不動産投資で欠かせない登記簿の見方、読み取るポイント
斎藤 岳志
2020/08/13
画像/法務省HP「不動産登記のABC」より
登記簿にある物件の履歴を知る
中古マンション投資では、その物件の情報収集がとても重要です。そのポイントの1つがマンションに住んでいる人たちの素性を知るための自転車置き場やゴミ置き場のチェックなど。もう1つがエントランスに入った瞬間のファーストコンタクトというお話をしてきました。そして、何よりも重要なこととして営業担当者を味方につけることが指摘しました。
とはいえ、最初から営業担当者のあれもこれも頼むだけでは、顧客として営業担当者から信頼してもらえません。やはり自分から調べる姿勢も必要です。そして、営業担当者に具体的な質問や調査を頼むためにもそうした情報収集がとても大切になってきます。その1つのが不動産を購入するにあたっては、自分で「登記簿」をとって確認することです。
登記簿とは簡単に言うと、土地や建物の履歴書のようなもので、その物件が所有者がどう変わってきたか。また、その物件を抵当にしてどこの金融機関からどのくらいのお金を借りているか。場合によってはその融資の金利がわかる場合もあります。また、根抵当権が設定されていれば、金融機関がその物件をどのくらいの価値評価をしているかの目安にもなります。
不動産の取り引きでは登記簿をとるのは当たり前のことなのですが、業者が持ってきたものだけで、きちんと自分でこれを法務局でとって確認しない人が意外と多いのです。
新聞や週刊誌などで地面師事件についての報道でしばしば目にすることがあります。地面師とは本当の土地の持ち主になりすまして、土地の売買を行いその代金をだまし取る詐欺ですが、こうした地面師事件では登記簿など公文書や私文書を偽造したものが使われます。しかし、こうした地面師が作った文書をよくよく見ると、間違った記述があったり、矛盾した内容が書かれていたりします。
しかし、こうした登記簿などをきちんと確認しないという基本的な作業をしないがために大手のデベロッパーも、地面師に金をだまし取られるということも起こっています。話はそれましたが、個人であっても不動産投資となれば千万円単位の契約になるですから、こうした文書は自らがとって確認することは当然のことではないでしょうか。
登記簿から売却理由、売りたい人の状況を読み取る
登記簿で確認すべき点は次の2つがあります。
1)営業担当者から聞いた「売りたい人」が物件の所有者と同一かの確認
2)営業担当者から聞いた「売りたい理由」が登記簿にあるものと合致しているかの確認
1)については営業担当者からの説明が「相続にあたって売却したい」ということであれば、「権利部(甲区)」を見ることで、本当に相続が理由かを確かめます。相続では所有者と売りたい人との名前が違っていることもありますが、そうした点があれば再確認する材料になります。
また、ローンの支払いが厳しい、あるいは何らかの理由でお金を必要としているということについては「権利部(乙区)」にある抵当権設定の箇所から読み取れます。
そこには設定された金利や共同担保について書かれていることもあるため、今の権利者(持ち主)の資産状況をつかむことができるのです。
とくに税金やローン返済の滞納によって差し押さえられていれば、登記簿にはそのことが書かれているためすぐに把握できます。
仮に差し押さえられていれば、競売にかけられる可能性もあり、そうなっては物件の価格は相当低くされてしまいます。そこで少しでも早く、高く売ろうと任意売却しようしているということになるので、価格設定が低くされていることが多いため、こうした物件は掘り出し物もあります。また、場合によっては値引き交渉もできるかもしれません。
登記簿をとるには住所ではない、地番を調べるという手間はかかりますが、それを調べるのはそんな難しい作業ではありません。マンション投資、自宅の購入など不動産投資をするにあたっては、必ず自らの手で登記簿をとって確認してください。
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
FPオフィス ケセラセラ横浜代表 百貨店在職中にファイナンシャル・プランナーの資格を取得。税理士事務所、経営コンサルティング会社などを経て、FPオフィス ケセラセラ横浜を開設、代表を務める。 マイホーム購入・売却相談のほか、不動産投資のサポートも行なっている。株式投資やFXなど一通りの投資を実践した後、2007年より不動産投資をスタート。現在は、自らの資産運用はほとんど中古マンション投資に絞って取り組んでいる。