究極の「和」のかたち #1 ——茶室のインテリア・オーナメントの基本
Mie
2021/12/17
「茶会」で使われるアイテムはおよそ200種類
今回は「茶室のインテリア/日本」のインテリア・オーナメントについてのお話です。
抹茶を飲む習慣は中世に中国から伝えられ、その後、数世紀を経て日本独自の発展を遂げました。日本の伝統文化である「茶の湯」の作法は茶室に至るまでの路地を楽しむことが、すでにプロローグとなっていて、寄付(待合室)での諸道具を愛でることから始まります。
茶室に入ってからは、その日のテーマとして選ばれた話題を楽しみながらテーマに沿った「しつらえ(おもてなしの気持ちを表す準備)」のなかで、美術工芸品でもある茶道具類を観賞します。茶の湯の作法によって花開いた茶道具類は実用性と芸術性を兼ね備えたインテリア・オーナメントと言えるでしょう。
「茶会」は懐石、濃茶、薄茶を頂くときの作法であると同時に、亭主(茶事を主催する人)がしつらえた、芸術的な空間を招待客が数時間に渡り一つひとつ観賞する時間でもあります。茶席の道具には、寄付(待合室)で使用する道具も合わせると200種類にもなるといわれています。
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床の間に表現される季節感、亭主の思い
「しつらえ」でもある茶室内には茶道にもとづいたインテリア・オーナメントで構成されています。
茶室内の「床の間」は室内で最も格式が高く大事な場所であり、その床の間に掛ける「掛軸」は茶道具のなかでも一番、格の高い道具とされています。
「茶の湯」の席は季節感を大事にします。
茶席にはその季節の風物や書などの掛軸が用意され、茶席の主題の中心にも値します。掛軸は墨跡(ぼくせき:禅宗の僧侶が毛筆で書いた筆跡)、色紙、短冊、消息(書筒、書状)、唐画(中国または中国風の絵画)などがあり、掛軸は全て表具(布や紙を張って仕立てる)の状態で観賞します。
茶席で用いられる掛け軸には詩や禅語などが書かれているものも多くあります。掛け軸に書かれている文字や言葉によって季節感を出す以外に、亭主が今回のお茶席に寄せている「思い」などが書かれているものも多くあります。「このような茶席にしたい」「今回、このように楽しんでほしい」という「思い」が掛け軸によって、分かるようになっているのです。
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「茶花」の役割、生け方、花の選び方
茶室にさりげなく飾られる「茶花(ちゃか、ちゃばな)」も茶道の中では大きな役割を果たしています。
それぞれの季節に見合った茶道具、花、茶菓子などを通して四季を味わうというのは、茶席や、茶会のなかでも重要な目的の一つです。
茶花は千利休(せんのりきゅう:安室桃山時代に侘茶を完成させた)によって「花は野にある様」と定められています。自然の中に咲いている本来の姿のように生けることが重んじられているため、生け花のように技巧的に見せたり、華やかに飾ったり、何種類もの花材を取り合わせたりすることはありません。
千利休/Public domain, via Wikimedia Commons
手折ったばかりの摘みたてのような素朴な生け方をします。ですから、茶花は栽培されている花というより、山野に生えていたかのような野草が選ばれることが多く、西洋系品種の花は茶花としては選ばれません。ほかにも香りの強い花、トゲのある花、縁起の良くない名前を持つ花なども避けられます。
なお、茶花を生ける「花入れ」は茶花を飾る器で茶席の床に置く形式の他に、床柱に掛けたり、掛軸を外して中央部に掛けたりします。
籠、金属、陶磁器…花入れにもある「格式」
花入れには竹、籠、金属、陶磁器などがありますが、花入にも格があって「真」「行」「草」の順位に分けられます。
「真」は一番格が高く、胡銅(こどう:銅、錫、鉛が原料の暗黄色の合金)、唐銅(からかね:銅や錫に鉛、鉄、ニッケルなどを加えた青黒色の合金)、唐物青磁の材質。
「行」は二番目で上釉の掛かった和物の陶磁器の材質。
「草」は三番目で竹、籠、瓢(ふくべ:ヒョウタン)や上釉の掛からない陶磁器の材質。としています。
また、茶室においては掛軸と花を同時に飾らないのが正式で、両方一緒に飾るのを「双飾(もろかざり)」といいますが、これは略式の扱いとされ、掛軸が長い場合、花入は床柱の釘に掛け、横物の場合には花入は下の床の真ん中に置きます。縦に長い掛物でも取り合せで下に置く場合は、下座寄り三分の一の所へ、脇に寄せて置きます。
次回(究極の「和」のかたち #2 ——茶室を引き立たせる道具の数々とその意味)も引き続き日本独自の文化であり、侘び寂び美学の象徴でもある「茶室のインテリア/日本」のインテリア・オーナメントのお話です。
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この記事を書いた人
MIE色彩研究社代表
自由が丘産能短期大学能率課インテリアコーディネーター課程卒業。産業能率大学情報マネジメント学部卒業。東京商工会議所カラーコーディネーター検定試験認定講師。電子機器製造メーカー、産業機械商社に勤めながら、社会人学生として産業心理学を学び、色彩と人間の意識との深い結びつきに共感。さまざまな社会経験を通して、色彩と人の意識に関わる数多くの実証の基、色彩スペシャリストとして事業を展開。東京都中央区銀座のオフィスではこれまでに培ったパーソナルカラー、空間色彩、商品色彩、カラースクール、色彩セミナーなどを個人、法人を問わず全国で行っている。趣味は街散策。