不動産投資 見落としがちな解体、再築費用
森田雅也
2020/10/15
イメージ/©︎paylessimages・123RF
不動産投資を行う際に考慮しなければならない費用は、購入費用や、管理費用、税金など多岐にわたります。その中でも今回は、見落としてしまいがちな投資物件の最後に係る解体費用や建物の再築についてご説明いたします。
キャピタルゲインを目的として不動産投資を行う場合には、最終的には投資物件を売却することになるので、解体費用や建物の再築に関して検討する必要は多くありません。例外的に、更地として売却するほうが解体費用を考慮しても購入資金より高く売却できる場合などに限られるでしょう。
他方、インカムゲインを目的として行う場合には、投資期間中に建物の寿命を迎える場合もありますので、解体費用や建物の再築まで考慮する必要があります。
昨今は木造建築が減少し、建物の耐久年数が上がっていることから資金回収期間もそれに伴い長期間となるので、初期費用の回収ができる可能性は高くなっています。
しかし、建物が築古になるにつれ、賃料の値下げや空き室の増加を防止する対策として、リノベーション費用・修繕費などが必要となり、当初より費用が嵩むことになります。そして、最終的には売却や解体、建物の再築という判断をしなくてはなりません。
では、実際に投資物件を解体する場合や新しい建物を再築する場合にはどのようなことを検討するべきなのか、以下ご説明します。
税金関係
建物があることによって土地の固定資産税が住宅用地特例の適用をうけ安価になります。したがって、建物を解体して土地のみになると当該特例が適用されず、固定資産税が高額になります。また、都市計画税も同様な特例がありますが、建物が解体された場合には固定資産税と同じく特例適用外となり、税金が高額になります。
解体費用
建物の解体費用には、投資物件の構造だけでなく、立地なども関係してきます。近くに小学校や病院がある場合には騒音を抑える必要があるため、大型の重機の使用ができないこともあります。また、そもそも道幅が狭く大きな車が入れないということもあります。このような立地の場合、解体費用は相対的に高額になります。
また、購入した建物に、アスベストを含む建材や吹付材を使った壁や柱が使用されている場合も注意が必要です。このような建物を解体するためには、専門業者や許可を持った業者に対応してもらわなければならず、通常の解体費用よりも高額になります。
建築制限
地域によっては、解体後に再度建物を建てられない場合や、従前の建物よりも規模の小さい建物しか建てられない場合もあります。これは地域によって細かく決まっていたり、建築基準法による制限にかかっていたりと、かなり専門的な知識が必要になります。そのため確認を怠ると、新築の投資物件を再築するために古い建物を解体したのにもかかわらず、新築の物件が再築できないという最悪の事態にも発展しかねません。
このように、解体する際には費用がかかることや、建物の再築には一定の制限がかかる場合があることを念頭に不動産投資を始めることが必要です。なお、解体費用がかかるからといって老朽化した建物を放置していると、屋根や壁が崩落して他人にケガを負わせてしまった場合、高額な損害賠償などの責任を負うこともあります。
他方、建物を解体して土地の利用価値が上がることにより、土地の売却が容易になったり、土地を整備することで駐車場や屋外のトランクルームとして再活用し収益を獲得できたりすることも考えられますので、仮に建物の再築をしなくても、古い物件を解体することに利点がある場合もあります。
以上のように、建物を解体するときや再築するときには、考慮すべき事項が多岐にわたり専門的な知見が必要です。投資物件の購入の是非を決める前に、一度専門家に相談することをお勧めします。
この記事を書いた人
弁護士
弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。