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投資していい不動産の見きわめ方は?

海外不動産投資セミナーで投資物件を買ってはいけない3つの理由

市川 貴士市川 貴士

2017/09/05

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海外不動産投資に興味を持つ人が増えている


© Nuamfolio – Fotolia

いま、海外不動産投資に興味を持つ人が増えているようです。私は、「国際不動産コンサルタント」として、日本人の投資家に海外不動産の紹介や投資のコンサルティングを行なっていますが、特に、2016年から2017年にかけて、日本の不動産価格の上昇が顕著になったことを受け、日本の不動産から海外不動産投資へシフトしたいという投資家が増えてきたことを実感しています。

日本では、早い人だと15年ほど前から海外不動産投資を始めていました。その当時、海外で不動産を購入している日本人はまだまだ少なく、純粋な不動産投資というよりも資産フライト(不動産の海外移転)の目的が多かったのではないでしょうか。

ハワイの不動産購入はすでに日本人に人気がありましたが、投資というよりもセカンドハウスとしての購入や、タイムシェアとしての購入と利用が古くから定着していました。

日本人による第一次海外不動産投資ブームが始まったのは、2011年頃のことです。リーマンショックが2009年でしたが、円高が進行し、2010年には1ドル88円、2011年には1ドル80円を切りました。

当時は日本の不動産価格も安く、多くの投資家は日本の不動産に加えて、主に東南アジアのタイ・マレーシアで、500万円程度から買えた「プレビルド」のコンドミニアムを数多く購入しました。

プレビルドという販売方法は、タイやマレーシアなどでは一般的に行なわれているもので、事業主が着工前に販売を行なう手法です。プレビルド物件は、販売開始時には、低い価格で買うことができますが、工事が進んで完成が近くにつれて販売価格は上昇していくのが、その特徴と言えます。

こうしたプレビルド物件を購入して、「数百万円の投資で完成までに値上がりを期待して転売する」という不動産投資スタイルが流行したのです。

 

投資家が海外不動産投資へシフトしている背景は?

2013年になると、アベノミクス効果による株高や、ドル高円安によるFX投資で利益を上げた日本人投資家の一部は、その資金の一部を海外不動産に投資し始めました。

当時は、日本の不動産価格も上昇が始まっており、また、太陽光発電投資も1年間で減価償却ができるグリーン減税制度の後押しによってブームとなりました。

その頃の海外不動産投資は、投資が先行したタイ・マレーシアの不動産価格が上昇して投資しにくい環境になり始めたこともあり、より価格上昇の期待感が強いフィリピンやカンボジア投資に人気が移り始めました。

2015年には、ベトナムが外国人による不動産購入を解禁したことや、イギリスの学生寮投資やアメリカの中古木造不動産をはじめとする先進国の不動産投資も始まり、海外不動産投資セミナーのバリエーションも豊富になってきました。2015年は円安が一気に進みましたが、海外不動産投資への流れは拡大していきました。

そして、2016年から2017年にかけて日本の不動産価格の上昇が顕著になると、国内不動産から海外不動産投資へシフトする投資家が増えてきたのは冒頭に申し上げた通りです。

海外不動産投資への融資の道が多少なりとも増えてきたことも、海外不動産投資がますます注目されてきている要因ではないでしょうか。

不動産セミナーの開催目的は不動産の販売

海外不動産投資が注目されている背景がおわかりいただけたと思いますが、日本人投資家は海外不動産の情報をどこから得ているのでしょうか。

たとえば、その国の不動産事情に詳しい知人などがいるなど、自分で情報を得られる場合を除くと、多くは「海外不動産投資セミナー」からの情報を得ているのではないでしょうか。

セミナーといっても、不動産投資セミナーの場合、単なる情報提供ではなく、主催する会社が自社で扱っている物件をセミナー参加者に仲介・販売する目的で開催される場合が多いです。セミナーの参加を考えるのであれば、まずはこのことを認識しておいてください。

