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心躍らせて始めたものの…

週末田舎暮らしあるある、4つの「こんなはずじゃなかった」をどう解決するか

馬場未織馬場未織

2017/01/19

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週末田舎暮らしにも理想と現実のギャップがある


(c) tatsushi – Fotolia

住みたいエリアを探し、何度も足を運び、グッとくる不動産も見つけて、もうこれは理想の暮らしになるはず! と、心躍らせて始めた二地域居住。「毎週末が楽しみでしかたないわ~、どうやって過ごそうかしら~」という新婚のような時代を経て、だんだんとこのライフスタイルは自分のものとして定着していきます。

ですが、そのうち、ごくたまに「あれ…思っていたのと違う」と思う瞬間を経験することも。「そんなもんでしょ」とさらりと交わせればいいですが、なかにはひどくがっかりして、足が遠のいてしまう人もいるようです。

二地域居住や移住など、新たな土地での暮らしの”理想と現実のギャップ”。それを乗り越えていけるかどうか、見てみましょう。

<1> のんびりした暮らしではない

あくせくした都会生活から離れて、田舎でのんびりした週末を過ごしたいなあ…。そういう憧れから、二地域居住を始める人もいるでしょう。

どんな土地に住まうのかによって暮らし方は変わりますが、基本的に、週末田舎暮らしはのんびりしていません。笑。

特に中山間地に家を持った場合、敷地内の草刈りはけっこうな労働です。わたしの家がある南房総の場合は、ゴールデンウィークあたりから10月くらいまでが山場で、1週間たつとこんなに草が伸びるのか! とはじめは驚愕しました。

また、季節によって畑の手入れ、果樹の収穫のほか、地域の仕事をしたり、それから思いっきり近場の野山や海で遊んだりと、やりきれないくらいやりたいことがあって、「緑の風に吹かれながらのんびり読書」や「友人とBBQ」を常とする暮らしはなかなか手に入れられません。いい季節だけ訪れて、場合によっては管理人がいる別荘との違いはそこでしょう。

ただ、これまで観光客として「風景を見る側」だった自分が、「風景をつくる側」に立ったとき、まったく違う感慨や発見があります。近くで自然と向き合う楽しさは、やってみなければわからないものです。

東京では休日はごろごろして疲れをとるだけだったのに、田舎での週末野良仕事はなぜか張り切る、という人も少なくありません。

都市とは違う類の忙しさを楽しむことが、アクティブレスト(=動くことで休まる)につながる、ということが実感できれば、「田舎=のんびり」という固定概念から自由になります。

<2> 家族がついてこない


(c) altanaka – Fotolia

田舎暮らしあるあるですね。

週末田舎暮らしに前のめりだった代表者を除き、ほかの家族は目新しさが失われたあたりで腰が重くなります。そして、「今日は同窓会だし」「約束があるから」「寒いし」などいろいろな理由で来なくなってしまう。気がつけば、自分ひとりでせっせと通っていた、なんて話をよく聞きます。

いや、それでもいいのです。その代表者さえ十分に楽しければ。

ただ、現地で友人ができなくて孤独になったり、このままいけば家族崩壊? という方向に向かったりしてしまうとツラいですよね。

家族との意思の疎通は、だんだんとできてくる類のものではないかもしれません。「ちょっと強引に始めてしまった二地域居住だけれど、そのうち田舎の良さを理解してくれるさ」という楽観的予測は当たってくれないケースが多いようです。

人にはそれぞれ、自分に合った場所があり、夫婦や家族だからといって同じとは限りません。海辺が好きな人と、海風だけはダメという人。静かな山奥が好きという人もいれば、人の気配のないところは寂しくてイヤという人もいます。

そこで「もう土地買っちゃったし一緒に来てよ」という圧力をかけると、引きずられているほうの人間は「冗談じゃない」と逆を向きたくなります。

家族のライフスタイルを大きく変える二地域居住ですから、できれば事前にちゃんと向き合って、お互いを尊重しつつ、誰もが主体的に通えるか、誰もがハッピーに別々の暮らしを楽しめるようコンセンサスをとっておけるといいですね。

