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「選手村マンション」の今後は? 晴海フラッグ引き渡しの遅れに民事調停申し立て(1/2ページ)

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文/朝倉 継道  写真/立木 信

すったもんだの選手村マンション

東京都中央区晴海のマンション「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」を巡って、購入した人々の一部が2月1日に民事調停を申し立てた。

参加したのは24名。物件引き渡しが遅れることで生じる家賃負担などの補償を求めている。

晴海フラッグは、東京オリンピック・パラリンピックの「選手村マンション」として知られている。一旦選手村施設として使われたあと、改修され、多くは分譲マンションとして販売、一部が賃貸の区画となる。

住宅のみならず、商業施設や、周囲のランドスケープも含めて一体開発される、総計画戸数5632戸(分譲戸数4145戸)の大規模プロジェクトだ。

販売は2019年7月に始まった。20年に行われるはずだった東京五輪を挟み、2023年春が引き渡しの予定だった。ところが既知のとおり、新型コロナの世界的な感染拡大の影響をうけ延期の事態に。それに伴い、物件の引き渡しもいまのところ1年程度遅れる見通しとなっている。

つまり、当初の販売開始から引き渡しまでが現状5年近くかかるというワケだ。なおかつコロナは収束せず、東京五輪の行方もいまの時点では確定といえる状況ではない。

とりわけ晴海フラッグにとって影響が大きいのは、もう1年再延期となった場合だ。つまり、引き渡しが当初の予定からおそらく2年程度遅れることになる。

そうなると、23年には晴海フラッグでの生活を始めるつもりだった人にとっては、ライフステージにも影響する。

今回の調停の申し立て理由にもあるように、現在住む賃貸住宅での生活が長引くことで、家賃負担が予定外に増加することに苦慮される人も、当然少なくない。

そこで、契約者に対し売主側からは、すでに昨年6月頃までの段階で、東京五輪の延期をうけての選択肢「手付金全額返還に伴う契約の白紙撤回」が示されたと伝えられ、ノーペナルティでのキャンセルができる。そのため、契約者は手付金を取り戻したうえで、別のマンションを探すという再出発が可能となる。しかし、それでも今回、裁判所への申し立てに至っているのだ。

なおかつ、「東京の新・どまんなか」をキャッチフレーズとする好立地、東京都による土地払い下げなどの経緯による「安い坪単価」といった、稀少性もあるこの物件。「これを逃せば同じ条件の物件は2度と手に入らない」と、いった切実な想いと、引き渡しが長引けばその分だけ積み上がるコストなどの板挟みに、ギリギリの悲鳴をあげている契約者もいるだろう。

とはいえ、今回の原因をつくったのは、残念ながら、ほぼ天災に等しい「コロナ」だ。

契約書には、予定どおりの物件引き渡しができない場合などに、売主側が補償をしない免責事項として、「天災など売主側の責に帰さない事由」が当然盛り込まれているはずだ。

現に、今回売主側は、「五輪延期にともなう引き渡しの遅れは、補償が必要な条件に該当しない」旨をすでに表明している。調停の見通しは申立人にとっては暗そうだ。

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