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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

『無題』——日常のモヤモヤに梅雨の晴れ間の太陽光線

南村 忠敬南村 忠敬

2022/06/16

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イメージ/©︎mrtwister・123RF

拙者はクルマ好きである。子どもの頃からおもちゃといえばミニカー。当時ではまだ少なかった女性ドライバーだが、拙者の母は早くから運転免許を取得し、父親と共にマイカーの運転を日常としていた。なのでクルマに乗ることが当たり前で育ったせいか、18歳で免許をいただいてから今日まで、自家用車を持たない生活をしたことがない。

2017年6月5日。神奈川県下の東名高速道路下り線で、追い越し車線に停車していた2台の乗用車にトラックが追突し、2人が死亡、4人が重軽傷を負った悲惨な事故が発生した。この事故をきっかけに、“あおり運転”という言葉が市民権を得て、以降、危険運転の代名詞的に広まったと記憶している。

先般、横浜地裁で懲役18年の実刑判決の控訴審による差し戻し後の裁判で、改めて同様の実刑判決が下ったが、この手の重大事故に係わる事案が後を絶たないのは嘆かわしいことである。

自動車が社会的に普及し、既に100年(アメリカの自動車産業が飛躍的に発展したのが1920年代である)が経とうとしている今、技術的な進歩は自動運転に及ぼうとしているが、拙者も含めてクルマ好きの人たちには、そもそもの目的が異なる技術開発の先にある自動車という機械を操る行為の概念が崩れていく。秋風落莫の思いがしくしくと胸を刺すのである。

クルマ好きだからと言って、運転技術がどうの、メカニックに長けているとかではなくて、とにかくクルマを操ることが大好きなので、相対的にあまり運転を好まないドライバーとの違いを誇るなら、ズバリ“細やかな運転マナー”を心掛けていることだろうか。

細やかな、と言うからには、一般的な交通ルールの線上に在るマナーとは違い、自分が運転するクルマを取り巻く周囲へのマナー、つまり独りよがりの“思いやり”とでも言おうか。

例を挙げれば、「左折時のキープレフト(これは自動車学校でも教えるらしいが、肌感覚で3割ぐらいのドライバーしかできていないように思う)」、「1車線道路の対向車が右折待ちで後続渋滞の際は右折を譲る」、「右折車線の無い道路で右折の際のキープライト(対向車線にはみ出すようなことはしないが)」、「常に両サイドと後方をミラーで確認し、他車のスピードを把握しながら急ぎの車は先を譲る走行(常にというのがミソ。これによって何十年も白バイさんや覆面さんに世話を掛けたことが無い!)」、「信号待ちの際に隣の車と窓位置を少しずらす(見られてる感を感じさせない。逆なら自分が嫌だからね)」、「安全が確認できている右左折のスピーディな動作(後続車をイライラさせない)」、「夜間の信号待ちでは消灯(最近はほんとに少なくなった)。青に変わっても交差点を抜けるまでは点灯しない(消灯の意味はここにある)」、「シルクタッチのブレーキ操作(同乗者にカックンさせない=ブレーキポイントが早くなるのでより安全)」、「高速道路での合流や車線変更車には積極的に譲る(結果として自身のイライラが起きない)」など。読者諸氏には嘲笑を買うだろうけれど、我流のトラブル回避術として実践が身に付いていることなのでお許し願いたい。

でも、これって結構役に立っていると思う。それが証拠に、早30年以上毎日通勤に、仕事にクルマを使い、平均走行距離は、月に2000キロほど走るので、プロのドライバーを除けばそこそこ走っている方だと思うが、無事故無違反、ゴールド免許を維持しているから、ちょっとだけ「へぇ~!」をいただけたら嬉しい。

【常時ハイビームは違法です】

最近ずっと気になっていることがある。それは、街中や対向車の有無に関係なく、ハイビーム(上向き前照灯)の車がとても多いことだ。自分の車の存在を周囲に知らせることを目的に、警察庁はハイビームを奨励しているが、その中身を正しく理解しているのかと疑いたくなるほど、迷惑ハイビーム車が横行していると感じているのは拙者だけだろうか。

もし、「法律が改正されて、ハイビームを使用することが義務化された」と仰る方がおられるなら、それは、「高齢者ドライバー用ステッカーの掲示は義務ではない!」という認識と同じ間違いだ。

道路交通法第71条の5第3項は、「前略、普通自動車を運転することができる免許…を受けた者で75歳以上のものは…普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。」と規定されており、75歳以上の高齢ドライバーにおいては所謂『高齢者マーク』の表示は必須なのである。因みに、同条第4項に70歳以上75歳未満の高齢ドライバーについての同表示の努力義務が定められているが、それと混同してはいないか?

