ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由③
横山 顕吾
2021/08/19
イメージ/©️ahfotobox・123RF
自分の住みたいと思う物件を提供する――。そんな想いを持ち、広島県を中心に分譲マンションを区分で購入、賃貸として貸し出す賃貸住宅オーナーの横山顕吾さん。「ひろしま大家の会」の代表でもあり、自身を「分譲マンションコレクター」と称し、入居者に素敵な分譲ライフを提供するため日々尽力しているという。本連載は、横山さんが考える不動産投資、賃貸経営、オーナーのあるべき姿などをお届けしていきます。
前回までのおさらい
前々回、前回のコラムでは、なぜ私がファミリー向け分譲マンション不動産投資をしているのかの理由をお伝えしています。
端的にお伝えすると、ファミリー向け分譲マンション投資はほかの不動産投資と比較して断トツの「低リスクNo.1!」と判断したからです。前回までにお伝えした具体的な理由は、以下のとおりです。
・一つ目の理由は、一棟物アパマンや戸建と比較して、構造体や設備、デザインが分譲仕様のため、賃借人から積極的に「住みたい」と思っていただける可能性が高いということです。
・二つ目の理由は、ファミリー向け分譲マンションは「構造体がしっかりしている」からです。
・三つ目の理由は、分譲マンションはマンションデペロッパー(販売会社)が事前に綿密な調査をして土地を仕入れているため、好立地の物件が多いからです。
・四つ目の理由は、分譲マンションは、分譲マンション管理会社に管理組合が管理委託している場合が多く、建物管理がしっかりしているからです。
今回のコラムでも、まだまだある分譲マンションの強みについてお伝えします。
出口戦略も優秀な分譲マンション
五つ目の理由は、ファミリー向け分譲マンションの場合、「実需」の方に売却することができるため、売却額が高めになる可能性があるからです。
不動産投資家の方は、一棟物と呼ばれるアパートやマンションを所有していることが多いです。
そのなかでも不動産投資家は、どういう物件を購入しようするでしょうか? 積算価格より安い売値の物件や、利回りが高く、キャッシュフローが出る物件を購入すると思います。土地や建物の価格を算定する「積算」や家賃収入から不動産価値を逆算する「収益還元法」によって利回りを計算して、安く物件を購入しようとするでしょう。
一方、マイホームを買おうとする「実需」の方はどうでしょうか? 土地値の適正価格を知るために路線価から実勢価格を逆算したりするでしょうか? 分譲マンションの場合は、土地は区分所有者の共有となりますが、きちんと土地値を出すことができるでしょうか? 建物の価格を算出するため構造による建物単価を知っているでしょうか? 中古の場合は法定耐用年数から差し引きできるでしょうか?
それらをきちんと計算する人もいるかもしれませんが、少数だと思われます。
つまり買主として、不動産投資家よりマイホーム購入希望者の方が、不動産知識が少ないので、売主側として高く売却できる可能性が高いということなのです。
高く売却できるほかの理由
高く売却できる可能性が高くなる理由はあと2つあります。
ファミリー向け分譲マンションをマイホームで買う方は、「住宅ローン」で融資を組むからです。住宅ローンは、各銀行でいろいろな商品がありますが、ここでは公的機関の住宅金融支援機構の「フラット35」を例に解説します。
住宅ローンの金利は1%台です。新耐震基準の築年数であれば、マイホームの場合、中古でも築年数関係なく最大35年です。しかもフル固定金利です。35年フル固定で借りられるのは住宅ローンだからなのです。
不動産投資家では、30年以上の融資期間を引けて金利1%台で借りられる方は少数です。新築住宅を売却する営業マンの常套文句の「家賃を払うなら、資産が残る家を買いましょう」が35年フル固定の低金利で借りられるマイホーム購入者には通用するのです。
そのため、不動産投資家よりマイホーム購入者に売却する方が、売却金額が高額になる可能性は高いのです。
さらに、住宅を買おうとする母数について考えてみます。不動産投資物件を「買いたい」と思う人はどういう人でしょうか? 「買いたい人」は不動産投資家です。では不動産を買いたいと思っている不動産投資家は全国民の何パーセントいるのでしょうか? 根拠となるデータがないため個人的な予測ですが、多くても5%はいないと思います。もしかしたら1%未満かもしれません。
