年収別おすすめ金融機関は? サラリーマン大家が不動産投資ローンについて知っておくべき5つのこと
川口豊人
2017/03/21
不動産投資ローンはいま借りどき?
いま、低金利のお金が大量に不動産投資ローンに流れ込んでいます。収入などの面から、かつてはローンを組めなかった人たちもローンを組めるようになり、たくさんの個人投資家、特に多くのサラリーマン大家さんが誕生しました。
いまは投資用不動産の価格は非常に高い水準にありますが、「不動産価格は高いけれども、融資は比較的受けやすい」、これが最近までの不動産投資の状況ではないでしょうか。
私のところにも投資用不動産を購入したいという人がたくさん相談にいらっしゃいます。果たして、いま不動産投資ローンを組んで物件を購入するのはおすすめといえるのかどうか、これからも融資を受けやすい状況が続くのかどうか、不動産投資ローンの基礎知識を確認しながら考えてみましょう。
<1>そもそも不動産投資ローンとは?
不動産投資に関するローンとは、アパートやマンションなど投資用の物件を購入するために、その物件(土地及び建物)を担保にして、金融機関から購入資金の融資を受ける商品です。住宅ローンと似ているように思うかもしれませんが、その性質はかなり違っています。
住宅ローンは、融資を受ける人の返済能力によって借り入れ金額の上限が決まります。そのため、物件の担保価値は二の次という位置づけになっています。
住宅ローンは、政府の住宅政策によって居住用の住宅を購入するためのローンとして優遇されている商品だからです。最近では、住宅ローンを借り入れた金融機関の口座に預貯金を積む人も多く、住宅ローン融資を入り口にして、さまざまな取引を広げていこうと戦略的に取り組んでいる金融機関もあるようです。
一方、不動産投資ローンは、「その物件から見込める収入で返済できるか」ということが重視されます。つまり、物件の収益性に見合った融資かどうかが問われるのです。
ただし、初めて投資物件を購入する場合には、給与収入など一定の収入があり、「その物件からの収入で返済ができない」ことになった場合でも、その他の収入で返済が可能かどうかを審査されることになります。
金融機関は、過去の実績がない人には消極的な融資判断をします。そのため、初めての人の場合は、「不動産投資が失敗した場合でも、融資を回収できるか」ということを重視するのです。金融機関の考え方が、そもそも減点方式なので、事業(不動産投資)が失敗することを前提として融資の可否を判断するといっても過言ではないでしょう。
なお、2件目からは実績が加味されるため、その他の収入よりも不動産投資からの返済能力が重視されることになります。
<2>少ない自己資金で投資を始められる
不動産投資には大きな資金が必要です。ですが、不動産投資ローンを組むことで、少ない自己資金でも不動産投資をすることができます。不動産投資ローンを組むということは、レバレッジを効かせるということです。
また、安定した高い収入がある人であれば、フルローンで不動産投資をすることができます。フルローンとは、物件価格をすべて借り入れで物件を購入することをいいます。医者や弁護士、公務員や上場企業のサラリーマンといった、いわゆる「属性の良い人」たちが対象となります。よってサラリーマンでも、給与収入が安定していない人や、それほど高くない人は、フルローンで借りられる可能性は低いと言えます。
とはいえ、各金融機関の状況にもよりますが、これから不動産市況が活性化していくタイミングや、景気が上向いているときには収入が低い方でもフルローンで借りられる場合もあります。
返済の見込みがある方には満額回答しますし、返済の見込みが低い方には融資をしない、もしくは減額して融資を行なうが金融機関の考え方です。
(参考記事)
頭金ゼロで不動産投資を始めた人の末路
<3>不動産投資ローンの条件はどうなっているの?