集客のため、海外不動産投資セミナーのタイトルには、さまざまなキャッチが並びます。次のようなフレーズを目にしたことのある人は多いことでしょう。

「利回り○○%から始める○○不動産投資の魅力」

「○○万円から始める○○不動産投資の秘訣」

「○年間○○%利回り保証。魅力の○○不動産」

集客のためには「行きたい!」という動機づけが必要になりますが、有名な都市以外の集客には工夫も必要です。一般的には「高い利回り」「買いやすい価格」の海外不動産投資セミナーには、より多くの投資家が集まります。

また、海外不動産投資に限らず、不動産投資セミナーは二部構成や三部構成のものが多く、一部には有名人を起用して講演を行なう場合もあります。ただし、講演の内容はそこで販売する投資用不動産とは関係ないものも多いです。

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海外不動産投資セミナーの情報を信じてはいけない3つの理由

海外不動産投資セミナーは、まずその国や都市のマクロな情報の話からスタートするのが一般的です。その後、セミナーで販売したい不動産の説明に入りますが、当然ながらセミナーで売りたい不動産に関する悪い情報は積極的には話しません。

「短所も長所の裏返し」のような表現はありますが、耳心地のいい話に終始し、物件そのものにはあまりフォーカスせずに終わることもしばしばです。参加者からの質問については、主催者の方針によります。受け付ける場合もあれば、受け付けない場合もあります。

こうした海外不動産投資セミナーで提供される情報はどこまで信じていいものでしょうか。

結論から申し上げると、海外不動産投資セミナーの情報を鵜呑みにしてはいけません。その理由を3つ、ご説明しましょう。

<理由1>セミナーは販売目的のプレゼンの場であり、情報が少なすぎる


© miya227 – Fotolia

海外不動産投資ということは、当然、その投資対象になる不動産は海外にあります。私は、これまでに海外不動産投資セミナーを200回以上行なっていますが、セミナー来場者のなかには、その国に行ったことがない人がとても多くいらっしゃいます。

つまり、参加者の多くは、現地の情報を何も持っていない状態でセミナーが行なわれるということです。それにもかかわらず、セミナーで得られる情報だけで投資を決めてしまう人がいらっしゃいます。

ただでさえ、セミナーという一定の時間内で提供できる情報は限られてしまいますし、そもそもの目的が投資用不動産の販売ですから、いい情報だけが耳に響くように構成されています。

しかも、参加者としても「投資で儲けたい」という気持ちがあるため、「自分に都合のいい話」だけを聞きたがる傾向が強いと言えます。そのため、とても少ない情報だけで、現地にも行かずに購入してしまうケースも多いのです。

セミナーで得られる情報には、質の面でも量の面でも限界があります。セミナーの情報だけで投資を決めてしまうのはリスクが高いと言わざるを得ないでしょう。

<理由2>不動産販売の経験が浅い業者が開催している場合が多い

海外不動産に興味を持つ人のなかには英語が話せて、海外赴任経験のある人もいます。また、すでに国内で不動産投資を行なっている人がほとんどです。

ですが、海外で不動産投資をした経験のある人となると、不動産業者であっても、その数は極端に少なくなります。

まして、海外と日本では、経済事情はもちろん、法律や商慣習などさまざまな点で異なっています。そのため、日本での不動産投資の経験があっても、海外不動産に投資をするためには、それとはまったく異なる価値基準や判断基準が必要です。

投資家の人たちもそのあたりのことはよく知っていて、結局は、「海外の投資用不動産を販売する業者や個人がどれだけ信用できるか」を自分なりに見きわめて投資判断をしています。「海外不動産は人を選んで買え」と言われる所以はここにあるのです。

しかし、海外不動産投資が多くの投資家に注目されるようになったのは、ここ数年のことです。不動産業者を見きわめるためには、営業年数や扱う物件数、お客さんとなっている投資家の数などがポイントになりますが、海外不動産の場合は簡単ではありません。そもそも海外不動産投資セミナーを開催する不動産業者であっても、海外の投資用不動産に精通した業者が非常に少ないのです。

