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賃貸経営における永遠のテーマ「空室対策」――管理会社について考える②

廣田 裕司廣田 裕司

2021/08/16

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イメージ/©︎catalin205・123RF

皆さんこんにちは。廣田裕司です。物件の管理を管理会社へ委託している大家さんは多いと思います。重要な業務を委託する管理会社は、重要なパートナーとなります。そこで今回のコラムでは、前回に引き続き管理会社について書いていきます。

管理会社の変更

「管理会社を替えたいので、どこかいい管理会社を教えてください」という趣旨のご相談を受けることがあります。ここからは管理会社を変更することについて書いていきます。

【担当者の変更も視野に】
管理会社の業務は入居者さん(人)を対象としているため、属人的な業務が多く、担当者によってその業務のレベルに差があります。担当者に対して不満がある場合、管理会社の変更を検討する前に、可能あれば担当者を替えてもらうのも一つの方法です。私も管理会社の担当者を替えてもらい問題が解決したことがあります。

【管理会社の選定するうえで】
管理会社を変更する場合問題となるのは、新しい管理会社の選定だと思います。実際どうやって選定すればよいのでしょうか。 

管理会社を選定するときは、大家さんとの相性も重要な要素です。ほかの大家さんにとってよい管理会社でも、自分にとってよい管理会社とは限りません。「大手だから」とか「評判がよいから」という一般的な評価だけで判断せず、直接面談し、自分にとってよい管理会社を選ぶことが重要です。 

面談で自分にとってよい管理会社か判断するためには、自身の賃貸経営上、どんなことを管理会社にしてほしいのかを明確します。例えば、「物件と離れた場所に住んでいるから、物件の点検を定期的に実施し報告してほしい」とか、「物件の共用部の清掃を頻繁に実施してほしい」とか、具体的にどんなサービスが必要なのかを明確にしたうえで、管理会社と面談しましょう。

【管理会社変更の実務】
新しい管理会社が決定後、現状の管理会社へ管理会社を変更する旨を伝えます。変更の旨を伝えるのは、切り出し難いとは思いますが、ケンカ別れにならないよう円満に進めることも重要です。 

現在の管理会社へ連絡するタイミングは解約予告期間の縛りもありますが、入居者さんへの通知や管理会社同士の引継ぎなどが必要なので、時間的に余裕をもって進めた方がいいと思います。

管理会社の変更の際の留意点は、

①管理委託契約の内容のチェック
解約予告期間のほかに、サブリース契約をしている場合は、解約時に違約金を請求されることもあります。

②家賃債務保証契約のチェック
管理会社独自の保証契約は、管理会社が変更になることによって保証契約が終了してしまうケースがあります。保証契約を引き継げなかった場合、新規に保証契約が必要になり、このときの保証料の負担が問題になります。

③敷金の引継ぎ
入居者さんから預かっている敷金を、管理会社が預かっているケースがあります。サブリース契約をしている場合は特に注意が必要です。

④入居者との契約条件のチェック
入居者さんとの契約条件を把握していないと、管理会社変更後のトラブルの原因になります。特に、サブリース契約をしている場合注意が必要です。入居者さんとの契約を一切大家さんに伝えないサブリース会社もあります。

以上の4点です。 

このような引継ぎ事項をすべて大家さん自身で実施するのではなく、新旧の管理会社同士でやってもらうようにします。

管理会社は経営代行会社か

賃貸経営では、入居者の管理、建物の管理、お金の管理の3つの管理が必須です。このうち管理会社が大家さんに代わってやってくれるのは、主に入居者の管理と建物の管理です。管理会社は、大家さん代わって賃貸経営をすべて代行してくれる会社ではありません。特に、お金の管理に関しては、家賃の回収以外は管理会社の業務から外れています。例えば、資金繰り、税金に関しては、管理会社がサポートしてくれる訳ではありません。

また管理会社さんは、業務を代行してくれるといっても実際にはそのオペレーションの代行してくれるだけです。どのような方針で業務を進めるかといった、意思決定は大家さんの仕事です。

管理会社は大家さんの賃貸経営のサポートをしてくれる存在ですが、全面的に賃貸経営を代行してくれる訳ではありません。管理会社が代行してくれる業務の範囲を理解したうえで、管理会社と付き合うことが大切です。

大家さんと管理会社の関係

賃貸経営を円滑に進めるためには、大家さんは管理会社と良好な関係を構築することが重要です。良好な関係を構築するために、管理会社に要望するだけではなく、大家さんとして心がけておきたいことを書いていきます。

【考え方の違い】
空室に新しい人に入居してもらうことは、大家さんと管理会社の共通の課題です。新しい人が入居後、大家さんは、一日でも長く住んでもらえることを望んでいますが、管理会社の立場で考えると、長期入居が必ずしも管理会社さんにとっていいことではありません。

管理会社は、入退去時に発生する、原状回復工事費用や業務委託手数料の方が通常の管理費より大きな売上になるからです。(だからといって、長期入居を阻害するような管理会社は存在しないと思います)このようにお互いの考え方に違いがあります。この考え方の違いを理解したうえで、お付き合いすることが大切です。

【共通のお客様は入居者様】
管理会社は、管理料を支払ってくれる大家さんをお客様と考えます。しかし、その管理料は入居者さんが支払った家賃から支払われます。つまり、大家さんと管理会社の共通のお客様は入居者さんです。そして大家さんと管理会社はフラットな関係が望ましいと思います。 

【コミュニケーション】
管理会社との関係だけに限ったことではありませんが、良好な関係を構築するためには“コミュニケーション”が重要です。管理会社の担当者とスムーズに意思疎通ができるように、日頃から話をするように心がけましょう。

担当者からのいろいろな問い合わせに対し、できるだけ早く返答をしましょう。問い合わせは、入居者さんからのものが多くあり、返答を保留するとお客様である入居者さんを待たせることにもなります。

また、管理会社の担当者とだけでなく、その上司の方や同僚の方にも挨拶しておき、担当者が不在のときでも対応してもらえるような関係を構築しましょう。

まとめ

管理会社のサービスは、管理会社によって違います。管理会社を選定するときは、他人の評判だけで判断せず、自分で自身の賃貸経営に合っているかという基準で判断しましょう。

管理会社は、頼れる存在ですが、賃貸経営の全てを代行してくれる会社ではありません。このことを理解したうえでお付き合いしましょう。

任せっぱなしにせず、良好な関係性を構築するため、普段のコミュニケーションを大切にしましょう。 

大家さん自身が経営者であることを認識し、稼働状況、物件の状態などを把握し、適切な経営判断をすることが重要です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

【過去の記事】
管理会社について考える①
効果的な空室対策を進めるために

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この記事を書いた人

「合同会社アップ」代表 「行動する大家さんの会」代表

妻の実家の賃貸事業を引き継ぎ、賃貸経営に関わるようになる。サラリーマン時代の経験を活かし、原状回復費の低減、稼働率アップに成功。賃貸経営での経験をベースにセミナー講師としても活動。2014年大家仲間と一緒に、管理会社「みまもルーム」設立に参加。大家さんとしての経験、不動産業者としての経験を活かし、大家さんの賃貸経営をサポートする会社「合同会社アップ」を設立。大家さんのサポート活動を展開中。

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