次に不動産投資ローンの融資期間について見てみましょう。
融資期間は、各金融機関により異なっているものの、一般的には法定耐用年数(税法で決められた償却期間)が判断基準となります。建物の躯体ごとに法定耐用年数というものが決められており、居住用住宅の場合はRC造は47年、鉄骨造は34年、木造であれば22年です。
金融機関は一般的に、この法定耐用年数を超える期間の融資をしません。たとえば、築10年の木造アパートを購入しようとすると、融資期間は、「法定耐用年数(22年)−築年数(10年)=12年」ということになります。
もっと長い期間で融資を受けたいという不動産投資家は少なくありませんが、都市銀行、地方銀行では、この法定耐用年数を基準に融資期間を決めることが一般的ですし、場合によっては、それよりも短い期間を設定することもあります。
一方、信用金庫では法定耐用年数よりも長い期間での融資が可能となることもあります。融資期間は、各金融機関が判断することで、その金融機関の置かれた状況によって判断が変わることもあるので、融資期間については交渉することも重要です。
<4>金利タイプはどんなものがある? 金利はどれくらい?
次に金利についてですが、一般的なサラリーマン大家の場合は、スタート時は2~3%くらいが妥当と言えるでしょう。属性の良い方は、1%前後の金利になります。都市銀行と地方銀行の金利は低めに設定されていますが、信用金庫の場合、それよりも高くなるのが一般的です。
また、金利タイプには大きく
・変動金利型
・固定金利型
の2種類があります。
変動金利型は、金利が変動するもので、半年に1回見直されます。返済額は半年に1回見直しがありますが、金利の上昇によって返済額が増えた場合、上限はそれまでの返済額の1.25倍までと決められています。
固定金利型は、決められた期間は金利の変動がありません。1年固定、3年固定、5年固定など、固定年数を選ぶことができるものもありますが、固定の年数が長いほど金利が高くなる傾向があります。
サラリーマン大家の場合、2~3年の固定がおすすめです。変動金利は基本的に優遇金利があまりないので、金利を抑えるためには短い固定期間にするのがいちばん有利だからです。
<5>金融機関ごとの特徴は?
年収が高い方は都市銀行か地方銀行が利用しやすいです。しかし、不動産については、必ずしも都市銀行・地方銀行だけがいい条件で融資をしてくれるとは限りません。その物件の所在地や状況によっても変わってきますので、利用する方が各金融機関の特徴を踏まえて選択することが望ましいと言えるでしょう。
また、不動産投資の物件は多種多様なものがあるので、その不動産投資物件によっても利用しやすい金融機関は違ってきます。
不動産投資を始めて間もないうちは、金融機関選びについては仲介する不動産会社に任せておいたほうがいいでしょう。自分で直接、金融機関を訪れるよりも、業者の紹介を受けたほうが話し早いですし、金融機関とのパイプをつくることもできます。
金融機関ごとの特徴を一覧表にまとめましたので参考になさってください(図表1)。ただし、融資を受ける人の状況や資産背景によって条件は変わりますので、あくまでも目安と考えてください。
(図表1)金融機関ごとの融資条件など
基本的に、都市銀行が最も審査基準等のハードルが高く、融資を受けるのはむずかしいと言えます。都市銀行の次は地方銀行、信用金庫、ノンバンクという順番で審査基準のハードルが低くなってきます。
もっと言えば、都市銀行で融資を受けるには、富裕層といわれる方でなければ、借りられたとしても厳しい条件となります。地方銀行のほうが比較的貸し出しをしてくれる確率が高いと考えていいでしょう。
それでは、それぞれの金融機関の特徴を簡単にご説明しておきましょう。
(1)都市銀行
サラリーマン大家の場合、初めから都市銀行で借り入れできることはまずありません。基本的に、自己資金が必要になりますので、よほど資金があれば別ですが、不動産を購入するにあたり、都市銀行で融資を受けることはむずかしいと思ってください。仮に、借り入れできるとしたら、建物の築年数が浅いことや、担保価値(銀行の評価)あることなどが条件としてあげられます。
(2)地方銀行
地方銀行の審査基準も、都市銀行並みに厳しいですが、現在の日本においては貸出先が少ないので不動産向けに積極的に融資をしているのが実情です。そのため、都市銀行に比べると若干ハードルが低くなっています。しかし、返済期間の縛りがこちらも都市銀行と同じく残存耐用年数となりますので、建物の築年数等が重要となってきます。
基本的に、地方銀行は担保価値があれば貸出しをする方針のところが多いようです。
(3)信用金庫
信用金庫は、地域密着型なので、その地域の不動産には融資を行ないます。対応エリアが限定されてしまいますが、耐用年数などの縛りが若干緩和されますので、不動産の物件によっては有利となります。なお、都市銀行や地方銀行では貸出しをしないと言われる、ラブホテルなどにも貸出しをするところもあります。
(4)ノンバンク
ノンバンクは、初めて不動産投資をする方であっても、給与収入など一定の収入がある方には比較的貸し出しをしてくれるようです。耐用年数についても上記の金融機関よりも長く見てくれます。
また、海外物件への貸出しも実行してくれるところもあります。ただし、この場合には、日本の主要都市といわれるエリアに不動産を所有しており、担保能力があることが前提となりますので注意が必要です。
<5>不動産投資ローンのリスクは?
