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ペット不可の物件でも小鳥やハムスターなら飼える? 答えは契約書の中にある

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イメージ/©︎dariozg・123RF

まずは契約書を開こう

多くの賃貸住宅がいわゆる「ペット不可」の決まりを定めている。では、そのペットとは具体的にどんな動物を指すのだろうか? 「ペット不可です」と言われたら、それは虫や金魚も含めてすべての生き物を飼えないことを意味するのだろうか?

実はこの答え、実態はケースバイケースでかなり曖昧なのだ。この記事ではその辺りについてガイダンスしていきたい。ペット不可の物件に住みつつも「何か生き物を飼いたいな」と思っている人にとって、ひとつの参考になるだろう。

ちなみにペットといえば多くの人が犬か猫をイメージする。なので、賃貸住宅の貸主(オーナー・大家さん)が、「ウチの物件はペット不可」としている場合も、多くは「犬・猫を飼うのはやめてね」の意味になる。

すると、「犬や猫より小さくて、鳴き声といえるほどの声も出さないハムスターやウサギなら大丈夫なのかな?」「小鳥はどうだろう?」「爬虫類は?」と疑問が生じてくるが、そのときはまず契約書を開こう。

あなたがオーナーと交わしている建物賃貸借契約書に大抵その答えが書かれている。

危険・迷惑な動物は当然ダメ

契約書を開いたら、まずは「禁止事項」に注目してほしい。

なお、禁止事項については、契約書によって表題や書かれ方がさまざま違っている。例えば、条件付きの「制限事項」と併せて「禁止または制限される行為」に括られているなど、よくあるパターンだ。

ともあれ、コレと思われる箇所を見つけたら、内容に目を通してみよう。そこには、借主(入居者)が行ってはいけない行為のひとつとして、下記のような一文が記されていることが多いはずだ(禁止事項をまとめた「別表」に掲げられていることもある)。

「猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること」

読んで字の如くだ。これは要するに、危険なため逃げ出すと周りの人が戸締りや避難をせざるをえなくなるような生き物や、鳴き声が非常にうるさい鳥やケモノ、悪臭を放つ動物など、「そばで飼われていると、みんなが困る」あらゆる生物を指している。

すると、たとえ小さくとも毒グモが万が一脱走し行方が分からなくなれば、近所の住民も巻き込んだ事件となる。よって、当然飼育はできない「近隣に迷惑をかける動物」にあてはまることとなるわけだ。

すなわち、いまはほとんどの賃貸契約において、こうした禁止事項に定めることにより、いわゆる危険動物や一般常識として迷惑な生き物については飼育を認められないかたちがとられている。

よって、たとえペット可を謳う物件であっても、どんなペットでも「可」というわけではなく、通常は契約上、上記の決まりごとがちゃんと押さえられているはずだ。

そのため、「吠える心配はないし、部屋を傷つける可能性もないのに」と愛好家がいくら思っていても、毒グモやニシキヘビを飼える物件というのは特殊な例を除き、存在しないことになるわけだ。

 

迷惑をかけるおそれがない動物は“フリー”のケース

では、次に進もう。今度は「制限事項」の部分を契約書の中から見つけてほしい。制限事項とは、ある一定の条件(多くは貸主の書面による承諾)をクリアすれば、借主がそれを許される行為のことをいう。冒頭の「ハムスターやウサギは飼える?」「小鳥は?」の答えは、ここに書かれていることがほとんどだ。例えば、こんな内容になっている。

「借主は、本物件の使用にあたり、貸主の書面による承諾を得ることなく、以下(あるいは別表)に掲げる行為を行ってはならない」

つまり逆にいうと、「書面での承諾を得られれば、行ってよい」となる。そこで、指し示された“以下”の部分(あるいは別表)を見てみると……

「観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物(禁止事項に掲げられた動物を除く)を飼育すること」

分かるだろうか。もしも、あなたの手元の契約書にも実際にこう書かれてあるのならば整理するとこうなる。

 

「犬・猫」:貸主の書面による承諾があれば飼える(ただし、その物件が「ペット不可」で入居者募集されていたのであれば、貸主は承諾しないだろう)

「観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物」:自由に飼える

そう。この場合、小鳥や魚は勝手に飼えてしまうのだ。さらに、大型種ではないトカゲや、無毒で小型のヘビ、ハムスターやウサギといった実質鳴き声をたてることのない小さな哺乳類も、同じく「明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物」に入るだろう。

では、契約書が上記のような状態になっているとして、これをそのまま真に受けて(?)、借主はこれらの動物を貸主へ相談することなく飼ってしまってよいものだろうか?

