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マンションは「住み心地」で選んではいけない! その3つの理由とは?

市川 貴士市川 貴士

2017/01/12

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マンション購入の決め手となる「三大要素」とは?

住宅は一生で最大の買い物です。どんな住まいを選べばいいのか、迷わない人はいないでしょう。住まいに求めるものは、人それぞれ、いろいろな考え方があると思いますが、マンションを購入する決め手となる「三大要素」をご存知でしょうか?

それは、(1)価格、(2)立地、(3)間取り、この3つです。そして、この3つのなかで重視すべき順番も、この並びの通り、「価格>立地>間取り」となります。

「価格」は当然と思われる人がほとんどでしょう。高額な買い物ですから、どんなに気に入ったとしても、予算を超える物件を購入することはおすすめできません。
ですから、予算の範囲内で最も立地のよい物件を選び、そのなかから間取りのよい部屋を選ぶというのがマンション選びの基本と言えるでしょう。

立地を優先してマンションを選ぶ人は多い

立地を優先すべきというには理由があります。それは、立地がマンションの資産価値に直結しているからです。資産価値とは、簡単に言えば「買ったマンションが将来いくらで売れるか?」ということです。そして、「いくらで売れるか」に最も影響するのが立地なのです。

実際に、立地を重視してマンションを選んでいるお客さんは多くいらっしゃいます。気に入った物件があるけれど予算が合わないといった場合などに、予算を上げてでも買うことを不動産業界では「買い上がる」と言いますが(もともとは株式投資などに使われる言葉のようです)、実は、その多くは、お客さんが「立地」を非常に気に入っているケースなのです。

マンションのモデルルームではアンケートを採ることが多いのですが、たとえば「予算3000万〜3500万円」と書いたお客さんでも、立地が気に入ってしまうと、4000万円程度の物件を購入する人が少なからずいらっしゃいます。
また、私の経験上、良い立地の物件だと「そのマンションのなかで広い間取りに住みたい」とか「条件の良い角部屋に住みたい」といった“上昇志向”を持つお客さんも多くいらっしゃいます。
逆に、立地を優先して、「広さと間取り」を多少我慢するケースも少なくありません。

それほど、住宅選びにおいては立地が優先されるのです。

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住み心地で選んではいけない3つの理由

住まいを選ぶとき、多くの人は無意識のうちにふたつの判断基準を持っていると私は考えています。それは、「住み心地」と「資産価値」です。

しかしながら、資産価値に注目して立地を選んでいる人は少ないというのが私の実感です。立地を決め手にしてマンションを選んだ人のなかには、「実家が近いから」「よく知っている地域だから」「公園や便利な施設が近いから」といった住み心地から考えている人が多いのです。

そもそもマンションの購入を考える際に、お客さんの立場に立てば、自分がよく知らないエリアの物件を敬遠してしまうのは当然と言えば当然でしょう。そのため、「実家が近い」とか「いま住んでいる家に近い」といった血縁や地縁を理由に何となく選んでしまう人が多いのは、ある意味でしかたのないことかもしれません。

ですが、長年、不動産の世界で生きてきた私からすると、それは本当に「もったいない」と言わざるを得ません。マンションは資産価値を重視して選ぶべきというのが不動産のプロとしての私の考えだからです。
なぜマンションを選ぶときに、住み心地よりも資産価値を重視することをおすすめするのか、それには3つの理由があります。

次ページ ▶︎ | <理由1> 「住み心地」は変わっていくもの

<理由1> 「住み心地」は変わっていくもの

そもそも、住み心地は人それぞれ感じ方も基準も違います。しかも、同じ人であっても、住み心地は時間の経過によって感じ方が変化していくものです。

たとえば、子どもが小さいうちは緑の多い公園の近くがよかったとしても、子どもが成長して学校に通うようになったら、もっと都心に近い場所のほうが便利だということになるかもしれません。
家族の生活は、時間とともに変化していきます。購入時には最高の住み心地だったとしても、10年、20年後には、家族が求める住み心地は大きく変わっている可能性が高いと言えるでしょう。

もちろん、資産価値も時代とともに変化していくものですが、よほど間違った物件を購入しない限り、10年、20年といったスパンで資産価値がなくなってしまうようなことはないはずです。

海外の不動産を見ていると、アメリカなどは特に何回も引っ越して、最後は大きな家に住む、という暮らしぶりを目にします。仕事や家族の変化をうまく考えて不動産と向き合っています。しかし、日本ではまだまだそのような柔軟な暮らし方を実現するのはむずかしいのではないでしょうか。