もうひとつ知っておいていただきたいのは、リスクについてです。
そもそも投資をするということには、リスクがあると認識して行なうことが重要です。不動産投資の場合は、建物の老朽化などで家賃を引き下げることになり収入が目減りする、もしくは空室が増加することが最大のリスクとなります。
空室が出るとローン返済がむずかしくなることもあるので、返済ができなくなることを想定して、給与収入を増やしておくことや、不動産をリスク分散して色々なエリアに所有しておくことが重要です。
また、物件を売却する場合、ローン返済があまり進んでいない段階で売却することになると、売却金額がローン残高を下回り、手元資金を返済に充ててもローンが残ってしまうこともあります。その場合、金融機関の抵当権が外せないので、売却ができないことも考えられます(抵当権が設定されたままの不動産を購入する人はいません)。
したがって、売却価格をローン残高が下回ることのない資産価値の高い物件を購入することが理想です。
(参考記事)
不動産投資で総資産10億円超! メガ大家さんが破綻する日
低金利でもいま借りてはいけない
近年、金融緩和、マイナス金利の影響で、不動産投資ローンの融資が借りやすい状況が続いていました。現在は、不動産向け融資の残高がバブル期を超えたとも言われています。マイナス金利や金融緩和によって、かつては融資を受けられなかった属性の人たちが参入してきたため、不動産投資ブームが加熱してしまったのです。
そのため、金融庁は不動産投資向け融資に対する監視を厳しくする方針を打ち出しています。そのため、民間金融機関はより厳格に審査をしなければならなくなるはずです。
事実、29年 4月から各金融機関が審査基準を厳しくすると言っていますので、いま現在は、物件価格は高い水準にありますが、今後は若干変化が出てくるのではないでしょうか。
そこで気になるのが、いまは借りどきなのかということですが、いまはそのときではないというのが私の考えです。
不動産は多額の資金を必要とするので、借り入れに頼る部分が大きい投資です。先ほども書いたように、金融機関の融資審査は厳しくなるため、現在は高い水準にある物件価格が下降していく可能性が出てきています。また、価格が下がりにくいエリア、特に都心に近いエリアは利回りが低過ぎて、いま購入しても返済が厳しいでしょう。
不動産投資は物件を購入することがゴールではなく、その後が重要です。決して買い急ぐことのないよう、慎重に投資判断をしてください。
(参考記事)
利回りは信じるな! 累計投資額1000億円の不動産投資のプロが実践する価値ある物件の見分け方
この記事を書いた人
株式会社コンシェル川口 代表取締役
1979年千葉県生まれ。 税理士事務所に勤務していた25歳のときに祖父から郊外の赤字アパートの管理を引き継ぎ、黒字化に成功する。 通常の税理士事務所では相続税額の計算や節税についてのアドバイスはできても、不動産の管理運営業務や不動産投資に近いアドバイス、相続税を軽減していく作業ができていない現状を鑑み、株式会社コンシェル川口を立ち上げる。現在は、地権者などを中心に不動産の管理運営面と税務面をワンストップで解決するサービスを提供している。 不動産投資家としても、10数年の実績を持つ。