中古マンションの相場を自分で調べるには? 誰でも簡単にできるプロのやり方
秋津智幸
2017/05/23
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中古マンションの価格はどう決まる?
現在、不動産価格の上昇とともに新築マンションの価格が高くなっていることもあり、中古マンションが注目されています。
こうした状況を受けて、マンション購入を考える方も、ご自宅のマンションの売却を考えている方も気になるのは中古マンション相場ではないでしょうか。
周辺相場を見れば、そのエリアでマンションが売買されているだいたいの価格がわかります。相場は、その地域のひとつひとつの取引事例が集まって形成されていきます。
中古マンションに限らず、土地や中古住宅などが売りに出されると、その情報はレインズ(REINS:Real Estate Information Network System/不動産流通標準情報システム)と呼ばれる不動産会社だけが利用できるネットワークシステム上に登録されます。
レインズには販売中の不動産情報だけでなく、成約済みの取引情報も掲載されており、実際の中古マンションの売出価格や成約価格などの売買情報を見ることができます。
不動産会社は、このレインズに掲載されている不動産情報を中心に、自社の取引事例や有料無料を問わずさまざまな不動産データベースを参考に、不動産の売買価格を判断しているのです。
中古マンションに価格がつけられるまでの流れ
ところで、ここまでの説明で複数の「価格」が出てきたことにお気づきでしょうか。実は、不動産を売り出す際には「査定価格」「売出価格」「成約価格」という3つの段階ごとに価格があります。
中古マンションが売りに出されると、上記のような相場価格(取引事例)を基に、そのマンションの個別要因(階数、角部屋かどうか、リフォーム履歴や使用状態など)を考慮して、「いくらくらいで売れそうか」が判断されます。
この作業が査定で、そこでつけられる価格が査定価格です。
査定を経て、実際に市場に売り出すときの価格である売出価格を決定します。
特に、中古マンションの場合は、同じマンションの取引事例(成約事例)があれば、それを参考にして物件価格が判断されます。同じマンションで事例がない場合は、近隣の条件が似ている物件を参考にして売出価格を決めていきます。
こうして売出価格が決まると販売が開始されます。また、最終的に売買が成立した価格である成約価格が次の物件の査定の基礎となっていきます。
ちなみに、個々の取引実務では、売出価格は査定額より若干高めに設定し、市場の反応を見ながら価格を調整していきます。景気の上昇局面では、高めの価格でも売れてしまうので、次の取引ではまた少し高く価格が設定されます。
一方、景気の下降局面では、なかなか売出価格では売れないので、少しずつ価格は安く調整されます。このように不動産価格も上昇と下降を繰り返しています。こうしたひとつずつのデータが集まって、その地域の相場を形成していくのです。
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プロも使っている! 中古マンションの相場がわかる、おすすめサイト
現在はインターネット上に不動産情報がたくさん出ていますので、不動産の相場は簡単にわかりそうな気がしますが、インターネット上の情報には古いものも混在しているため、利用するサイトには注意が必要です。
不動産会社の営業マンなどプロは、前述したレインズなどから実売価格(成約価格)の情報を知ることができますが、参考となる実売価格の事例がない場合や簡易的に相場を知りたい場合には、一般の人も見ることができるサイトも利用しています。そういったサイトをいくつかご紹介しましょう。
○アットホーム(at home)
アットホーム株式会社が運営しているサイトで、独自に不動産会社と提携して直接情報を扱っているのが特徴です。独立系不動産情報サイトのなかでは提携している不動産会社数は最大級です。
また、不動産情報の掲載に関しては細心の注意が払われており、すでに成約した情報はすぐに落とすよう不動産会社各社に求めています(一定期間経過すると自動的に非掲載になるシステムも採用されています)。したがって、新鮮な不動産情報がいち早く掲載され、古い情報は掲載されにくいサイトです。
○株式会社東京カンテイホームページ
株式会社東京カンテイは不動産専門のデータ会社であり、全国の不動産の価格情報や売買事例を、会員向けに有料で提供しています。特に新築マンションのデータは信頼性が高いと言われています。
有料情報だけでなく、ホームページでは沿線相場など一般的な情報を無料で公開しています。中古マンションの相場を知る上でも、有用な情報がたくさん出ているので、簡易的に相場を知りたいときには便利なサイトです。
○不動産ジャパン
不動産ジャパンは、独立系企業ではなく、公益財団法人不動産流通推進センター運営する不動産情報サイトです。その情報は不動産会社が利用しているレインズのデータとほぼ同じで、相場やさまざまな統計データなど、調査内容の信頼性が高いサイトです。
このサイトは相場のような統計データを知るだけでなく、不動産ポータルサイトとして利用できるので、賃貸売買とも物件を探している際にも役立つサイトです。
こうすれば自分のマンションの価格がある程度わかる