答えは「やめておいたほうがいい」だ。なぜなら、変な話だが自らの使っている契約書の内容が上記のようになっていることを知らない貸主も実は結構いるからだ。

これは契約書を作成しているのが、ほとんどの場合貸主本人ではなく賃貸管理会社や仲介会社であることにより生じる話なのだが、そのことによるトラブルや、「迷惑をかけるおそれのない動物」の範囲についての解釈の違いを避けるためにも事前相談は必ずしておくべきだろう。

ただしその際は、そもそも契約上そのような動物の飼育はOKになっているという事実が借主の希望を後押ししてくれるはずだ。

 

すべてのペットについて“要相談”のケース

さて、いま、契約書に「観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物は自由に飼える」との内容が盛り込まれているケースについて述べたが、実は、これは、国土交通省の賃貸住宅標準契約書の中に定められているものだ。なので、この標準契約書をひな型にして契約書が作られると、ペットについての条文は、自然とさきほどのようなかたちになりやすい。

そこで、管理会社等によっては、オーナーの意向なども踏まえ、この部分を若干カスタマイズした契約書を使うことも多い。

その際、よくあるのが、すべてのペットの飼育を“要承諾事項”としているケースだ。この場合、あらゆる生き物について、借主が勝手にこれを飼うことはできない。すべて“要相談”だ。ただし、「相談は受ける。門前払いはしない」というスタンスである以上、さきほどの「近隣に迷惑をかけるおそれのない動物」については、飼育が承諾されることが多いだろう。

 

ペットは門前払いに見える?ケース

また一方で、巷で使われている賃貸借契約書の中には、つくりがいい加減か、あるいはあえてそうしているケースとして、ペットについての規定がやたらと雑なものもある。例えば、禁止事項として、「動物を飼育すること」と、ひと言のみが記されているようなかたちだ。

この場合、貸主側の意思としては2通りが想像できる。ひとつは危険性がなかろうと、どれだけおとなしかろうと、実際にすべての生き物を物件内に住まわせてほしくないといったものだ。相談をもちかけても、いわゆる門前払い、取り付く島がない結果となりやすいだろう。

もうひとつはこの記事の冒頭に記したようなケースだ。すなわち、ここで禁止している動物とは「犬・猫のことです」と、貸主側が漠然と想定しているようなこともないわけではない。この場合、「ハムスターはどうでしょう。“動物”に入りますか」などと打診をする余地は十分にあるといえるだろう。

 

ペットは家具やおもちゃではない

最近は、インターネットの動画サイトなどで、犬や猫以外の小動物による愛らしい姿やしぐさが紹介されることが増えたのもあって、賃貸住宅に住む人が、「ウチの物件はペット不可だけど、こういうペットもダメなのかな」と、いわばウズウズしてしまうことも多い。

その答えや、飼いたければどうすればよいか?の元となる情報は、大抵は契約書に書かれているので、そこをステップに話を進めればよいというのが今回のまとめだ。

なお、賃貸住宅でペットを飼おうとする人に向けては、もうひとつ付け加えさせてもらいたいことがある。

それは(賃貸住宅に限らないことだが)自分の幸せのためだけにペットを飼う=生き物の命を利用するのは避けてほしいということだ。

ペットはおもちゃではない。家具でもなく、道具でもない。飼うのならば、第一に、そのペットの幸福のためにそのペットを飼うべきだ。なぜなら、それがペットを飼うことによって人が幸せになることの本質にほかならないからだ。

 

自分の借りている部屋の家賃さえ毎月ギリギリで払い込めているような状態の人に、果たして、ペットが病気にかかったとき、病院に連れていけるだけの余裕があるだろうか?

あからさまにいえば、ペットを飼うには、世話をする十分な時間と、十分なお金が必要になる。余力がないのならば、ペットは決して飼ってはならない。

たった一度きり、この世に生まれてきた小さな命を預かる覚悟をもって、かわいいパートナーを家に迎え入れてほしいということだ。


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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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