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今日もどこかの街で美食探訪 ねこやま大吉のグルメ狩人

東京都(千代田区) 『神田一期屋 ICHIGO-YA』の驚愕土鍋 匠の手から生まれる「佐賀牛ステーキとうにの土鍋ご飯」

ねこやま大吉ねこやま大吉

2021/09/18

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写真/ねこやま大吉

神田明神で甘酒を馳走

取材現場、いつもより早めに終了し気持ちを切り替えるため、神田明神へ出かけることにした。マップで確認すれば歩いて10分ほど。神保町の会社にいる頃は仕事始めに毎年参拝、天野屋の甘酒が唯一の楽しみだった。

神田明神には一之宮大己貴命(おおなむちのみこと)<縁結び>、二之宮少彦名命(すくなひこなのみこと)<商売繁盛開運>、三之宮平将門命(たいらのまさかどのみこと)<除災厄除>と、いま一番ご利益を受け賜りたい神様が鎮座しているところである。

二礼二拍手一礼、心あらわに。甘酒を馳走になり妻恋坂を下りていく。

東京手仕事 木目込に触れる 

数週間前、通りかかったCOREDO室町で職人が作る工芸品の展示会に立ち寄った。その時、目に焼き付いた「江戸木目込(えどきめこみ)」が頭から離れず、もう一度と見たい思っていたところ、上野松坂屋でやっているというので足早に向かう。

東京の「伝統工芸品」。江戸職人の匠の技と心意気によって、磨かれ、洗練され、庶民に愛されて続けてきた逸品たち。飾り物だけでなく実用品としても魅力あるものばかりである「粋」で「いなせ」な味わいを醸し出すそれは手にした者にしか味わえない「モノ」。

さすが匠が作り出す品。今回はタイミングよく木目込の制作実演を見ることができたのだが、作品の奥深さ、優雅さを改め思い知らされた。伝統はやはり継承されなくてはいけない、途絶えさせてはいけないと大いに感じた。そして、いつか必ず手にしたいモノだと。


東京手仕事/https://tokyoteshigoto.tokyo/

神田だらけの神田?

上野松坂屋を後にして、銀座線が走る地上を神田方面に歩く。東京はちょっと見ないうちに風景が変わってしまう。それを確認するのはやはり歩くのが一番だ。自分の脚が間違いない。

交通手段で移動すれば時間は短縮できるが、時の変化にはなかなかな気づくことができない。そんな思いを抱きながら歩き続けること20分。JR神田駅まで来た。途中、住所標識をみて神田(駅周辺)ではないのに「神田〇〇町」表記に気づく。考えれば、神田神保町・神田駿河台・神田岩本町・神田須田町・神田淡路町……このエリアは神田表記が多い。

神田エリアは、現在の大手町の平将門首塚付近から神田山(駿河台)にかけての一帯を指していた。その後、1947年に神田区が麹町区と合併し千代田区が発足する際、神田区内の町名にはすべて「神田」を冠称する町名変更がなされた。神田町名、その数「28」。商店街の数はふれあい通り商店街を始め6街、ファミレス7店舗・カフェ65店舗・ファーストフード28店舗、スーパー7店舗、そしてコンビニは45店舗(※2020年時点)。ただし大型スーパーが1店舗もないというのが神田らしい。

さて、今日は何を食すか……。

『神田一期屋 ICHIGO-YA』 驚愕の土鍋

JR神田駅東口を歩いていると、一期一会ならず、一期と書かれている看板が気になり、今日はここに決める。『神田一期屋 ICHIGO-YA』だ。旨い肉も魚も食べたい、そんな欲望を満たしてくれるはずであろう。

階段を下りていく。果たして一会はあるのだろうかと期待膨らませながらドアを開ける。コロナ対策万全な清潔感たっぷりの店ではないか。店内はカウンター、テーブル、座敷、明るく、細部にまで店主(社長)の気配りが感じられる奇麗な店だ。

メニューを見れば九州の食材が並ぶ。鮮魚は福岡市場から、牛肉・鳥肉は佐賀県から、ずらっと並ぶ一升瓶は九州の酒ばかりである(緊急宣言下、眺めるだけのオブジェと化しているが)。

直感で「一会」あると確信した。

やはりまずは小生出身地、「博多の魚からやろ……」、ひとりそう呟く。

「福岡市場直送鮮魚盛合せ」

いかーん、旨かばい。なんやこれ…っ。どげんすればこげん旨かもんできるとね?

