2020年「基準地価」――新型コロナが地価に冷水を浴びせた結果に
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/10/09
文/朝倉 継道 イメージ/@NATTEE CHALERMTIRAGOO・123RF
コロナ下での状況が反映された結果
9月29日、国土交通省から注目の「基準地価」(都道府県地価調査の結果)が発表された。公示地価、路線価と並ぶ、3大公的地価調査のひとつだ。
注目の理由はただひとつ。評価時期だ。公示地価の評価時期は毎年1月1日時点、路線価も同様である。
一方、基準地価は、評価時期が毎年7月1日時点のものとなり、各都道府県が定める基準地1㎡あたりの価格となる。
すでに発表された今年の公示地価、路線価は、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大による社会・経済への影響が反映されたものではなかった。
基準地価は3大地価調査中、コロナ下での状況が初めて反映されるものとして、注目が集まっている。
トピックを並べてみる。
・全国の全用途での平均は2017年以来3年ぶりの下落。昨年のプラス0.4%から、マイナス0.6%へ
・全国の住宅地での平均は、昨年のマイナス0.1%からマイナス0.7%へ
・同じく商業地は昨年のプラス1.7%からマイナス0.3%へ。5年ぶりに下落
商業地の落ち込みが顕著といった様子だ。
3大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)にフォーカスしてみよう。
・3大都市圏を合わせた全用途での平均は、昨年プラス2.1%から今年0.0%の横ばいへ
・同じく住宅地の平均はプラス0.9%からマイナス0.3%へ
・同じく商業地の平均はプラス5.2%からプラス0.7%へ
以上のとおり商業地の失速が目立つ。その内訳は、
・東京圏の商業地、昨年プラス4.9%から今年プラス1.0%へ
・大阪圏の商業地、プラス6.8%からプラス1.2%へ
・名古屋圏の商業地、プラス3.8%からマイナス1.1%へ
いずれもまさに“失速”といったところだが、とりわけ大阪圏での度合いが、他に増して大きな様子がうかがえる。こうした状況については、いうまでもなく、コロナの影響による訪日客需要の落ち込みが影響しているとみてよいだろう。
国交省は次のようにコメントを添えている。
「この1年間のうち前半(2019.7.1~2020.1.1)は、交通利便性や住環境の優れた住宅地、オフィス需要の強い商業地、訪問客の増加に伴う店舗やホテルの進出が見込まれる地域を中心に地価の回復傾向が継続していたと見られる」
「一方、後半(2020.1.1~7.1)は、新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まり、総じて上昇幅の縮小、上昇から横ばいまたは下落への転化となったと見られる」
上昇傾向がある程度維持されている地方中核4市
全国平均や3大都市圏とはやや異なるのが、地方の中核4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)での数字だ。
4市平均での数字はどうだろうか。
・全用途、昨年プラス6.8%から今年プラス4.5%へ
・住宅地、プラス4.9%からプラス3.6%へ
・商業地、プラス10.3%からプラス6.1%へ
ご覧のとおり、伸び率こそ縮んでいるが、上昇傾向はかなりの程度維持されている。理由としては、都市中心部における再開発の進捗などが挙げられているが、もちろん今後については予断を許さない。コロナという先行き不透明な要素が、不透明なまま経済の底に横たわり続ければ、中核4市も必然的に3大都市圏のあとを追う可能性は高いだろう。
ともあれ、中核4市における際立つ現在の状況は、以下のような数字にも表れている。地価が上昇した地点、横ばいの地点、下落地点、それぞれの占める割合だ。
全国(全用途)
上昇21.4% 横ばい18.5% 下落60.1%
3大都市圏(〃)
上昇33.5% 横ばい21.9% 下落44.6%
中核4市(札幌、仙台、広島、福岡)(〃)
上昇90.0% 横ばい5.4% 下落4.6%
中核4市以外の地方(〃)
上昇13.9% 横ばい17.5% 下落68.5%
中核4市と、全国・3大都市圏との比較もさることながら、中核4市以外の地方と中核4市とのギャップに目を見張られる人も多いかもしれない。日本の各地で起きている、人や経済の動きが垣間見られるようだ。
上昇率トップ 沖縄
もうひとつ、沖縄の数字を確認する。
今回の基準地価における都道府県別の変動率を見ると、住宅地、商業地ともに沖縄県が上昇率でトップだ。
住宅地 …プラス4.0%
商業地 …プラス6.2%
そのため、地点(基準地)別の上昇率上位TOP10を見てみると、住宅地で10地点中の8地点、商業地で7地点を沖縄が占めている。なお、1位は住宅地・商業地ともに宮古島の土地となっている。
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