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プロも利用している相場を知るために役立つサイトを紹介しましたが、マンションの売却を考えている方は不動産会社に依頼する前におおよその価格を知りたいのではないかと思います。
そこで、上記のようなサイトを利用して自分で中古マンションの相場を調べる方法を具体的にご紹介します。
(1)自分の物件情報を整理する
インターネット上の情報と比較する前に、まず自分が所有しているマンションの物件情報を整理しましょう。整理する主な項目は以下のようなものになります。
●立地:基本的には最寄り駅と所在地(住所)を確認します
●築年:いつ建築されたものかを確認します。登記簿謄本でも確認しましょう
●広さ:パンフレットや登記簿謄本で正確な面積を確認します
(2)自分のマンションに条件の近い売り物件を検索する
次に、ポータルサイトで(1)で確認した条件に近い条件の売り物件を検索しましょう。
たとえば、自分の物件が「○○駅徒歩8分、2000年築、専有面積70㎡」なら、「○○駅徒歩10分以内、1997年~2003年築、専有面積65㎡~75㎡」といった具合に、やや幅を持たせて検索するようにします。
こうして見つかった売り物件のなかから、(1)の条件に近いものをすべて選び出して、概要を全部メモしておきます。このとき、(1)で確認した以外の条件も書き出しておきましょう。
なお、検索された物件のなかから、参考にする物件を選択する際には以下の点に注意します。
●立地:基本的には最寄り駅が中心ですが、駅の反対側などでは周辺環境が異なることがあるので、住所が近いものを優先的にチェックします
●築年:1981年(昭和56年)~1983年(昭和58年)をまたがなければ、築年が違っても参考となります
●広さ:一般的にマンションはパンフレットに記載されている面積(壁心:壁の中心線で図った面積)が使用されていますが、登記簿(公簿)上の面積(内法:壁の内側の面積)はパンフレットの面積と異なりますので、注意が必要です
(3) (2)で検索した売り物件と比較して自分の物件の価格を割り出す
(2)で検索した売り物件の価格から、自分の物件のだいたいの価格を割り出します。
具体的には、自分のマンションに条件が近い売り物件の坪単価を計算し、条件に応じてその単価を調整して、自分の物件の面積をかけて価格を割り出すのです。ちなみに、平米から坪に換算するときは、「平米面積×0.3025=坪面積」となります。
これだけではわかりにくいと思いますので、事例を使ってご説明しましょう。
自己所有物件である物件Aと、物件B、物件Cの3つを比較して、物件Aの価格を算出してみます。
想定される価格を計算してみると?
3つの物件をそれぞれ比較してみると、自分の物件は角部屋という優位性はあるものの、築年は同等、ほかの面ではB、Cともそれぞれ優位性を持っていると言えます。
ただし、不動産の価格を決定する際には、最も重視されるのは「場所」です。つまり、立地がいい物件が最も価値が高いとされます。
次いで、「築年」、「建物内の位置」という順番で評価されるので、上の条件では、[1]→[4]の順番で優位性を考えることになります。
よって、駅から徒歩5分という物件Cは物件A、物件Bより不動産としての価値が高く、築年はほぼ同等なので、単価としては、概ね「C>A>B」となります。
ここでは、[3]の階層の違いや、[4]の角部屋かどうかといった条件は、価格の微調整を行なう際に評価されると考えておいてください。
ここで物件Bと物件Cの坪単価を計算すると、それぞれ単価201万円(物件B)と208万円(物件C)となります。
したがって、物件A(自分の物件)は単価201万円(物件B)と208万円(物件C)の間で、かつ、総額も4500万円と4280万円の間の価格になると考えられます。
たとえば、Aの坪単価を205万円とすると、205万円×21.17坪(=70㎡)=4339万円となります。
あくまで概算ですが、4350万円前後が自分の物件の価格イメージと言えるでしょう。
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中古マンションの価格交渉は可能?
中古マンションには相場があるとはいえ、少しでも安く買いたいというのが多くの人本音でしょう。そこで気になるのが、値引き交渉ができるかどうかです。
結論からいうと値引き交渉は可能です。
ある程度購入希望の物件相場がわかっていれば、値引き交渉もしやすくなりますが、売出価格も相場を意識して算出しているので、そこから2割引、3割引といった大幅な割引になることはありません。
また、価格交渉には、意思表示(購入する意思があると示すこと)とタイミングが重要なので、購入の意思が固まったら、不動産仲介会社の担当者に相談することをおすすめします。
初めから価格交渉を想定して少し高めに売り出している物件もあれば、初めからギリギリの価格で売り出している物件もあるので、価格交渉は必ずできるものではありません。
それでも、節度のある範囲で価格交渉するなら、応じてもらえる可能性はあるので、価格交渉しないのは損です。遠慮せず、価格交渉してみましょう。
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この記事を書いた人
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。