ハイビームの法規制についても、交通の方法に関する教則の一部改正(※)で、夜間の灯火の方法(平成28年10月28日告示、平成29年3月12日施行)が明文化されたが、これは法律ではないし、これをもってハイビーム走行が義務化された、なんてことはない。

※交通の方法に関する教則 (一部抜粋)

第6章 危険な場所などでの運転

前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません

交通量の多い市街地などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。

第7章 高速道路での走行 

夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにして、落下物や交通事故などにより停止した車を少しでも早く発見するようにしましょう。

それどころか、道路交通法第52条第2項は、「車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。」と規定されている。こちらは列記とした法律で、違反者には罰則が適用される。

こういう個々の思い込みや早合点によって、周囲に及ぼす影響がトラブルを引き起こす元となることも少なくなく、「眩しいやろ!!」と激怒した運転者の“あおり運転”につながる恐れだって否めない。拙者が免許を取った頃の時代は、教習所に通うよりも運転免許試験場での“飛び込み”受験がステータスという気運があって、自身も教習所には行かなかった口だ。だから、試験に受かるためだけの勉強と、運転技術を上げることに専念し、仮免突破の平均受験回数11回のところ、7回目で合格!なんて自慢したものだった。だから、試験が教習みたいなもので、まともに交通法規を教わることもなかったがため、免許を取ってから知る交通ルールは、反則金と切符の枚数分で身に付いていったように思う。

他方、教習所で学科をクリアして免許を取られたにも係わらず、法規とルールが身に付いていないドライバーの多いことは、日本の教育実態に通ずるところがあるのだろうか(何年英語を習っても実践力はゼロというように)。


イメージ/©︎osazecuomo・123RF

【走行車線と追い越し車線】

道路によっては区分された車両の通行帯が示されているが、そこに「走行車線」とか、「追い越し車線」というような名称が付されているわけではない。車線の呼び名は一般的だが、法律では規定がなく、複数車線の道路では、左側から「1番目、2番目、3番目…の通行帯」というふうに表されている。

では何故走行車線とか追い越し車線などと呼ぶことが一般的かというと、道路交通法第20条(車両通行帯)の規定で、「車両は、中略…道路の左側端から数え一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(除外略)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。」と決められている。つまり、複数車線の一番右の車線は、通常の場合、車両の走行が認められていない通行帯で、追い越しや右折、危険回避で止むを得ない場合に限って走行が許されるので、あえて“追い越し車線”と呼ばれるようになった。

だから、何も“高速道路や自動車専用道路”に限ったことではなく、一般道でも適用される“通則”だということに注意しなければならない。各地に見られる片側3車線程度の一般道で、右側車線が右折専用レーンとして通行指定されている道路を走っているとき、渋滞を避けるために交差点手前まで右側を走行し、左側の車列に割り込むことなど日常的だ。ドライバーの多くは、「何故ここが右折専用なんだ!? 直進と右折の併用にすれば走りやすいのに!」と思われているだろう。何故右折専用レーンなのかは、前述の通り複数車線の最も右側の通行帯だから、なのである。

道路交通法は、ドライバーの“走り易さ”を追求するための法律ではなく、車両(軽車両含む)から歩行者等を守り、交通安全のために交通障害を防止するのが目的の法律だからである。人間はつい自分本位で物事の利便性を考えてしまうが、道路交通法上ではクルマはあくまでも客体なのだ。


イメージ/©︎photoAC

何はともあれ、クルマは人類屈指の大発明であることは疑いない。自動車の歴史は地球環境破壊の歴史でもあり、この先の近未来に向けて、自動車を取り巻く環境は大きく変貌を遂げていくはずだ。

それを操るのが一人一人の人間であることが、恐ろしくも凄いことだと思う。鉄の塊は、人々の夢を育む文字通りのDREAM-CARである反面、人の命をも奪う凶器ともなる。アンガーマネジメント(怒りのコントロール)が取り沙汰されるが、そもそもクルマに乗ったら怒らない、ということが重要なのであって、罰則強化一辺倒でドライバーのストレスを冗長する施策には限界を感じている。未来のクルマには、運転免許のほかに、興奮を引き起こす脳内ホルモン“noradrenaline(ノルアドレナリン)”抑制手術が必須とならないよう、理性を磨きたいものだ。

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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