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ビジネスパーソンは要注意 瞑想、マインドフルネスによって陥る「禅病」の危険性(2/2ページ)

正木 晃正木 晃

2021/07/12

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現代に続く「禅病」と、その治療法

かつて、わたしが懇意にしていただいた高名な禅僧も、30歳代の前半で、ひじょうによく似た症状になったとおっしゃっていた。その方は「深い穴に落ちこんで、下から火であぶられて、ひりつくような感じで、どうやってもそこから逃げられなかった」ともおっしゃっていた。

しかも、禅病の厄介なのは、治ったと思っても、ある日、あるとき、突如として、ぶりかえすことだという。心身ともに回復して、良い気分になり、寺の裏庭で、ほころび始めた梅の花を見て、そのかぐわしい香を嗅いだ瞬間、いわゆるフラッシュバックのように、禅病の最悪の症状がよみがえってきたという。結局、克服するには何年もかかったと聞く。

白隠の場合は、白幽子(はくゆうし)という謎めいた人物と出会い、かれから「軟蘇(なんそ)の法」を授かって、危機を脱した。「軟蘇の法」に実践方法ついては、「日本の禅僧とチベット密教が実践していた身体を癒す秘法」でご紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。

ビジネスパーソンの「瞑想ブーム」が危ない理由

昨今、瞑想がブームである。

トランセンデンタル・メディテーション、マインドフルネスなど、各種各様の瞑想法が話題になっている。

目的もさまざまある。気楽な健康法として、仕事の合間のリラクゼーションとして、本気で「悟り」を求める方途として、瞑想が実践されている。そのなかで、わたしが最も危惧しているのは、仕事の効率をさらに高める手段として実践される瞑想である。実は、これがけっこう多い。

たしかに、瞑想することで、心身がともにリラックスした状態になり、解放された心身環境が新たなアイデアや発想を生むことは、十分にあり得る。現に、アップルの創始者のスティーブ・ジョブズは、日本の曹洞宗の禅僧に師事していた。わたしがお付き合いしている経営者のなかでも、瞑想を実践している方が少なくない。

しかし、仕事の効率をさらに高める手段として実践される瞑想は、その人を非常に危険な心身状態にしてしまう危険性が否めない。たとえば、瞑想を実践して、良い仕事に結実したとしよう。このように、瞑想と良い結果がうまく結び付いているときは、まだ良い。ところが、瞑想と良い結果が結び付かなくなったとき、その責任の一端が瞑想にあると考える人が出てきても、さして不思議ではない。

そんなとき、選択肢は二つある。その瞑想を止めるか、よりいっそう瞑想に励むか、である。どちらを選んでも、あまり良い方向へは進まない。なぜなら、どちらも「結果」を求めているからだ。

そこに問題の根源がある。なぜなら、禅宗が実践してきた坐禅などの瞑想法は、「結果」を求めないとされてきたからだ。ただただ、ひたすら坐る。それが本来である。

しかし、昨今の瞑想ブームを見ていると、ほとんどの方がなんらかの「結果」を求めて瞑想を実践している。これは極めて危険な方向だ。なにしろ、白隠ほどの天才宗教者ですら、悟りという「結果」を求めて、そのあげくに「禅病」に罹ってしまったのである。

くれぐれも用心していただきたい。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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