中古マンション購入で失敗! ありがちな5つのケースと注意点をプロが解説
菅 正秀
2017/05/30
© naka – Fotolia
中古マンション購入でありがちな失敗とは?
先日 ある営業マンのもとに、つい最近マンションを購入したお客さまが、浮かない顔をして訪ねてこられました。
「実は、私、転勤になりまして・・・」
「えっ~、引っ越されたばかりじゃないですか! マンションはどうされるのですか?」
と、その営業マンもビックリです。
結局 そのお客さまは、購入したばかりのマンションを売却はせずに、賃貸に出すことにされました。
こうしたケースはめずらしいと思われる方が多いかもしれませんが、実は、けっこうあるようです。
かつて、私が担当したお客さまは、マンションを購入されたものの、決済・引渡し前に転勤が決まり、ご主人は念願のマイホームに一度も住まないまま、単身で任地へ赴かれました。単身赴任です。これもサラリーマンの宿命なのでしょうか。
せっかくマンションを購入したものの、「失敗した」と考える人は少なからずいらっしゃいます。上述したような「せっかくマイホームを購入したのに転勤が決まってしまった」といった“防ぎようのないケース”は別として、ちょっとした注意をすれば防げる「失敗」はいろいろあります。
そこで今回は、そうした「ちょっとした注意で防げるマンション購入の失敗」として、代表的な5つのケースをお話しましょう。
<ケース1>マンションの目の前に大きな建物が建設された
まずは、マンション購入後に、バルコニーに面した近隣に大きな建物が建設されて、いままで確保されていた眺望や日照が遮られてしまった…というケースです。
「日当たりがいいから」「眺望が気に入ったから」といった理由で選んだのに、建物の陰になってしまい、日照時間が極端に減った、せっかくの眺望が台無しになったといったことが起こり得ます。
マンションだけでなく、住宅は購入してから何十年も住んでいくものです。あなたが購入を考えているマンションの周辺環境も、年月を経るうちに変化していくことを忘れないようにしましょう。
こうした事態を想定して、実際に中古マンションの重要事項説明書や契約書には、
1.本物件周辺に第三者所有地がある場合は、当該第三者所有地に建築物が建築(再建築又は増改築)される場合があり、工事が実施された場合は、振動・騒音・粉塵・臭気等が発生する場合があります。又、工事車両の通行及び周辺道路の通行制限、建築物完成後の日照・通風・眺望等に一定の影響が生じる場合がありますので、予めご了承下さい。
という文言が入っていることが多いです。
もちろん、不動産仲介会社が把握している建築計画があれば、その計画についてお客さんに伝える義務がありますが、仲介会社といえども将来のことまではわかりません。
物件の内見に行った際に、バルコニーから見える範囲に大きな空地や駐車場があれば要注意です。そうしたスペースがあれば、容易に建物が建築できてしまうからです。
このように、内見時にはバルコニーからの日照や眺望を確認するだけでなく、将来的にもこの状態が続くかどうかという観点からも見ておきましょう。
(関連記事)
中古マンションの周辺環境はここをチェックする
<ケース2>入居してすぐガス給湯器が壊れてしまった
© Paylessimages – Fotolia
先日、中古マンションを購入した知り合いから、「入居してすぐにガス給湯器が壊れて交換するために思わぬ出費が必要になった」という話を聞きました。
ガス給湯器に限らず、中古マンションを購入したものの、入居して間もなく住宅設備が壊れてしまったというケースは少なくありません。しかも、ガス給湯器であれば、取り替えると10万円以上はかかりますから、これは痛い出費となります。
中古マンションの売買は、法律上、「特定物売買」にあたります。どんなマンションであっても、世界中にふたつと同じマンションはありません。つまり、「特定物」です(これに対して、同じものがたくさん売られているようなものを「不特定物」といいます)。
そのため、その物を引き渡せばよく、引き渡し後に設備が壊れてしまっても、売り主は代替品を渡す必要はありません。
しかも、現状有姿(「現在あるがままの状態」、つまり契約時の状態のまま引き渡すということ)が原則です。中古車ディーラーから中古車を購入するのとは違い、保証はついていません。
実際、重要事項説明書や契約書には、
