「賃貸管理業務適正化法」成立、サブリース契約は安心か?(2/4ページ)
小川 純
2020/06/15
有り体にいってしまうと、サブリース業者に対しては、家賃保証をして一括借り上げをした場合でも、家賃の減額があることなどオーナー側にとって不利益がある場合は、契約前にきちんと伝えること。また、それを斡旋するデベロッパーや金融機関も同様の規制対象になるということだ。
日本相続学会副会長、日本不動産学会、資産評価学会の理事を務め、不動産に詳しい弁護士の吉田修平さんはこの法律をこう評価する。
「賃貸住宅管理の形態としてサブリースがありますが、これはオーナー(大家)と実際にそこに住む居住者の間にサブリース業者、また勧誘者が入ります。一般的に賃貸借契約はオーナーと居住者の間で行われますが、サブリースではオーナーとサブリース業者の間でマスターリースをして、サブリース業者が実際の居住者にサブリースをするという格好になります。
つまり、そこに賃貸借契約が2本入ってくるわけです。そういう意味では非常に契約関係が複雑になって、なおかつ普通借家契約ですとオーナーとサブリース業者間も、サブリース業者と居住者間も、いずれも借家契約ということになって、賃料の増減額請求権などにおいても複雑性を持つ仕組みでした。サブリース業者と居住者間は普通の賃貸借契約ですから、そこに賃料の増減額請求権という借地借家法の問題が入ってきます。なおかつ、オーナーとサブリース業者との間のマスターリース契約も普通借家契約になるので、サブリース業者が家賃の減額を要求してきた際には、サブリース業者にも賃料減額請求権があって、これは強行法規で保証されているので、『賃料保証をしていましたよ』といっても減額請求は拒否できません。
その結果、オーナーは、契約では賃料を保証するといったのに『騙された』となってしまい、これが社会問題化してきました。しかし、この法律によってこうした不当な勧誘などができなくなり、賃料などについて事前に書面を交付して説明しなさい、ということになりました。このことでサブリースの問題についても行政がきちんと対応することで、オーナー側も金融機関からお金を借りて賃貸のアパートやマンションを建てればいいという安易な考えに歯止めがかかるのではないかと思います。そうしたことからも、この法律の意義はあるように思っています」
弁護士の吉田修平さん/OGW417 Studio
この記事を書いた人
編集者・ライター
週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。