調理家電でもっとも事故が多いのは…ほとんどの住宅にある「電子レンジ」
朝倉 継道
2021/06/29
イメージ/©︎jaroslav74・123RF
調理家電の事故件数は電子レンジが突出
「調理家電」と呼ばれる家庭用電気製品のなかで、もっとも事故を起こしやすいものはどれだろうか?
実は、「電子レンジ」がそうであるらしい。
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が、この5月末に、「調理家電は正しく使いましょう~電子レンジ・オーブントースターの庫内の汚れはNO!!~」と、題したニュースリリースを行っている。
「新型コロナウイルスの影響から、家にいる時間が長くなったことで、家庭内で料理や飲食を行う機会が増え、調理家電の売り上げが増加している」
「一方で、使用機会が増えることで製品事故も増えており、2020 年は調理家電の火災事故(焼損事故を含む)が19年に比べて14%増加した」
「調理家電の事故の中では、電子レンジの事故が最も多く、誤った使い方による事故がたびたび発生している」
とのこと。そのNITEがまとめた「2016年から2020年の5年間における調理家電の事故490件」における製品ごとの内訳を示すと、こうなっている。
「電子レンジ」…153件
「IHこんろ」…83件
「ラジエントヒーターこんろ」…79件
「オーブントースター」…40件
「電気ケトル」…37件
「電気炊飯器」…26件
「コーヒーメーカー」…19件
「フードミキサー」…15件
「ジュースミキサー」…5件
「その他(電気圧力鍋、ホームベーカリー、電気フライヤーなど)」…33件
ちなみに、「ラジエントヒーターこんろ」というのは、聞き慣れない方もいるかもしれない。
トッププレートの下に、ニクロム線が渦巻状になって埋め込まれているかたちのこんろで、トッププレート自体が高温になる。そのため、IH式のこんろでは使用できない土鍋などにも対応可能なのが特長だ。
ともあれご覧のとおり、電子レンジの数字はほかを大きく引き離し突出している。なおかつ、20年の事故件数は36件で、集計対象の16年から20年までの5年間ではもっとも多くなっている。
食べ物汚れを放っておくと「発火」する?
では、どんな事故が、電子レンジの使用によって起きているのだろうか? まずは「発火事故」だ。何から発火するかによって……
「食品の発火」
「庫内汚れの発火」
「機械の故障等による発火」
「その他(使用できない容器や異物などからの発火等)」
に、おおむね分けられる。このうち「食品の発火」は、通常、加熱のし過ぎが原因で起こる。
イモ類やパンなど水分の少ない食品が、加熱のし過ぎによって炭化し発火する例がよく知られている。食品に含まれる油分が多い場合は、さらに激しく燃えたりもする。
加えて、NITEによると、「ふた付きの容器に入った食品や、少量(100g未満)の食品を自動加熱(オート)機能で加熱すると、正常に温度が検知されないことがある」とのこと。つまり、加熱のし過ぎを起こしやすいということで、これはぜひ覚えておきたい注意点だ。
ちなみに、「炭化し、発火」といま述べたが、なぜ炭化が発火につながるのだろうか?
それはモノが焦げて炭化すると、電気を通しやすい性質(導電性)を帯びてしまうためだ。これにより、電子レンジ庫内という特殊な環境のもとでは、スパークが発生し火がつくといった流れになりやすい。
よって、「庫内汚れの発火」もこの炭化を経由して起こる。電子レンジ庫内に付着した食品汚れが、加熱されて炭化しやがて火花が生じ燃え出すかたちとなるわけだ。
加えて、調子の悪い電子レンジを無理に動かしたり、説明書をよく読まずに使用できない容器や包装に入れたまま食品を加熱したり、といった行為もやはり発火事故の原因となりうる。(金属容器やアルミホイルによるスパークの発生がよくある事例)
タマゴが爆発、熱い飲み物が噴き出す?
発火以外で起きやすい電子レンジの事故が、食品の「破裂」と「急な沸騰」だ。
このうち食品の破裂については、卵での事故がよく知られている。要は、外側が殻や膜で覆われているものが危ない。(殻をむいたゆで卵も、白身が殻・膜の代わりとなるため同様)
加熱されることによって殻や膜の内側の圧力が増し、それがある時点で外に噴き出す仕組みのため、ソーセージや明太子、イカなども、やはり破裂の危険がある。
なおかつタイミングが悪いと、電子レンジから食品を取り出す際にこれが起こる。顔や目を直撃されることもあり、非常に危険だ。
一方「急な沸騰」は、「突沸」とも呼ばれる。水をはじめ、さまざまな液体で発生する。
原理は割愛するが、加熱した飲み物や、みそ汁、カレーなど、液体の食品を電子レンジから取り出す際など、振動などが影響して突然沸騰することがある。これが突沸で、やけどの原因となりやすい。
液体が攪拌や振動のない静かな状態で熱せられすぎると(過加熱)、これが起こることがある。
突沸を防ぐには、温めるものを事前によくかき混ぜ、なおかつ、加熱は長時間続けて行わず短く繰り返すことだ。また加熱しすぎたと感じた場合は、すぐにそれを取り出さず、1~2分は庫内に放置する。少し冷ましてからレンジの扉を開けるようにしたい。
「NITE 調理家電は正しく使いましょう~電子レンジ・オーブントースターの庫内の汚れはNO!!~」
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。