バブル期超えの高騰!この状況は続くのか? 東京・首都圏新築分譲マンション価格・今後の見方
朝倉 継道
2022/05/05
イメージ/©︎takanakai・123RF
「バブル超え」が報じられた首都圏新築マンション市場
高騰を続ける東京・首都圏新築分譲マンション価格。「オリンピック・パラリンピックが終われば下がる」とも言われ続けていたが、結果としてそうはならなかった。閉幕から半年以上が過ぎたいまとなっても、それらしい様子は見えてこない。
先月18日には、不動産経済研究所が2021年度(21年4月~22年3月)に首都圏(1都3県)で発売された新築分譲マンションについて、「平均価格6360万円、㎡単価95.3万円。年度でも過去最高値」と、報じている。
ちなみに「年度でも」とあるとおり、直近の「年間」でも最高値は更新されている。今年1月には「平均価格6260万円、㎡単価93.6万円。いずれも最高値を更新」との発表がすでにされていたところだ。(株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2021年のまとめ」)
価格は高く、面積は狭くなったマンション
一方、業界関係者などプロはよく知るとおり、新築分譲マンションは価格上昇の反面、どんどん狭くなっている。これについては、株式会社リクルートSUUMOリサーチセンターによる調査結果が資料として大変分かりやすい。
この3月に公表された「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、「平均専有面積は66.0㎡で、2001年の調査開始以来もっとも小さくなった」とのこと。ちなみに、01年の数字は76.2㎡となっている。同じ年、75㎡未満の物件が全体に占める割合は40.4%だったが、2021年の数字では倍の80.9%に跳ね上がっている。
すなわち、新築分譲マンションの価格は、実際の値段と占有できる空間の量、両方を併せた意味からも、目下空前の高騰ともいうべき状態にあるといえるだろう。
では、そんなマンション価格はいつ下がるのだろうか。もしや永遠に下がらない……? そこで、この記事では新築分譲マンション価格が今後下がるとすれば、そのカギとなるであろう4つの要素を挙げてみたい。それらは、とりもなおさず現在のマンション価格を支えていると目される代表的な要因を示すものでもある。
マンション市場の死命を制する? 金利の動向
マンション価格は果たして今後下がるのか? おそらくもっとも大きなカギとなるのが「金利」だろう。いまや1%を切り、0%に近い数字も目白押しな低金利こそ、都内をはじめとする首都圏新築分譲マンションにおける価格高騰を支える最大の要因となっている。
低金利は、当たり前だが高額の住宅ローンを身近にさせる。すなわち、「マンションを買いたい」という市場のニーズを具現化させやすい。さきほどのSUUMOリサーチセンターによる調査結果の別項目を見てみよう。「ローン借入総額は平均4941万円、(データのある)2005年以降でもっとも高い」となっている。
なお、このうち(2021年契約者のうち)借入総額5000万円以上の割合は44.9%だ。ところが2005年にさかのぼるとたったの3.2%に減ってしまう。ここ15年ほどでまさにフェーズ変わりした状況がみてとれる。今後、仮に金利が大きく上昇した場合、新築分譲マンション市場は現在拠って立つ土台を一気に失う可能性が高いだろう。
逆に、現状並みの低金利が維持されれば、高額なマンションでも買いやすい環境もそれに準じて続くことになる。
新築マンションの価値を支える中古マンション市場
新築分譲マンションの価格が上がっている、すなわち供給に対する市場ニーズが高い理由のひとつに、マンションにおける資産価値の上昇がある。立地のよい物件を中心に起きていることだが、それを示す具体的な指標は何かとなると、それは中古マンション価格にほかならない。
理屈は単純だ。中古マンションが高く売れる状況が続く間、新築マンションは将来の売却価格が保証され続けることになる。現在、新築分譲マンション価格が高騰している裏には、実は中古マンション市場の長期にわたる活況も存在するということだ。
そこで、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による先月19日の発表を見ると、「首都圏中古マンションの成約物件価格は9年連続で上昇」「成約物件㎡単価も9年連続で上昇」となっている。(「首都圏不動産流通市場の動向 2021年度」)
中古マンション市場の動向は、すなわち新築分譲マンション市場の先行きを示す鏡でもある。今後、何らかの理由で中古側の市場が冷え込むようなことがあれば、それは少なくない確率で新築分譲マンションの価格にもネガティブに影響してくるはずだ。
パワーカップルはさらに増えるのか?
東京・首都圏新築分譲マンション市場に目立つ購買層として、「パワーカップル」が存在することはよく話題となる。定義のはっきりしない言葉だが、ざっとしたところをいえば、共働きの夫と妻、それぞれの年収が700万円程度を超える夫婦世帯、あるいは、さらに子どもまたは親がいる世帯といった辺りだろう。
つまり、彼らの世帯年収=約1400万円超ということになる。一般に年収の7倍程度までが適当とされる住宅購入価格を考えると、1400×7=9800万円となる。そこで、冒頭の不動産経済研究所のレポートをもう一度見てみよう。東京23区での新築分譲マンションの平均価格は8449万円となっている。まさにパワーカップルの購買力にシンクロしたかたちだ。
いくつかのシンクタンクなどは、こうしたパワーカップルが年々増加している旨を報告している。背景としては、いわゆる働き方改革が近年大企業を中心に進められたことが大きい。出産後、子育てもしながら女性が働き続けられる環境が整ってくるとともに、パワーカップルが生まれる環境も整ってきたというわけだ。
それでもマンションはまだ安い? 海外からの目
高騰、価格上昇と、ニュースに文字が躍る東京・首都圏の新築分譲マンションだが、国際的に見るとまだ「安い」との指摘も時々目にされる。
参考となる一資料として、一般財団法人日本不動産研究所による「国際不動産価格賃料指数」昨年11月公表分の結果を見てみよう。いわゆるハイエンドクラスマンションの価格指数の比較において、ロンドン、ニューヨーク、北京、上海、香港、台北、シンガポール……これらはすべて東京よりも数値が上回っている。東京・首都圏のマンション市場は、国際的にはある意味で出遅れており、価格の上ではいまだ伸びしろを保つとの見方もできなくはない。
東京および首都圏は、世界最大ともいわれる巨大都市圏であるばかりでなく、群を抜いた治安の良さも誇る魅力的なエリアだ。また、人口減少が進む国のなかに在りつつも、東京・首都圏自体へのヒト・モノ・お金の集中がさらに進むことへの期待値は高い。
唯一、明日にも起きかねない大地震が気になるところではあるが、目の前の旨味としてイールドギャップ(投資利回りと借入金金利の差額)にも魅力がある。マンション含め、国際的に見て東京・首都圏を不動産投資の対象として検討しない判断は、目下のところしにくいといっていいだろう。
今後も目を離せない4要素
以上、高騰している(国内的には)東京・首都圏新築分譲マンション価格は今後どうなるのか? との問いに絡めて、それを支えていると思われる4つの要素を並べてみた。
なお、記した順番は、私が思う現在のマンション価格に対する影響力がつよい順番だ。すなわち1番「金利」、2番「資産価値」、3番「市場の購買力」、4番「海外からの投資意欲」となる。
よって、今後、東京・首都圏新築分譲マンション価格がどうなっていくかについては、突発的な金融および経済的変動による影響を除いては、これら4要素の動きを随時確認していくのがよいものと、私個人は思っている。
もっとも、その突発的な変動というやつ、「危機はいつも違った顔で現れる」といった言葉どおり、いつどんなかたちのものが忍び寄ってきているのかがなかなかわかりにくい。結局のところ、これこそがもっとも悩ましい問題であり不安といえるだろう。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。