ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

食事を華やかに演出する「テーブルウェア」の歴史と基本

MieMie

2021/03/10

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

16世紀以前はフランス王室も手づかみで食事をしていた?

今回前回までの記事一覧からは「テーブルウェア」についてのお話です。

「テーブルウェア」とは食器類の総称で、日本なら和食器で揃え、欧米なら洋食器で揃えるといったように料理によって使い分けられますが食事の際に使用するアイテムの全総称を「テーブルウェア」と呼びます。

【照明器具の選び方】の章で、食事を美味しく引き立たせる照明の配置や器具類の選別をご紹介しましたが、それに加えて室内空間や料理に適した「テーブルウェア」を選択することで食卓もライフスタイルも気分も、より一層、豊かになります。

「テーブルウェア」には食事を取る空間や料理との相性がありますので、より良い食卓を求めるには空間やシチュエーションに適した物を揃えることが必要です。単に料理の盛り付けだけにとどまらずに、ライフスタイルの趣味趣向やインテリアにも調和することが大切です。

今回はヨーロッパの多くの食卓で使われているテーブルウェア(お皿、カトラリー類のスプーンとフォークとナイフ、グラス、ナプキン、テーブルクロス)に関する歴史や役割をお話ししていきます。

ヨーロッパでのテーブルウェア文化が始まる以前は、木材や地味な色調の陶器のお皿しか存在しなかったため、その当時のヨーロッパの多くの国々では、一般庶民も貴族も粗野に盛り付けされた料理をお皿に乗せて手づかみで食事をして、テーブルクロスで口を拭いていました。

ナイフとフォークを使って食事をするスタイルは現代からさかのぼって、わずか数百年程度の歴史しかありません。ですから、人類の歴史的、文化的な視点からの考察では、最近になって生まれた文化といっても過言ではないのです。

ヨーロッパのテーブルウェア文化が広まったのは16世紀といわれ、中国から《磁器》が伝わったころといわれています。白く美しく薄く硬く頑丈な《磁器》にヨーロッパの富裕層たちは瞬く間に魅了され、テーブルウェア文化が一気に開花しました。

テーブルマナーのはじまりは「メディチ家」から

最初に《磁器》の製法がヨーロッパで伝わったのはイタリアのフィレンツェでした。その当時、すでに金融業などのビジネスで財を増幅させていたフィレンツェの名門貴族であった「メディチ家」は《磁器》の複製品を製造してさらに大成功を収めます。

「テ-ブルウェア」という言葉が一般的に使われはじめたのは18世紀中頃、1766年あたりのヨーロッパといわれています。


©katsuhikoyamagishi・123RF

「テーブルウェア」では、いろいろな食器類を使うため、テーブルマナーが必須となります。そして、このテーブルマナーの起源も「メディチ家」出身の花嫁がフランス王室に嫁いだときからといわれています。

花嫁と一緒に大勢の料理人、デザート職人、香料師たちと一緒に、食器、カトラリー類など(食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなど)もフランスに持ち込まれました。それまでスプーン、フォーク、ナイフを使う習慣のなかったフランス王室はイタリアから嫁いで来た花嫁の洗練された食事風景を見て、さぞかし驚き、共に魅了されたことでしょう。つまり、フランス料理の原点はイタリア料理に始まり、テーブルマナーもイタリアが始まりなのです。

このイタリア上流階級分化を目の当たりにしたことをきっかけに、フランスは洗練された優雅な料理とテーブルマナーの文化が発展し、「テーブルウェア」もヨーロッパ全土に浸透することとなったのです。

次ページ ▶︎ | フォーマルな仏英式の「ディナーウェア」 

フォーマルな仏英式の「ディナーウェア」


©fedorkondratenko・123RF

それではヨーロッパの「テーブルウェア」の中でも世界的に知られているフォーマルな仏英式の「ディナーウェア」と呼ばれるコース料理の様式を紹介します。

「ディナーウェア」とは、晩餐に限らず朝でも昼でも正式なコース料理に使用される食器類のことです。

磁器のお皿が基本となり、サイズや用途は盛り付ける料理によって決まっていて、同一デザインで揃えることが正式とされています。

磁器の食器を中心に金属のカトラリー類、グラス類、ナプキンなどのテーブルクロス類も含まれます。華やかに盛り付けられたコース料理の献立と出される順番は次のようになります。

1)オードブル(前菜)
2)スープ
3)魚料理
4)肉料理
5)野菜
6)デザート
7)フルーツ
8)コーヒー(紅茶)

以上のものが、調和の取れた美しい流れの順番で提供されることが特徴です。そして、カトラリーやグラス類も献立に合わせて数種類用意され、食事をする側と給仕する側がお互いに動作しやすいように考えられた形を基本として構成されています。

食事を華やかにする「テーブルリネン」の役割

加えて、料理と食器類をその場に最も相応しい雰囲気に合わせて、さまざまな状況の変化にも対応し、シーン毎の演出や表情を上手く表現する役割としても、テーブルクロス、ナプキンなどは大切な要素となります。


©Pavla Žáková・123RF

テーブル全体を覆うフルクロスの上に長さを変えて掛ける布をトップクロスと呼び、フルクロスの下に敷く布をアンダークロスと呼びます。

アンダークロスはカトラリーやグラスを置く際の音をやわらげます。また、複数の布を重ねる摩擦によってクロスが滑り落ちるのを防止する役割も持っています。

ナプキンは食事中に胸や膝に付着する汚れから衣類を守ったり口元を拭くだけではなく、料理が運ばれる前のテーブルに並ぶ食器類と共にその色や折り畳まれた芸術的な形状の美しさで彩を添えるアイテムでもあります。テーブルクロス、ナプキンなどの総称を「テーブルリネン」と呼びます。

次回は「ディナーウェア」の具体的な種類についてのお話をします。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

MIE色彩研究社代表

自由が丘産能短期大学能率課インテリアコーディネーター課程卒業。産業能率大学情報マネジメント学部卒業。東京商工会議所カラーコーディネーター検定試験認定講師。電子機器製造メーカー、産業機械商社に勤めながら、社会人学生として産業心理学を学び、色彩と人間の意識との深い結びつきに共感。さまざまな社会経験を通して、色彩と人の意識に関わる数多くの実証の基、色彩スペシャリストとして事業を展開。東京都中央区銀座のオフィスではこれまでに培ったパーソナルカラー、空間色彩、商品色彩、カラースクール、色彩セミナーなどを個人、法人を問わず全国で行っている。趣味は街散策。

ページのトップへ

ウチコミ!