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中古マンション価格高騰で人気 「AI自動査定」の査定価格が高くなる理由(2/2ページ)

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情報開示途上国 透明度の低い日本の不動産情報

そんなAI自動査定だが、弱点もある。日本では中古物件の正確な売買価格を把握するのは難しく、正確に補足できるのは新築の売り出し価格になる。

世界的に見れば日本は米国や豪州など不動産先進国に比べて不動産情報のオープン化が遅れている「情報開示途上国」なのだ。そのため日本の不動産業界は、世界的不動産情報会社「ジョーンズラングラサール(JLL)」による国際的な不動産情報の「透明度」調査において16位に甘んじている。

しかも、AI自動査定で問題になるのが、国交省の指定流通機関である、不動産流通機構が運営する「レインズ」の内部に登録された情報が使えないこともある。肝心の成約価格の入手が難しく、査定精度が低くなるという点がAI自動査定のネックになっている。

AIがマンションを査定するためには、過去の売買記録を学習する必要があるが、公的なサイトで膨大な情報を抱えるレインズのデータ抜きでは情報量と正確性が限られるだろう。

AI自動査定の価格が高くなるカラクリ

レインズ利用ガイドラインによると、「機構(レインズ)から取得した登録・成約情報を情報サービス会社に提供する」などと具体的な違反事例が挙げられている。つまり、厳しい規約により、AIの学習にはレインズが使えず、情報開示の恩恵は直接的に消費者には及んでいない。要は、AI自動査定は過去の売買記録が使えない。もちろん、レインズを経ない取引もあり、レインズデータが森羅万象の価格情報を握っているわけではないが、このデータを使えないのは厳しい。

結果的にマンションのAI自動査定は、クローリングしやすい新築時の価格、中古マンションの売り出し価格(売る側の希望価格)に頼っているため、実際の成約価格との誤差は最大で2割(築浅物件)から3割以上(30年以上の物件)と言われ、ばらつきが多くなる。

それでもネット広告の「中古物件の高騰で、500万円高く売るのも夢じゃない!」という文言に誘われて、定期的に各社の査定を受ける件の豊洲の会社員のような消費者も多い。

もちろん、査定機能が似ていても、いろんなサイトに登録することで、それぞれの査定価格のばらつきをならして価格トレンド(暴騰の傾向)などの参考にする顧客もいる。

しかし、注意が必要なのはサイトによって得意なエリア、不得意なエリアもあるようだ。そのサイトの系列のデベロッパーが売った物件で、そのデベロッパー系の仲介会社が中古取引も強いという「得意物件」もあるからだ。

AI自動査定は「買取価格」ではないことを肝に銘じるべきであろう。あくまでも参考価格として鵜呑みにせず、実際に売却する際は、当たり前のことだが複数の業者に相談することが重要だ。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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