<3> DIY鬱(うつ)になってしまう


(c) hiroshiteshigawara – Fotolia

昔から憧れだった、古い民家をようやく手に入れた! 古いけれど、ボロいけれど、とっても安かったしね。自分の手で直しながら暮らしていけばいのさ。

そう思って、納得ずくで始めた週末田舎暮らしでも、心が折れそうなことは山ほどあります。

「現況渡し」の古民家は思ったよりも傷みが激しく、押し入れからは不用品が出るわ出るわで、新しい暮らしを楽しむまでに至らず。

ゴミの整理だけで何カ月経っているだろう…。

いつまでもいつまでも塗り終わらない壁…。

クライアントも施工者も自分なのにどんどん追い詰められてしまい、完了見通しの立たない不安から “DIY鬱(うつ)”になる人もいると聞きます。

 

たとえ賃貸物件でも、「自由に手を入れていいよ」と言われて大工仕事が存分にできることの多い古民家ですが、使われなくなってから年月の経った空間を直すのは思った以上に時間がかかることが多いですし、始めてみたらどんどん修繕箇所を見つけてしまってドハマリすることもあります。

そんなときは、ひとりで抱え込まず、誰かに応援をお願いするのがいいと思います。友人・知人に声をかけてDIYワークショップを開いたり、その地域でDIYの達人を何とか見つけ出してアクセスしたり。仲間を見つければどれだけ救われるか!

もちろん、「自分のことは自分でやるべきだろう、都合よく人に頼るなんて」という声もあるでしょうから、感謝と配慮は重要です。

大工仕事を一度はやってみたかったという人に練習の機会として提供するもよし、最後に楽しい飲み会で盛り上がるもよし、今度は相手のヘルプに行くもよし。

DIYを、仲間づくりのきっかけにできれば、暮らしの楽しみも増すはずです。

<4> 自然相手の暮らしの手ごわさを思い知る

自然のある暮らしの豊かさを求めて始めた週末田舎暮らし。

緑豊かなところっていいねえ~と写真を撮ったり、野山を散策したり、畑も始めてみたり。

と、都心と違うのどかな環境を満喫しはじめてほどなく、「うわ!」だの「えー!?」だの「なにこれ!」というハプニングにもぼちぼち遭い始めます。

せっかくつくった畑がイノシシに荒らされてぐちゃぐちゃに。

台風のあと、竹藪から枯れた竹が大量に倒れてきて道がふさがってしまった。

去年はいなかったのに、今年は毛虫大発生の年?

都市と違うのは美しい部分だけではありません。人間都合だけでできているわけではない環境ですから、不都合なことだって大いに起こり得ます。

都市では“ありえない”ようなことがフツウに起こり、どうするのよ! とクレームを言おうにも言う相手がいない。対応するのはほかでもない、自分です。

そして、周りを見ると、“ありえない”ことに淡々と向き合って、ちゃっちゃと手を動かして元の生活を取り戻している地元の人々の姿があります。望まぬ事態をハプニングと思うか、日常によくあることと思うかは、その暮らしの年季の入り方などによって違いますよね。

ちょっとやそっとのことでいちいち心がキュッとなったりせず、大らかに暮らしを楽しめるようになるには、経験とスキルが必要です。

困ったときに誰かに助けてもらうのは決して恥かしいことではありませんが、「自分でどうにかしよう」と頑張ってみることで、どんどん生活力が上がり、それに比例してストレスが減るのも事実です。ストレスは、解決可能性を自ら導き出せないときの心的負荷であることが多いですから。

週末田舎暮らしは結婚のようなもの?

…いかがでしょうか。

わたしはよく、週末田舎暮らしと結婚を重ねて考えることがあります。

理想を求め、現実を知り、それと折り合いながら愛着が生まれていく。
もちろん、どうしようもないときは、自分が壊れる前に手を引くという判断も必要ですけどね。笑。

ブレイクスルーを繰り返しながら、どんどん楽しさが増すような暮らし方ができるといいですね。その楽しさは、きっと思った以上に深いですよ。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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