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西登戸→なんて読む? 地域の人々が助け合う力「共助力」を駅(街)ごとに測定するユニークなランキング

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文/朝倉 継道 イメージ/©ilixe48・123RF

リクルート住まいカンパニーが、この3月(2021)に、とてもユニークな調査結果を公表している。「地域の助け合う力の実態を調査(1都4県)」である。

冒頭にはこんなイントロダクションが記されている。

「東日本大震災から10年 住宅性能は進化、防災グッズも充実……しかし、地域コミュニティの課題が浮き彫りに」

そのうえで、

・対象は1都4県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の1076駅
・32万7004人が分析対象の1次調査と、有効回答数4万2947人の2次調査を実行
・アンケートに回答しているのは、各駅から7km以内もしくは駅と同一の市区町村に在住する 20歳以上の男女
・調査結果を得点化し、リクルート住まいカンパニー独自の分析にもとづく「共助力」を算出
・災害発生時に地域の人々が助け合う力の度合いを測り、偏差値70以上となった街を「駅」単位でランキングした

と、いうのが、今回のプロジェクトだ。なお、上記、2次調査の対象となった方々には、以下のような質問項目が提示されている。

(「助ける力」を測る項目)

・お住まいの近くに「知人」と呼べる人がいる
・その知人の家がどこにあるか知っている
・その知人の連絡先を知っている
・その知人とその家族が家にいる時間帯を知っている
・災害が起きたとき、自分の安全が確保された上で、あなたはその知人や家族を助けに行く

(「助けられる力」を測る項目)

・お住まいの近くに「知人」と呼べる人がいる
・その知人はあなたの家がどこにあるか知っている
・その知人はあなたの連絡先を知っている
・その知人は自分と自分の家族が家にいる時間帯を知っている
・災害が起きたとき、その知人や家族はあなたのことを助けてくれる

これらに対する回答者の「Yes」の答えが、得点化されていく仕組みだ。では、その結果を見ていこう。

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「西登戸」……聞き馴染みのない駅名がランクイン

ここに順位と駅(街)の名前および沿線名のみ抜粋する。

1位 西登戸(京成千葉線)
2位 大磯(東海道本線)
3位 駒沢大学(東急田園都市線)
3位 三崎口(京浜急行久里浜線)
5位 川間(東武野田線)
6位 新松田(小田急小田原線)
7位 舞浜(京葉線)
8位 新井薬師前(西武新宿線)
9位 信濃町(総武線)
10位 YRP野比(京浜急行久里浜線)
10位 京成臼井(京成本線)
12位 代々木公園(東京メトロ千代田線)
12位 大甕(常磐線)
14位 南大塚(西武新宿線)
15位 市川真間(京成本線)
16位 代々木八幡(小田急線)
17位 京成高砂(京成本線)
18位 逗子(横須賀線)
18位 湯島(東京メトロ千代田線)
18位 千駄ヶ谷(総武線)
21位 東武動物公園(東武伊勢崎線)
21位 ひたち野うしく(常磐線)
23位 藤代(常磐線)
23位 鴨宮(東海道本線)
23位 京成幕張(京成千葉線)
26位 白糸台(西武多摩川線)
26位 牛込柳町(都営大江戸線)
26位 町屋(東京メトロ千代田線)
26位 熊谷(高崎線)

ご覧のとおり、あまり多くの方に知られていないであろう駅(街)の名前が1位に登場した。「西登戸」である。これは「にしのぶと」と読む。これをスムースに読める人は、地元以外には多くいないかもしれない。

西登戸駅は、京成千葉線の駅だ。JR千葉駅そばの京成千葉駅から、東京方面へ向けて2駅隣りの便利な位置にあり、小さな駅舎を囲んで、静かな住宅街が周りに広がっている。

ちなみに、この駅は、かつて「千葉海岸駅」と呼ばれ、海水浴客で賑わっていたという面白い歴史をもっている。そのため、駅東側の街は、もともと別荘地として開発されている。

現在は、東京湾岸の大規模な埋め立てによって、海岸線ははるか遠くに離れてしまったが、地元周辺において、西登戸駅付近といえば、いまも、閑静かつやや高級な住宅地として認識されているようだ。

「住まいの近くに知人と呼べる人がいる」

「災害が起きたとき、その知人を助けに行く」「その知人はあなたのことを助けてくれる」

そうした環境が生まれやすい古くからのコミュニティが形成されている様子が、色濃くうかがえるエリアといっていいだろう。

過剰な親切? 入居者に喜ばれるおせっかいとは

賃貸住宅の話をしよう。西登戸駅周辺のような「共助力」のつよい街で、それを賃貸経営にうまく取り込んでいるオーナーが、筆者の知るなかにひとりいる。

物件は、いわゆるお屋敷も多く、町内会活動も盛んな古い住宅地のなかにある。周囲はとても閑静で、ともすれば緊張感もうっすらと漂うエリアだ。そんな環境ではあるが、オーナーはそれを上手に利用している。

新しい入居者が引っ越してくると、オーナーはその人を引き連れ、物件内のほかの部屋のみならず、町内会長さん宅以下、ご近所も巡って挨拶回りをする。顔つなぎを買って出るのだ。

地域の共助の輪、見守り合いの輪に、入居者もスムースに参加するためのアクションである。「おせっかい」と、嫌がる入居者さんも現れそうなイメージだが、実際はその逆だそうだ。

「右も左も分からない、しかもややプレッシャーのかかる雰囲気のなかに暮らし始めるうえで、本当にありがたい」

入居者は、その後時間が経つほどに、喜ぶのだそう。

「転入してきた方の人となりを知ることができて、安心できる」と、いうことで、もちろん近所からの評判も上々である。

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この記事を書いた人

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