次に、ファミリー向け分譲マンションをマイホームとして「買いたい」と思う人はどういう人でしょうか? それは不動産投資家ではなく、純粋にマイホームをほしいと思っている人です。ではマイホームを買いたいと思っている人は全国民の何パーセントいるのでしょうか? 総務省統計局の持ち家比率データによると、富山県の79.4%を筆頭に全国平均は61.7%です。このデータから家を所有したい人は50%近いと予測できます。
ということは、不動産投資用物件を買いたい人が1%、ファミリー向けマンションを買いたい人が50%だと、なんとその差は50倍です! ファミリー向け分譲マンションの場合、対象層の少ない不動産投資家に加え、マイホーム購入者も購入顧客となるので、購入者層が格段に広いのです。
以上より、マイホーム購入者に売却が可能なファミリー向け分譲マンションを売却しようとすると、不動産投資家より知識が少ないため売却金額が投資物件より高額になる可能性が高いうえ、購入者は月々の返済を「住宅ローン」で返済するため、今の家賃より安くなるので高額だと思わない可能性が高く、さらに購入したい顧客数は50倍以上いるということなのです。
ファミリー向け分譲マンションの出口戦略は非常に取りやすいのです。
投資額が低いからこそのメリット
6つ目の理由が、分譲マンションは世帯数の多い一棟物より、少ない投資額で収入を得ることができるからです。
分譲マンションは、一棟物と比較してはるかに金額が安い場合が多く、単身者向けであれば、都心物件であっても1000万円以下で購入することができます。地方の場合、ファミリー物件でも1000万円以下も多数あります。私が所有している分譲マンションも、大多数が1000万円以下で購入しています。
複数戸の世帯がまとまった一棟物であれば、世帯数が多くなるため物件金額もそれなりになります。一方、区分マンションの場合は一世帯だけのため、購入金額は一棟物より安くなります。したがって、少ない投資額で済むことになり、購入金額が安いと借入金額も少なくなるという点もメリットになります。
7つ目の理由は、リスクが少ないからです。投資額や借入額が少ないということはリスクが少ないということになります。分譲マンションの場合、現金購入する方もいますので、借入をしなければ、返済リスクはゼロになります。借入額が少なければ、月々の返済額も抑えられ、空室リスクや家賃の値下がりリスクには、サラリーマン大家であれば毎月の給与を補てんすることで回避することができます。
金利上昇リスクについても借入額が少なければ、利息への影響は小さく抑えられ、返済に行き詰る可能性は低くなります。
したがって、少ない投資金額で始められる分譲マンション投資は、リスクが少なくなり初心者に向いています。
8つ目の理由は、融資が受けやすいからです。投資額や融資額が少なくなるということは、金融機関側からしても一棟物に比較して融資を通しやすいという特長があります。
特に最初の一棟目の場合、金融機関からしても借主の賃貸経営能力があるかどうか不明ですので、多額の融資には慎重になります。その点、区分マンションの場合、空室になっても給与所得などで補てんすることも可能となるため、融資もしやすくなります。
ただし、分譲マンションは土地がないため、金融機関側の計算では資産額が購入価格よりマイナスとされ、貸借対照表の資産棄損となる場合が多いです。したがって、分譲マンションを継続的に購入し続けるにはノウハウが必要になります。
以上のような理由から、一棟物のアパート・マンションではなく、良好な住環境を長期にわたって入居者に提供できる可能性の高い分譲マンションでの賃貸経営を行っているのです。
次回もファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由は続きます。
【過去の記事】
第1話 区分マンションは儲からない? そんなことはありません
第2話 ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由
第3話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由②
この記事を書いた人
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人
1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。