ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#7 これからの不動産投資で気を付けるべきこと(5/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/12/15

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

最近世間を騒がせた「かぼちゃの馬車」というシェアハウス投資などは、販売・運用会社の高利回り保証が、実は物件売却資金を原資とした自転車操業であったことが判明したが、商品企画の拙さがリスクの顕在化につながった事例だ。

特に個人投資家にとっては金利の上昇と実需の減退は大きなリスクだ。そしてこのリスクは折り重なって襲ってくる傾向にある。不動産投資マーケットの動きを常に注視することが必要だろう。

投資対象をよりオポチュニスティックにふった不動産ファンドなども物件価格の下落は大きな痛手となる。理由は同じで出口での価格維持が難しくなるからだ。

不動産は投資対象としては大きな金額の投資だ。こうしたリスクの顕在化は、国内事情だけではなく、リーマンショックの時のように海外から突然降りかかることもある。投資を行う際の借入金の割合や出口での売却可能性など、あらゆるリスク対処法を施しておくことが肝要だ。

日本の不動産投資マーケットは、現在国内外の投資マネーを集めて好調に推移している。この好調は日本経済の堅調さのみならず世界経済が極めて順調であることに起因しているといってよい。

世界的なカネ余りの状況は、投資マネーのリスクに対する警戒心を落とすことにつながる。2008年に勃発したリーマンショックもはじめは「対岸の火事」程度にしか思われなかったアメリカのサブプライムローン問題が、やがては大きな津波となって日本に押し寄せてきたことは今でも記憶に新しいところだ。

金利は上昇の機会を窺っている。自国ファーストを掲げるアメリカ、トランプ政権は中国をはじめとする世界各国との摩擦を強めている。日本もこうした動きから無傷ではいられない。

日本の国内も東京五輪後は、いよいよ首都圏でも人口の高齢化や大量の相続発生が起こり、投資マネーが流入し続ける都心部はともかく、多くのエリアで不動産価格が下落する可能性が出てくる。

いっぽうで幸い投資マネーは潮の満ち引きのような性格もある。つまり、一度引き潮で日本から去っても、日本が正常な経済状態、政治体制を保ち続けることにおいて、再び日本に満ち潮として現れる存在であるからだ。

そのためにも、課題が山積する日本の経済や社会の問題に全員が知恵を絞り、解決策を打ち出し、新しい国家像を築いていくことが必要だろう。

投資マーケットは日本の状況を映し出す鏡でもあるのだ。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

ページのトップへ

ウチコミ!