対象不動産は、中古物件のため、その付帯設備については経年変化及び使用に伴う性能低下、傷、汚れ等があります。対象不動産については引渡時の現状有姿とします。
という文言がよく入っています。
ちなみに、新築マンションを購入した場合であっても、設備についての保証は、1年間のメーカー保証だけです。住宅設備については、それぞれ耐用年数がありますが、実際はそれを過ぎても調子よく動いてくれるものもありますし、逆に耐用年数内でも壊れるときは壊れます。
引き渡し後、すぐに設備が壊れてしまったといのは、中古物件を購入する場合に当然についてくるリスクと言えます。
ですから、築年数が10年を超える物件を購入されるときは、設備の取り換え費用も予算に入れておくことをおすすめします。
<ケース3>厳しすぎるマンション内ルールにガックリ…
やっと引渡しが終わり、心を躍らせながら引っ越してみると、駐輪場に使用時間があって自由に使えない、駐車場に車の重量規制があって大きな車に買い替えられない、ペットの飼育が禁止されていたなど、購入したマンションには予想外の厳しいルールがあった…という話もよく聞くことです。
マンションは共同住宅であり、多くの世帯がそこに住むことになります。そこで、マンションにはそのマンションのルールである「管理規約」というものがあり、そこにはマンションの共用部はどこまでなのか、その共用部をどのように維持管理するのか、共用部をどういうルールで使用するのかといった、さまざまな約束ごとが書かれています。
また、管理規約では定めきれない細かな使用方法や禁止事項などは、別に「使用細則」が規定されており、この管理規約と使用細則によってマンションでの生活は大きく左右されると言っても言い過ぎではありません。
そのため、新築、中古を問わず、マンションを購入する前には、管理規約を確認しておくことをおすすめします。担当の不動産会社に言えば、管理規約の内容を調べてくれますし、実際に管理規約を見せてもらうこともできます。
もちろん、実際に中古マンションを購入する場合は、元の持ち主からの引き継ぎで、管理規約・使用細則を受け取ることができます。
(関連記事)
マンションライフを大きく左右することも! 管理規約をチェックする10のポイント
<ケース4>入居してすぐに大規模修繕工事、さらに修繕積立金の値上げが!
© oka – Fotolia
やっと入居して快適な生活が始まると思ったのに、マンションの大規模修繕が始まってしまった。多くの工事関係者が出入りするし、バルコニーには足場が建てられ、窓も開けられない…。
マンションでは10〜15年に1回の間隔で大規模修繕が行なわれます。住宅も、車と同じでメンテナンスが必要です。
一戸建てであれば、修繕はすべて自分が計画して、自分の費用で行なわなければなりませんが、かわりに自分の好きなタイミングで実施することができます。しかし、マンションの場合は、管理組合の合議で修繕計画を決めて、費用は、毎月徴収している修繕積立金(あなたを含むみんなのお金)で賄われます。
通常、マンションには長期修繕計画というものがあります。その計画に基づいて、修繕積立金をいくら徴収するのか、その額が決まり、時期がきたら大規模修繕が行なわれます。
ここでひとつ知っておいていただきたいのは、新築マンションが分譲されるときには、修繕積立金の額をわざと低めに設定しているケースがあるということです。そうすることで、割安感を演出することができるため、不動産会社が販売政策の一環として修繕積立金の額を安めに設定して販売するのです。
当然、そのままでは修繕積立金は不足しますから、後々、値上げをしなければならないという事態に陥ってしまいます。
それ以外にも、景気の影響を受けて積立金の運用が予定通りにいかなかったり、工事費用が高騰したりといった理由から、計画通りの大規模修繕の費用を確保できず、修繕積立金を値上げしなければならなくなる場合もあります。
中古マンションを購入するときには、不動産会社から、管理費・修繕積立金の値上げ予定があるかどうか、直近で大規模修繕の予定があるかどうか、また、その時点での修繕積立金の累計額などが説明されます。
これは、重要事項説明として、マンションの管理会社が提出する「重要事項に係る調査報告書」に基づいて説明を行なうことが不動産会社に義務づけられているものです。
後で後悔することのないよう、十分にチェックしておきましょう。
<5>ちょっと背伸びして購入したものの、家計が火の車に!
