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新築マンション購入の基礎知識(5/5)

定期借地権付きマンションはおすすめか? そのメリット・デメリットは?

秋津智幸秋津智幸

2016/02/02

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定期借地権付きマンションとは?

 都心に住みたいけれど、物件価格が高すぎて手が届かないという人にとっては「定期借地権付きマンション」を購入するのもひとつの方法として考えられます。

 定期借地権付きマンションとは、土地部分がマンションを買った人の所有にならず、土地の所有者から借りているという状態になっているマンションです。一般定期借地権では、借地期間は50年以上と長く設定されていますが、原則として契約更新ができないという特徴があります。

 それでは、まず定期借地権付きマンションのメリットについて説明していきましょう。最大のメリットは物件価格の安さです。普通のマンションに比べ2~3割程度安く、または同じ金額でより立地がよい物件や面積の広い物件が購入できることになります。その理由は、土地を購入しないため、土地代が物件価格に含まれないからです。

 特に一等地では土地の価格は高く、一件あたりの土地の権利割合が少ないマンションであっても土地の権利を購入しないだけでも相当な金額が安くなります。通常なら手が出せないようなマンションでも、買える可能性があります。物件によっては即日完売するような人気物件もあります。

 メリットとしては購入時の価格が安いだけではなく、土地にかかる税金(固定資産税や都市計画税)が不要になることもあげられます。土地にかかる税金は土地の所有者にかかる税金なので、土地を所有しない分、毎年支払わなければならない税金が安くなります。ただし、建物は所有していますので、建物分の税金は毎年必要になります。

見た目の安さだけで判断するのは危険

 ただし、見た目の安さだけで判断するのは危険があります。物件価格は安いのですが、購入時の費用として、「保証金」や「権利金」といったまとまった費用が発生します。「保証金」は建物解体時の準備金や地代の不払いなどへ備えるもので、名目上は預かり金ですが、建物を解体しない場合を除き、返ってきません。

 また「権利金」は借地権や地上権といった権利を購入するためのお金で土地所有者へ支払うものです。「権利金」は物件価格に含まれていることもあるので、見た目にはわからないこともあります。

 購入時の住宅ローンのついては、昨今は金融機関も定期借地権付きマンションでも一般的な土地権利が所有権のマンションと遜色ない条件で借りられるようになっていますが、一部の金融機関では苦手としているところもあるので、金融機関へ事前の確認が必要です。

期間満了後の建物の扱いは?

 また、定期借地権付きマンションでは、建物について事前に理解しておく必要がある部分があります。

 確認しておきたいのは期間満了後の建物の扱いについてです。前述したように土地を借りられる期間は50年以上と設定されていますが、土地について借地契約の更新が原則できません。一般的には、借地契約満了後は更地にして所有者に返還するという契約となっていますが、最近では契約満了後に地主へ建物を無償譲渡するという契約も増えています。

 更地にする場合は、建物所有者に解体費用を負担する義務があり、建物を取り壊して土地を土地所有者に返しますが、建物を土地所有者に無償譲渡する場合はその負担がありません。また、無償譲渡の場合は借地契約満了後(建物も無償譲渡するため、建物も土地所有者のものとなります)も住み続けることができるかの確認もしておきましょう。

 ただし、この場合は建物についても所有者ではなく賃借人という扱いになってしまいます。50年以上経過し、高齢になったときに賃借人という不安定な立場を受け入れる必要があるといことは知っておいてください。

 また、定期借地権付きマンションでは、土地を購入せず借りていますので、土地の使用料である「地代」を払う必要があります。地代はマンションの立地や部屋の広さによって決まりますが、全国平均で毎月1万~1万5000円ぐらいといわれています。

 ただし、これは物件によって異なり、都心の一等地では月3万円以上するところもあります。住宅ローンの返済と合わせて考えておかなければならない金額です。

 なお、地代はたいていの場合、金額が変わる可能性があるということが明記されていますので、支払額の見通しが立ちにくいというデメリットがあります。今後インフレになった場合、土地代が急騰し、結果的に土地所有権付きの普通のマンションのほうが得だったということになってしまう可能性もあります。

所有権のマンションに比べランニングコストが高い

 そのほか、借地契約期間満了後に建物を解体する場合には、先ほども触れたように解体費用が発生するため、購入時の保証金の他、修繕積立金等の名目で解体費用は積み立てていきますが、万一解体時に不足する場合は、さらに一時金が発生する場合もあります。したがって、一般的な所有権のマンションに比べランニングコストが高くなってしまいます。

 一般定期借地権制度が創設されたのは1992年のため、2016年現在では50年経過したマンションが存在しません。そのため、借地契約満了後の問題点や経年によるマンションの価値の減少がどのようになるのかモデルがないので見通しが立てられないというデメリットもあります。

 定期借地権付きマンションの特性上、利用できる期間には制限があるため、土地の権利が所有権のマンションよりもが資産価値の減少が著しいことは予想されます。特に、借地契約満了までの残存期間が短くなるほど、買い手がつかなくなる(売却しにくくなる)可能性も高いといえます。売却しにくくなることにより、居住者が減っていき、修理すべき共用部分等の設備を修繕できなくなり、価値が劣化したマンションになってしまう可能性も考えられます。

 購入時の初期投資が少なくてすむ一方で、確認事項の多さやランニングコストの高さ、経年することで資産価値の劣化が加速するなどのデメリットもあるのが定期借地権付きマンションです。物件価格の安さだけに惑わされて購入してしまうと後悔してしまうので、しっかりとデメリット部分についての確認をしてから購入に踏み切りましょう。

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この記事を書いた人

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。

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