賃貸経営における永遠のテーマ「空室対策」――内見は入るけど決まらない物件の対策
廣田 裕司
2021/12/20
イメージ/©️tktktk・123RF
皆さんこんにちは。大家兼不動産屋の廣田裕司です。12月に入り気温が低くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、何回も内見が入るのに、なかなか決まらない物件の空室対策について書いていきます。
入居申込までの行動
お部屋を探している人(以下、お客さま)が、入居申し込みに至るまでの行動は、下図の通りです。まず、物件の募集情報のなかから、自分の希望に合った物件を選別し、その後、問い合わせ〜内見〜入居申し込みと段階的に進んでいきます。
物件の選別する段階では、多数の物件の募集情報のなかから、自分の希望する条件で検索します。そのなかから、気になった物件を不動産屋さんに問い合わせし、内見に進みます。最初は多数の物件の募集情報を見ますが、最終的に一つの物件に入居申し込みをします。
内見された物件が契約に至る確率は、感覚的な数値ではありますが、20%位なので、内見の回数5回が判断基準になると考えます。
申し込みが入らない理由
空室に入居者決まらない原因は、
●募集情報に関するもの
●物件の価値(物件力)に関するもの
の2つに集約されると思います。空室対策を考えるときは、このどちらに原因があるか整理して考えると効率的です。
内見されるということは、募集情報はお客さまに届いていて、興味を持ってもらえたから問い合わせ~内見という段階まで進んでいます。
内見されるのに決まらないのは、募集広告に掲載されている情報では「住みたい物件」と感じていたのに、実際現地で内見すると違うと感じているからだと考えられます。つまり募集情報と実際の物件にギャップがあるためです。
5回以上内見されても、申し込みがないということは、物件力に問題があると考えられます。
物件力
物件の価値は、“物件力”といわれることもあります。
物件の価値が決まる要素は、「立地」「建物」「設備」「管理・サービス」の4つの要素に分けて考えます。管理・サービスのなかには、入居条件も含めて考えます。立地は変えられませんが、その他の要素は大家さんが自らコントロールが可能です。
大家さんは、「リフォームにお金がかかったから価値がある」と考えがちですが、物件の価値はあくまでも、「お客さまが感じる価値」です。ここを理解することが重要です。
家賃と物件の価値のバランス
物件の家賃は、お客さまが感じるもの(価値)に対して、大家さんが設定するものです。
お客さまは、物件の価値と家賃を比較して、物件の価値の方が高いと感じたときに、入居申し込みという行動を起こします。
お客さまが物件を探すときは、まず、支払い可能な家賃額を決めます。同程度の家賃額の物件を候補とし、最終的に申し込む物件を決めます。
物件の価値に対して高すぎる家賃を設定してしまうと、当然決まり難くなります。逆に安すぎる家賃設定をすると、決まりやすくなりますが収支面ではマイナスです。
また、このように物件の価値と家賃のバランスが悪い物件は、ほかの本命の物件を引き立てるための物件にされているため、内見の回数が増えている可能性があります。このような物件は「あて物」といわれています。
物件の価値の改善策は、設定する家賃額とのバランスを意識して考えることが大切です。
対策を考える前に
物件力の改善策を考える前に、空室となっている物件をよく観察することが大切です。
空室期間が長くなると室内に埃がたまります。単純に物件が汚れていることが、申し込みが入らない原因になることもあります。また、室内だけでなく、「エントランス」「集合ポスト」「ゴミ集積所」などの共用部が汚れていたり、散らかっていたりすることもあります。室内や共用部をきれいにしただけでも、入居申し込みが入ることもあります。
物件の観察は室内にとどまらす、物件全体に目を配るようにしましょう。
まとめ
効果的な空室対策を考えるときは、「なぜ、決まらないのか」という原因を推測することが大切です。原因を推測するうえで、内見数、問い合わせ数など、募集状況を定量的に把握し、原因が募集情報に関するものか、物件の価値に関するものかを判断するようにしましょう。
今回のテーマである、内見が入っても決まらない物件は、物件の価値に問題があると考えられます。
物件価値の改善は、最新設備の導入や間取り変更などのお金のかかる対策を考えがちです。しかし、掃除をするだけで改善することもあります。物件力の改善は、家賃とのバランス、つまり、費用対効果を考慮して進めましょう。
また、室内ばかりに気を取られず、物件全体をよく観察し改善点を探しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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この記事を書いた人
「合同会社アップ」代表 「行動する大家さんの会」代表
妻の実家の賃貸事業を引き継ぎ、賃貸経営に関わるようになる。サラリーマン時代の経験を活かし、原状回復費の低減、稼働率アップに成功。賃貸経営での経験をベースにセミナー講師としても活動。2014年大家仲間と一緒に、管理会社「みまもルーム」設立に参加。大家さんとしての経験、不動産業者としての経験を活かし、大家さんの賃貸経営をサポートする会社「合同会社アップ」を設立。大家さんのサポート活動を展開中。