マンションを購入するというイベントは、一生のうち何度もあるわけではありません。ですから、マンションの買い方がうまい人というのはまずいらっしゃいません。
多くの方が頭を悩まされるのが予算の問題です。もちろん、みなさん予算を決められて物件を探し始めるのですが、気になる物件をいくつか内見しているうちに、「ちょっと予算オーバーだけど、このマンションがいいな」という話になることがよくあります。
マンションの価格は正直です。いまは情報がネットワーク化され、共有できるようになっていますから、ちょっと検索すれば過去の取引履歴や周辺の取引事例がわかります。そのため、大きく相場から外れた価格がついている物件はまずありません。
ですから、値引き交渉をした場合でも、もちろん多少の値引きはしてもらえることはありますが、よほどの事情がない限り、何百万円という大きな値引きをしてもらえることはまずないでしょう。
しかも、数千万円という大きな金額を見続けるため、感覚がマヒしてしまうのでしょうか、100万円、200万円の予算オーバーについても「これくらいならなんとかなるかな」という気持ちになってしまう方が少なくありません。
また、現在は低金利時代ですから、住宅ローンの借入れが100万円増えても、毎月の支払いは1000円、2000円しか増えません。
その結果、「せっかく購入するのだから、ワンランク上のマンションにしよう!」となるケースが多いのです。
しかし、住宅ローンとは長い付き合いになります。30年、35年といった長い期間、返済を続けることになります。その間に、住宅設備の故障や取り替え、リフォーム、修繕積立金の値上げなどがあることもあるでしょう。また、ご自身の家庭環境の変化もあるかもしれません。
購入を決めた時は、気分も高揚しています。しかし、時間を置いて一度冷静になることをおすすめします。35年とはいかなくても、最低でもこの先10年間ぐらいの家計のシミュレーションはしておきましょう。
特に共稼ぎのご夫婦の場合は、ずっと共働きを続けられるかどうかを慎重に考えておきましょう。
(関連記事)
超低金利時代の新常識、住宅ローンの繰り上げ返済は損をする!
ご近所づきあいが心配な人は…
最後に、マンション購入後のご近所づきあいについて触れておきましょう。
類似の記事では、「部屋の上下の住人のことや、マンションの住人ことを調べなさい」といったことを書いておられる評論家の先生もいらっしゃいます。
しかし、長年、不動産営業の現場で働いてきた私の実感からすると、実際にそこまでするのはハードルが高いです。ご近所で聞き込みをするといっても、個人情報保護の流れもありますし、聞かれたほうもご近所のことは答えづらいものです。
仲介の不動産会社もそこまでの調査能力はありません。彼らは不動産販売のプロですが興信所ではないのです。
ご近所づきあいは、どこに住んでもあるものです。どうしても心配という方には、まずはそのマンションに賃貸で住んでみられることをおすすめします。
以上、中古マンション購入で後悔しないために、「中古マンション購入の失敗」の定型的なケースとその対策をご紹介しました。ここでご紹介した注意点を参考にしていただいて、理想のマンションライフを実現してください。
(関連記事)
中古住宅探しで営業マンや売り主に聞いておかないと後悔する15のリスト
人口減少時代に30年後も資産価値が落ちない住宅の4つの条件
収入と返済能力があっても借りられない? 中古住宅購入で住宅ローンが使えない4つのパターン
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。