ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

今年も水害の年 火災保険料には「水害格差」が間もなく導入か 不動産市場への影響は?(3/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2022/08/26

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

インパクトは2年前の「重説義務化」に勝る?

さて、今回の件の不動産市場への影響だ。

水害と不動産――ということでは、2年前の2020年に「水害ハザードマップにおける物件所在地の説明義務化」というものがあった。いわゆる水害リスクの重説化だ。 

これに比べ、今回の火災保険・水災補償での地域格差の導入は、ゆくゆくはインパクトとして勝るものになっていくだろうというのが筆者の予想だ。

なぜなら、われわれは可能性としてのリスクを伝えられるよりも、目の前に生じるコストを伝えられた時の方が、反応が敏感になる傾向が概してつよいからだ。 

今後、どんな水害が日本を襲うのかはわからない。だが、それが多くの予想どおり、規模、頻度の面でエスカレートしていくとして、火災保険料にあっては、増えていく被害額に準じ、(今後設定される)料率格差を抱えたまま高額化していくであろう以外に方向性が見当たらない。 

そのうえで、保険料コストがほかよりもかかるのならば、その不動産は単純に忌避の対象となる。資産価値の下落だ。そうしたハンディは、カバーする他の要素が少なくなりがちな地方や郊外の物件で、より顕在化しやすいものとなるだろう。

私事を挟もう。実は、筆者もまさにそんな状況を抱える当事者のひとりだ。

近い将来、親が残してくれるであろう土地と実家家屋は、地方の町のさびしい川沿い近くにあって、洪水ハザードマップを見ると周囲は赤く塗られている。河川氾濫時に想定される浸水深度は0.5m以上~3m未満だ。そのうえで、筆者か弟がやがてこれを引き継ぐことになる。そのため、今回の件はまさに他人ごとではない。 

すでにマップ上赤く染められたわが実家の土地には、ほどなくまたケチがつくかもしれず(今回テーマの保険料格差)、そこに載っかっている建物は築後四半世紀をゆうに超え、老朽化の度合いをさらに増していく。ついでにこの場所は内水氾濫の可能性があるエリアにも収まっている。要するにさんざんだ。

とはいえ、まったく俯瞰した立場でいえば、筆者はわが実家のごとき災害リスクのある土地からの人口撤退が、わが国の今後とるべき道であるとも思っている。国の総合的な防災力を上げるため、これ以上の「環境整備」はほかにないからだ。 

そのためには、そうした土地にあって維持コストが上がり、人々が離れていく方向性には基本賛成となる。

この著者のほかの記事
土地を「有利な資産」と考える人は平成初期の1/3に 日本人の「土地離れ」が加速中?
男女共同参画白書が語る「変容」した日本の姿
地価LOOKレポート令和4年(2022)第1四半期分が公表 対象地区20カ所が削減に

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

ページのトップへ

ウチコミ!