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味方のはずが強力なライバル? 管理会社と付き合うために賃貸住宅オーナーが知っておきたいこと

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イメージ/©︎watchararitjan・123RF

管理会社の多くは矛盾を抱えている

投資型のサラリーマンオーナーなど、最近は不動産業界の仕組みをしっかりとリサーチしてから実践に臨む勉強家の賃貸住宅オーナーが増えた。そのため、以下の話については初めから心得ている人も少なくない。しかしながら、少し以前までは、これを聞くと「えっ」と驚き、しばし絶句したあと「そうか」と納得する人も多かった。

管理会社はオーナーにとって頼りになる味方のようでいて、時に悩ましい敵になることもあるという話だ。

賃貸不動産管理会社の多くは事業構造上の矛盾を抱えている。このことをオーナーは彼らと付き合ううえでしっかりと押さえておく必要がある。2つのポイントを伝えたい。

1.管理会社も実はライバルオーナー

少なくない割合の管理会社が、オーナーから預かった物件の管理および入居者募集という大事な2つのミッションを請け負いながら、一方で自らも賃貸物件を所有している。そうするワケはいろいろだが、これがそもそもの矛盾の始まりだ。

分かるだろうか? つまり、彼らも賃貸住宅オーナーなのだ。同じ募集エリアに物件を持つ一般のオーナーにとって、そうした管理会社は「競合」となる。

そのうえで、彼らは一般のオーナーが持ちえない力も備えている。宅地建物取引業者として店舗や広告を使った入居者募集活動を幅広く展開できるのだ。

「つまりは、恐ろしいライバルじゃないか」と、ここまで聞いた時点ですべてのオーナーがハッと気付くことになる。

そこで以前、われわれはこっそりあることを調べてみた。

首都圏の某駅前に店舗を構える、ある管理会社の窓口に、部屋探しのため訪問した入居希望者複数名に対し、「どんな物件の紹介を受けたか」「どんな風に推薦や売り込み=プッシュをされたか」を尋ねてみたのだ。

そのうえで、挙げられた物件の“素性”を調べてみた。すると、結果は揃ってこうなった。

力強くプッシュされた物件
・当該管理会社が貸主の物件(自社物件)
・当該管理会社が転貸主の物件(サブリース物件)

プッシュされた印象がない物件
・一般オーナーから管理、募集を預かっている物件(管理物件)
・他社が管理、当該管理会社も客付けすることまでは可能な物件(先物物件)

なお、前者にあっては窓口スタッフが、「こちらのお部屋は仲介手数料ナシでおトクですよ」といった売り文句があったそうだ。すなわち、いずれも自社が貸主のため仲介(正式には媒介)手数料は発生しない。当然、そういった効き目のあるアピールも可能となるわけだ。

もはや、説明は要らないかもしれない。

・入居者が決まれば、以降は自社が家賃を得られる=自社物件
・入居者を決めないと、入居者の代わりに自社が家賃をオーナーに支払わなければならない=サブリース物件

これらを抱えている管理会社にとって、これらの入居者を確保することは経営上至上の課題となる。反面、一般のオーナーから管理と募集を預かっている管理物件にあっては上記に比べると、いわばウェイトが軽くなる。

なぜならば、管理物件では入居者を獲得した際に、仲介手数料やインセンティブ(いわゆるAD)がまとまった一時収入として生じるほかは、その後、長期にわたっての「旨み」が薄い。基本、わずかな管理料が細々と入ってくるのみとなるからだ。

そこで、自らの経営状況もにらみつつ両者を天秤にかけた結果として上記のような窓口対応(=自社物件やサブリース物件優先)を行う会社があっても、それはなんらおかしなことではない。力学上はむしろ当たり前の流れといってもいいだろう。

つまりは自社物件やサブリース物件を抱えている管理会社というのは、一般オーナーにとって2つの顔をもつ相手ということになる。

物件管理や募集そのほか、ワンストップでサービスを提供してくれる便利なパートナーでありつつも、相手がその気にさえなれば密かに背後で足を引っ張る存在にもなりうるということだ。

2.ありがたい入居者は管理会社にとって煙たい存在?

いまどきの賃貸住宅オーナーならば、テナント・リテンションの重要性についてよく知っている。

テナント・リテンションとは、賃貸物件が借主で埋まった状態が維持されることをいう。すなわち、入居者にはなるべく長い期間にわたって物件に住んでもらった方がよいとする考え方だ。

逆に、頻繁な退去の発生はオーナーにとって悪夢となる。

なぜなら、そのたびに新規の入居者募集コスト、および、物件の原状回復コストが発生するのみならず、空室による収益機会の逸失までもが生じてしまう。そのため、突発的な事故や災害以外では、賃貸経営にとっては入居者の退去こそが、もっとも大きなダメージとなるのがその理由だ。

ところが、逆に多くの管理会社にとって、入居者の退去はよい収益のチャンスとなる。

新規募集にともなう仲介手数料や、上乗せしてオーナーからもらうインセンティブ、原状回復・リフォーム・室内クリーニングに絡んでの手配マージン、さらには(非常に評判の悪い)カギ交換手数料や室内消毒料金の徴収、加えて入居者が加入する賃貸居住者用保険や家賃債務保証契約の取次ぎによって生じる手数料(僅かだが)に至るまで、さまざまな実入りが一気に発生するかたちとなるからだ。

もっとも、管理会社側としてみれば、それらにともなっての経費等、マイナスも同時に生じるため、いわゆる丸儲けというわけでは決してない。そのうえで、「普段の安い管理料の代わりをここでいただくんです。殺生なこと言わないでください」ということにも実情はなるのかもしれないが、この場面においてオーナーとはベクトルが完全に逆方向を向いている。

すなわち、テナント・リテンションを巡っての管理会社とオーナーの立場は理論的には利益相反の関係にあるわけだ。

要は、長く住み続けてくれる入居者は、多くの管理会社の立場からは理論上あまり美味しくない。このことは賃貸住宅オーナーが管理会社と付き合ううえで、内なる胸のノートにひそかにメモしておくべきことだろう。

仕事の「正義」に悩む人たち

管理会社の多くが抱える事業構造上の矛盾について述べた。もっとも現在、実際には多くの管理会社がこうした矛盾を抱える場合でも自社の損得に安易に動かされることなく、いわば良心的に仕事をしている。

物件管理部門はオーナーのために、入居者募集部門は入居希望者のために、それぞれの顧客満足こそを第一に日々働いているということだ。

すなわち、たとえば前者はオーナーとともにテナント・リテンションに励むことでオーナーに寄り添い、後者は窓口にやってきた入居希望者の希望に応えるため、つねに最善の提案を心掛けるといったかたちだ。

また、こうした働き方は、現代の日本人(特に若い日本人)の多くが備えているよき倫理性の表れでもある。それゆえ、仕事における“正義”に悩む若者が昭和の昔などに比べいまは格段に多いということも余談ながらいえることだろう。

そうしたうえで、一方では投資する側は賢くなければならない。そのためには手を携えるパートナーのさまざまな面についてもよく知る必要がある。つまりはその点こそが、当記事が読者に伝えたい主旨となる。

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編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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