と、蘇る博多弁を抑えながら口に運ぶ。

鯛・鰤・鯵・烏賊・えんがわ、そして、カマスの刺身。普通は塩焼きのそれが刺身で食べられるのはやはり鮮度がよくなければできない技だ。さすが九州からの魚。荒波で育った白身魚のオンパレード。歯ごたえ抜群の魚は玄界灘が生んだ宝石だ。

つくねが好きで好きでしょうがない小生にとって、これは外せない一品。

「げんこつつくね」

いかんですばい。この大きさ、匂い、色艶。メニュー品書き通り、グーチョキパーのグーと同じ大きさ。外はカリっと中はふっくらジューシー、溢れ出す肉汁。

歯ごたえある軟骨が食感をより楽しませてくれる。塩加減がまた絶妙。たまごとの相性も抜群によく、やっぱつくねは塩ばいね。 

「牛すじ肉じゃが」

よく煮込まれてる牛すじ肉じゃが。すじ肉はとろけんばかりに仕上がっているのに、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんは、野菜本来の甘みと歯ごたえを残している。

甘辛い味付けは箸がとまらない。博多(らーめん)では替え玉が一般的だが、この肉じゃがも、思わず「替えすじ」したくなるような一品である。どんな調理・魔法をかけてるのやら。

箸を休めてると一期屋さんの店主と話をすることができた。やはり出身は九州だった。いろんな話で盛り上がる。ここにもいた職人、食の「匠」。

興味深かったのは最初に料理人を目指すと決めたのが、小学校4年生の時だったということ。お母さんが料理学校で使っていた包丁をもらい、その時すでに桂むきをやっていたというのだから驚きだ。国内ではホテルで総料理長を務め、海外でも総料理長を歴任し、今に至るという。極めるのはいつなのか……店主にゴールはないのだろう。

経験、場数を踏んでいる匠の話は尽きることはないのだが、世は、時短真っ只中。最後に一期屋さんイチ押し、〆の土鍋をガッツリ食らうことにした。 

 

「佐賀牛ステーキとうにの土鍋ご飯」

贅沢の極み。これは絶対に旨いに違いない。

うにがこれでもかと重なる。今回は特別に店主が手さばきを披露してくれた。

やっぱり職人・「匠」の手は、いつ見ても感動する。

佐賀牛の肉の旨味、うにの濃厚な潮香が、卵とインクルージョン。それは想像をはるかに超えた、初めて口にする「旨かもの」だ。この茶碗一杯に料理人の全てが集約されている。一口一口噛みしめながら最後の一粒までたいらげた。

工芸品の「匠」、食の「匠」。つくるものは違がえど、すべては一期一会なのだ。

山手線に乗り、電車の中で一日を振り返ると江戸の早口言葉を思い出した。小声で繰り返す。

「神田鍛冶町の角の乾物屋の勝栗買ったが、固くて咬めない。返しに行ったら、勘兵衛の内儀(かみ)さんが帰ってきて、癇癪(かんしゃく)起こして、カリカリ咬んだら、カリカリ咬めた」

変な人と思われたに違いない。

今回お邪魔したおいしいお店:和牛と創作料理 『神田一期屋 ICHIGO-YA』
住所:東京都千代田区鍛冶町2-9-5 東園ビル B1F
交通:JR神田駅東口・銀座線神田駅 徒歩2分

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この記事を書いた人

編集者・ライター

長年出版業界に従事し、グルメからファッション、ペットまで幅広いジャンルの雑誌を手掛ける。全国地域活性事業の一環でご当地グルメを発掘中。趣味は街ネタ散歩とご当地食べ歩き。現在、猫の快適部屋を目指し日々こつこつ猫部屋を制作。mono MAGAZINE webにてキッチン家電取材中。https://www.monomagazine.com/author/w-31nekoyama/

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