子どもなりに思いをめぐらせます。
それどころか、何度も悪口を言い聞かされていると、「パパって本当に悪い人なんだ」と存在を拒絶するようになってしまうこともあります。父親の存在を否定するということは、自分の半分を否定することになり、子ども自身の自己肯定感が低く育ってしまうことも懸念されます。
◇子どもを父親と会わせないようにすること
子どもに危害を加える父親ではないにもかかわらず、相手に対する憎しみがあるがゆえに、故意に会わせないようにすることは、子どもが愛情を受ける機会を親自らが失わせることになります。
親の離婚で寂しい思いをしている子どもから、父親を奪っても本当によいのでしょうか。子どもは心の底では本当は会いたがっているけれど、言えないだけではないですか。
相手と関わりたくない、子どもが懐くのがおもしろくない、相手を喜ばせたくないといった自分の感情とは切り分け、親子が会える環境をつくることは子どもにとってとても大切なことです。
◇子どもを伝言係にすること
子どもが父親と会う際、「パパに早く養育費を支払うように伝えておいてね。」など伝言係として子どもを利用することはやめましょう。子どもは父親と会うことを存分に楽しめなくなってしまい、面会交流に対して子ども自身が後ろ向きになりかねません。
また、面会交流から帰ってきた時に、詮索しすぎることも要注意。どこで何をしたか、何を食べたか程度ならよいですが、父親がなにか自分の悪口を言ってなかったかなど、会話を詮索すればするほど子どもが板挟みになってしまいます。
まとめ
夫婦関係は破綻しても、親子関係そして親同士の関係は続きます。離婚しても、たとえ再婚しても、子どもにとっての父親は唯一無二の存在です。愛する子どものためにも、夫婦関係と親子関係は切り分けて、子どもが父親の存在を肯定しながら成長できるようにサポートしてあげることが大切ですね。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️