<理由2> 一生、そのマンションに住めるとは限らない

人生にはいろいろな出来事があります。転勤で引っ越しを余儀なくされるかもしれません。リストラや勤務先の倒産で、ローンを払い続けることが困難になるかもしれません。ましてや、不安定ないまの世の中で、購入したマンションに一生住み続けられるかどうか、誰にもわかりません。

万が一、購入したマンションに住み続けられなくなったときに、重要なのが資産価値です。資産価値が高い物件というのは、簡単に言えば、「売ったり、買ったりしやすい」物件のことです。
そうした物件を購入していれば、賃貸に出して家賃収入を得ることもできますし、売却してローンの残債をなくすことも可能になるかもしれません。

次ページ ▶︎ | <理由3> 資産価値は万人共通の価値 

<理由3> 資産価値は万人共通の価値

資産価値が高いということは、「多くの人がほしいと思う」ということでもあります。つまり、資産価値は万人に共通の価値と言えます。

「同じ価格なら広い部屋に住みたい」という理由から、都心から遠く離れたエリアに物件を購入したとしても、都心に近い利便性の高い物件と比べた場合、将来、高く売れるのはどちらの物件でしょうか。
これから人口が減少していく地方都市では、市街地中心部に都市機能が集まるコンパクトシティ化が進んでいくでしょう。それなのに、釣りが好きだからと街の中心から車で30分以上かかる河川の近くに住まいを持ったとしたら、10年後、20年後にその物件をほしいと考える人はどれだけいるでしょうか。

資産価値を考えれば、万人が価値を感じる物件を選ぶことが大切です。そうした物件のほうが、将来、価格が大きく下落する可能性は低いと言えるでしょう。そうした視点で物件を選ぶことで、将来的に何百万円、何千万円という資産価値の差が出てくることもあるはずです。

営業マンに「マンションの資産価値」を聞いてはいけない

繰り返しになりますが、資産価値、つまり「買ったマンションが将来いくらで売れるか?」ということに最も影響するのが「立地」です。
前回の記事(「信頼できる不動産営業マンを一発で見抜く、たったひとつの質問」 http://sumai-u.com/?p=7660 )でもご説明したように、残念ながら、不動産会社の営業マンで自分が販売するマンションの立地に精通している人は、ごく一握りです。

(参考記事)
信頼できる不動産営業マンを一発で見抜く、たったひとつの質問

また、彼らは、販売のプロではあっても、不動産のプロではないという側面もあります。もし、「この物件を買ったら、将来、損しなくてすみますか?」といったストレートな質問を営業マンにぶつけたとしても、ほとんどの場合は答えられないはずです。また、彼らは物件を売ることが仕事ですから、その答えを知っていたとしても答えられないというケースもあるでしょう。

ですから、マンション購入を検討する際には、そのマンションの「不動産としての価値」をご自身でしっかり確認して、価格に納得できるかどうかを真剣に考えていただきたいと思います。
「物件価格をいくら値引いてもらった」「家具をつけてもらった」といった点も検討材料としては重要ですが、10年後、20年後にそのマンションを「いくらで貸せるか」「いくらで売れるか」といったことに敏感になっていただければ、将来、後悔する可能性を大きく減らせるはずです。

どういった物件が資産価値の高い物件といえるのか、その考え方については、また改めてお話ししたいと思います。

(参考記事)
頭金ゼロで買う物件は『資産価値』に注目して選ぶ
頭金ゼロで買うなら資産価値の目減りが少ない『中古住宅』が狙い目です!
信頼できる不動産営業マンを一発で見抜く、たったひとつの質問

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この記事を書いた人

株式会社国際不動産エージェント 代表取締役社長

宅地建物取引士。公認不動産コンサルティングマスター。 1961年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。 84年、株式会社リクルート入社後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)へ転籍。25年間の在籍中、不動産営業・マーケティング・商品企画に従事。その後、海外不動産の販売に従事し独立。世界各国の不動産の視察、販売を行なうほか、セミナー講師としても活躍。 30年のデベロッパー経験を活かし、独自の不動産マーケティング理論を組み合わせた分析を得意とする。14ヵ国38都市の不動産を視察し、現在も毎月海外視察を継続中。わかりやすい解説と不動産マーケットを知り尽くした深い視点からの語りが好評。

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