自分で調べることがしやすい国内不動産ならまだしも、自分では情報の取捨選択がむずかしい海外不動産では、人の見きわめはむずかしいことでしょう。

<理由3>セミナー主催者が不動業者とは限らない

海外不動産に限らず、不動産投資セミナーは、実際に不動産を販売する業者自身が主催するセミナーばかりではありません。たとえば、メディアを運営する媒体事業者などが主催するセミナーもあります。

そうした場合、主催者はあくまでもセミナーを主催しているという立ち位置であって、その場で紹介される投資用不動産に関わりがあるわけではありません。もちろん、主催者としても登壇する不動産会社や講師をしっかり審査しているはずですが、そこで紹介される投資用不動産を推薦しているかどうかは、まったく別次元の話です。

参加する側としては、セミナー主催者が推奨する物件が紹介されているように錯覚しがちですし、「この会社が主催するセミナーだから大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。ですが、投資するかしないかはあくまでも自己責任です。しっかりと自分自身の目で判断するようにしてください。

投資していい海外不動産を見きわめるには?

海外不動産投資セミナーの情報を鵜呑みにしないほうがいいことはおわかりいただけたかと思います。とはいえ、独自の情報ルートを持っていない限り、いまのところ、海外不動産の情報は海外不動産セミナーに参加して取得することになります。

玉石混交ともいえる情報のなかかから、投資してもいい不動産の情報を見きわめるにはどうしたいいのでしょうか。

そのためには、海外不動産に詳しく、信頼できる人からセカンドオピニオンを得ることが最も賢い方法と言えるでしょう。

ただし、海外不動産に詳しいプロは少ないです。そのため、自分自身でも勉強を重ねていくことが大切です。投資家同士の情報交換もいいですが、偏った話になりがちなことも忘れないでください。

人を選ぶ基準のひとつは、「不動産の経験が長いかどうか」
前述した通り、「海外不動産は人を選んで買え」と言われます。海外不動産は個人で商売している人も多い業界であり、海外の不動産エージェントも基本個人マターであることが多いです。

販売する業者や人が信用できるかどうかを見きわめるには、「不動産の経験値が高い、もしくは今後も長く不動産の仕事を続けていきそうかどうか」を、ひとつの基準として考えればいいでしょう。

不動産経験が短い人のなかには、「一気に儲けて面倒になると止める」という考えの人も多くいます。そうした人を避けるには、「その人が不動産を本当に好きかどうか」を見きわめることが有効と言えます。

実際、販売業者のなかには販売後に音信不通になった人もいます。そのようなリスクに対応するには、できるだけ多くの業者や人が不動産を扱っているエリアで投資することをおすすめします。

最後に、購入した不動産の管理について触れておきましょう。

海外不動産と国内不動産の最大の違いは、やはりその不動産までの距離です。物件があるのは海外ですから、単なる値上がり期待で所有する場合以外は、購入後に信頼できる賃貸管理会社が存在するかどうかが大切です。

賃貸管理会社が日本人かどうかにこだわる必要はまったくありません。現地で5年以上は業務を続けている会社を紹介してもらうことをおすすめします。

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この記事を書いた人

株式会社国際不動産エージェント 代表取締役社長

宅地建物取引士。公認不動産コンサルティングマスター。 1961年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。 84年、株式会社リクルート入社後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)へ転籍。25年間の在籍中、不動産営業・マーケティング・商品企画に従事。その後、海外不動産の販売に従事し独立。世界各国の不動産の視察、販売を行なうほか、セミナー講師としても活躍。 30年のデベロッパー経験を活かし、独自の不動産マーケティング理論を組み合わせた分析を得意とする。14ヵ国38都市の不動産を視察し、現在も毎月海外視察を継続中。わかりやすい解説と不動産マーケットを知り尽くした深い視点からの語りが好評。

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