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BOOK Review――この1冊 『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』 ちきりん 著

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『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』 ちきりん著 ダイヤモンド社刊 1800円(本体価格)+税

中古戸建てやマンションをリノベーション(以下リノベ)で蘇らせるバラエティ番組が最近とみに増えてきた。そんな番組さながらのビフォーアフターの大変身を実現したのが本書の著者・ちきりん氏である。社会派の有名ブロガーであり、ビジネス書等の執筆もこなす著者のセキララ・リノベ体験記。

何より、リノベに踏み切ったきっかけが面白い。海外旅行の前々日に洗濯機が壊れ、生活家電が突然壊れることの不便さを思い知る。そのとき、築20年余り、60平米ほどの自宅マンションに備え付けの給湯器、キッチン設備、トイレ、ユニットバスもまたいつ壊れてもおかしくないことに気づいてしまい、重い腰を上げたのだ。

ところで、いざリノベをしようと思ったら何から手をつければいいか、思いつくだろうか。スケジュールは? 予算の立て方は? そもそも誰に頼めばいい? 等々、知りたいのに見つからない情報を「徹底的に顧客目線で書いた本」だという。
今回、著者が行なったのは、スケルトンリノベ。これは部屋の壁や床を取っ払い、躯体構造だけを残して間取りから見直す大規模な工事のこと。今の自分のライフスタイルや家族構成、将来すらも見据えた上で、間取り変更や水回りの移動もできると言われている。ところが、「スケルトンリノベなら何でもできるというのはウソ!」と一刀両断、容赦ない。
これがリノベ前に理解しておくべき大切なことの一つだ。

さらに著者が強調するのは、世の中には「等価値を交換する取引」と「共同で価値を生み出し、それを分け合う共同プロジェクト型の取引」が存在するということ。日常的な買い物は前者だが、医師と患者、英会話学校、スポーツジムのようにともに目標に向かい価値を生み出すのが後者、リノベ会社と顧客の関係もこれに当てはまる。新築マンションの購入なら等価値交換型取引であるため、自分から動く必要はないが、リノベも同じ感覚でいると大間違い。リノベ中に問題が起こったとき、「お金を払っているんだから、そっちでなんとかしろ」という姿勢はNG! リノベ会社と自分は一緒に問題を乗り越えていくプロジェクトチームであり、プロジェクト成功の鍵はコミュニケーションだという。リノベに興味がなくても、仕事に役立つビジネス本としても非常に説得力がある。

この後は、リノベのリアルプロセスと題して、リノベ会社をどのように絞り込んでいったかの実録本タッチ、理想のキッチンを目指すインテリア雑誌タッチ、見積もりや契約・保険などの実務ハウツー本タッチと、飽きさせない構成になっている。
そして、お待ちかねのビフォーアフター写真付きで、完成後の振り返りへと続く。
白眉は、リノベはモノに溢れた「親の家問題」の解決策にも役立つというリノベ展開論だ。

いやぁ、本当にいろいろ勉強になり、これからリノベをする人も、そうでない人もお勧めの1冊……ではあるが、はたと気づく。著者のようなこだわりのリノベをするには、時間とお金と圧倒的なパワーが必要であると。
リノベはそれなりに余裕のあるタイミングで行うべき、時間を持てあましている人、定年して毎日が暇でしょうがない人には最適なプロジェクトであると、著者本人も述べるほどで……それがまさに現実である。

とはいえ、中古物件のリノベには行政も期待を寄せている。欧米では中古物件が主流で、住宅は修理しながら使い続けるもの。だが日本は新築物件が主流で、新築一戸建てを買うのが男の甲斐性のように長く言われてきた。ところが、2016年の宅建業法の一部改正では、中古住宅取引にも言及している。こうやって日本でも徐々に、中古物件への需要が高まり、リノベが一部の意識高い系の人のみが時間とお金をかけて行うものではなく、誰でも当たり前のように取り組む日が来るのかもしれない。これからのリノベ時代に、本書は読者に勇気とやる気を与えるきっかけになるかもしれない。


『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』
ちきりん著
ダイヤモンド社刊
1800円(本体価格)+税

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

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