炎上した「都道府県魅力度ランキング」を覗いたら、魅力ある地域の条件が見えてきた――群馬県には『頭文字D』という宝がある(2/3ページ)
朝倉 継道
2021/10/26
地域の魅力を測るいまどきの4つのキーワード
そのうえで、今回の都道府県魅力度ランキングをあらためて覗いてみたい。私が注目したのは上位だ。といっても、そこにはいかにも「あるある」なメンバーが、なんとも退屈な雰囲気で並んでいる。
ただ、これらをじっと見ていると……あるキーワードが頭に浮かんでくる。それは、“いまどき”の人々をその場所に向けて旅立たせる強力なエモーション、あるいはパッションとなっている4つのキーワードだ。
「グルメ」「絶景」「ニッポン」「ストーリー」となる。
都道府県魅力度ランキングTOP10の面々に対し、これら“いまどき”を象徴するキーワードのうち、もっとも適するものを選りすぐって振り分けてみたい。
1位:北海道→「グルメ」「絶景」
2位:京都府→「ニッポン」
3位:沖縄県→「絶景」
4位:東京都→「ストーリー」
5位:大阪府→「グルメ」
6位:神奈川県→「ストーリー」
7位:福岡県→「グルメ」
8位:長崎県→「ストーリー」
9位:奈良県→「ニッポン」
10位:長野県→「絶景」
10位:石川県→「ニッポン」
なお、繰り返すが上記は、日本の一シンクタンクが調査し、まとめた「都道府県魅力度ランキング」という括りの中での上位11地域だ。
でありつつも……お気づきだろうか。
これらはそのまま「グルメ」「絶景」「ニッポン」「ストーリー」という、それぞれのキーワードにおいての横綱・大関クラスを集めた“1ダース引く1”にもなっている。すなわち、この調査にいう魅力度の高い都道府県とは、上記の4要素いずれかにおいて傑出している都道府県を指すにほかならない。
「グルメ」「絶景」「ニッポン」「ストーリー」——実はこれこそが、いまどきの人々が地域に魅力を感じる際における、当該「魅力」の単純な正体であるといっていい。
ちなみに、上記の振り分けを考えるにあたっては、1都道府県につき、なるべく絞りに絞って1つだけとすることを当初は目標とした。しかしながら、北海道のみはどうしてもそれが適わなかった。なので、上記のとおり「グルメ」「絶景」の2つを割り振っている。つまり、逆にいうとこれこそが、こうした土俵における北海道の強さを表している。
あらためて調べなくとも、おそらくデパートの物産展の圧倒的一番人気はつねに北海道だ。ブランドという切り口でいえば、北海道はやはり他とはひとケタ違う強力なパワーをもつ別格の土地といっていい。
浦和は非日常性の発信で「住みたい街」になった
話を進めよう。今度は、上記の「グルメ」「絶景」「ニッポン」「ストーリー」をさらに蒸留器にかける。究極に本質的な、ひとつのキーワードを抽出してみる。すると、出てくるのはこの言葉だ。「非日常性」となる。実は、地域のブランド力の正体とは、とりもなおさず「非日常性」だ。
他の地域に住む人々に対しても、さらには地元の人々に対しても、非日常性をするどく発信できている地域であること。それこそが、ブランド力に優れた魅力度の高い地域であるということができる。
そのよい例が首都圏では浦和だ。
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。