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賃貸経営における永遠のテーマ「空室対策」——賃貸経営とDIY

廣田 裕司廣田 裕司

2021/09/16

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イメージ/©︎westphoto・123RF

皆さんこんにちは。大家兼不動産屋の廣田裕司です。

最近は、DIYで自宅のリフォームを楽しむ人が増えているようです。テレビや雑誌などで、自分好みにDIYでリフォームされた事例が紹介されています。

賃貸経営の分野でも、自分の物件のリフォーム工事をDIYでやっている大家さんがいらっしゃいます。DIYでのリフォーム工事の経験をもとに本を執筆された大家さんや、DIYを極めるために、本格的に建築の勉強をされ、大工さんと遜色のない腕前の大家さんなど、DIYの極めているベテラン大家さんもいらっしゃいます。

福岡の大家さんの赤尾宜幸さんが出版された本です。


『DIYの楽しみ方』赤尾 宜幸 著 セルバ出版 刊/定価:1870円(税込)

また、賃貸住宅であっても、自分好みの部屋作りをしたいと考える入居者さんもいます。この流れを受けて、「DIY型賃貸借」という考え方が出てきました。

そこで、今回は、賃貸経営とDIYについて書いていきます。

大家さんがDIYをやる理由

リフォーム工事の費用は、一度の出費が高額となるため、できるだけコストダウンしたい考える大家さんが多く、リフォーム工事費用のコストダウンを狙ってDIYでのリフォーム工事を実施する大家さんが多いと思います。

築古の物件を格安で購入し、DIYでリフォーム工事費を削減し、賃貸市場に投入するという投資スタイルもあります。

また、自分の物件を自分好みの部材や設備でリフォームしたいと考え、DIYをやっている大家さんもいらっしゃいます。

DIYは、本当にコストダウンになるのか

リフォーム工事を工務店や専門業者に発注した場合、材料費、施工費、管理費がかかります。一方、リフォーム工事をDIYで実施すると、材料費分の支出のみとなるため、コストダウンになります。しかし実際には、自分の労働力(時間)を投入しています。自分の労働力には、支出が発生しませんが、作業している時間で、ほかの仕事で稼ぐことができる機会を失っていることになります。

また、DIYでリフォーム工事をやるためには、必要な工具を買いそろえる必要があります。この工具の購入費用も発生しています。

DIYで投下する労働力(時間)、最初に必要となる工具の購入費用などのコストが発生していることも考慮し、実質的にコストダウンになっているのかを判断する必要があります。

DIYでリフォーム工事を実施するときの注意点

品質の確保
リフォームするお部屋は、入居者さんに家賃を払って住んでいただく部屋、つまり商品なので、入居者さんに満足していただける程度の工事品質(仕上がり)の確保が必要です。「素人の工事なので多少を仕方ない」という言い訳は通用しません。

安全の確保
現場での工事は、カッター、のこぎりなどの刃物や、脚立を使用した高所作業があり、危険が潜んでいます。DIYでコストダウンを図っても、大家さん自身がけがしては意味がありません。現場での作業をする際は安全に気を配る必要があります。

コンプライアンス
電気工事、設備工事など資格がないとできない工事があります。また、改造すると建物の構造上の問題が生じる部位や、使用する場所によって材料に法律上の規制があります。建物の構造や建築基準法などの関連法令に関する知識が必要になります。

DIY賃貸借

賃貸住宅の部屋でも、自分好みにリフォームして住みたいという人が増えているようです。このようなニーズを受けて、最近は部屋を入居者さんの好みに合わせて改造することができる賃貸住宅が提供されるようになってきました。

入居者さんによって改造可能な物件を、国土交通省では、「工事費用の負担者が誰かに関わらず、借主の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約やその物件」をDIY型賃貸借と定義しています。DIY型賃貸借での、契約当事者間でのトラブルを未然に防止するために、ガイドブックや契約書書式例を公開しています。

DIY型賃貸借のメリットとデメリット

DIY型賃貸借を採用することにより、大家さんは、退去時の原状回復工事の内容を最低限に抑えることで工事費用の削減になります。半面、工事費を入居者さんに負担してもらうと、家賃が安くなる傾向にあります。

入居者さんからみると、自分好みの部屋を実現でき、持ち家のような感覚で住めます。半面、工事費用を負担する可能性もあります。

DIY型賃貸借を採用するときの注意点

DIY型賃貸借を進める場合には、契約時の取り決めが重要になります。取り決めをするうえでのポイントは次の通りです。 

・工事費用に負担区分
・改造できる範囲・工事内容
・工事内容に申請・承認
・原状回復責任の範囲・改造部分の所有権など

契約事例や注意点などは、国土交通省よりガイドブック・契約事例集などが出されているのでこちらを参考にしてください。  

また、HEAD研究会から「賃貸DIYガイドライン」が出ています。こちらも参考になると思います。

まとめ

DIYでリフォーム工事費用のコストダウンをすることは、大家さんにとって魅力的に感じると思います。しかし、DIYでのリフォーム工事は、自身の労働力(時間)の投入という見えないコストや道具の購入費用を発生していることも意識して、やるかやらないかを判断するようにしましょう。また、工事を進めるうえでもさまざまな注意点にも配慮しましょう。

また、不動産投資以外に本業を持っている人は、本業に影響のない範囲で考えるべきだと思います。

賃貸住宅であっても、自分好みにリフォームして住みたいと考えている入居者さんは、一定数いらっしゃると思います。入居者さん自身で、自分好みに改造した部屋は、愛着が強く長期間の入居が期待できます。DIY型賃貸借を採用することも、空室対策の一つになると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【過去の記事】
管理会社について考える②
管理会社について考える①
効果的な空室対策を進めるために

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この記事を書いた人

「合同会社アップ」代表 「行動する大家さんの会」代表

妻の実家の賃貸事業を引き継ぎ、賃貸経営に関わるようになる。サラリーマン時代の経験を活かし、原状回復費の低減、稼働率アップに成功。賃貸経営での経験をベースにセミナー講師としても活動。2014年大家仲間と一緒に、管理会社「みまもルーム」設立に参加。大家さんとしての経験、不動産業者としての経験を活かし、大家さんの賃貸経営をサポートする会社「合同会社アップ」を設立。大家さんのサポート活動を展開中。

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