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『パピヨン』

あの名作のリメイクといようりは“アップデート”版 バディームービーの見どころとは?(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2019/06/05

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(c) 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED

作家アンリ・シャリエールの自伝小説を映画化した脱獄映画の金字塔『パピヨン』(1973)のリメイクである。終身刑囚パピヨンの13年に及ぶ命がけの脱獄劇を描く。

舞台は1931年のパリ。金庫破りのアンリ・シャリエール(チャーリー・ハナム)は胸に蝶の刺青を入れていることから、仲間内で“パピヨン”と呼ばれていた。いつも通り仕事を成功させた彼は、身に覚えのない事件で殺人の濡れ衣を着せられ、終身刑を宣告される。収監先はフランス領ギアナの悪名高い流刑地で、囚人たちは植民地の労働力として刑期を終えた後も死ぬまで南米に留まらなければならない。

パピヨンは脱獄を考えるが、そのためには金が必要で、彼は無一文であった。絶望的な状況の中、パピヨンは通貨偽造の罪で終身刑となったルイ・ドガ(ラミ・マレック)の存在を知る。ドガは大金をため込んでいると噂され、周囲から命を狙われていた。パピヨンはドガに、命を守ってやる代わりに脱獄資金を提供してほしいと持ちかけるが、ドガはその気はないと断る。しかし、収監先へ向かう船上で殺人騒ぎが起こり、身の危険を感じたドガは仕方なくパピヨンの申し出を受けることにする。

73年版はパピヨンをスティーブ・マックイーン、ドガをダスティン・ホフマンという当時の2大スターが演じ、『パットン大戦車軍団』(1970)でアカデミー賞監督賞を受賞した名匠フランクリン・J・シャフナーがメガホンを執った名作である。この作品のリメイクはハードルが高いように思われた。

しかし、『パピヨン』には脱獄映画、実録映画という顔に加え、二人組を主人公に据えたバディムービーとしての顔がある。パピヨンとドガを誰が演じるか。2人のキャスティング次第で、リメイクの可能性はどこまでも広がる。それに、73年版の脚本は素晴らしい出来であり、この脚本を下敷きにすればよいのである。そういうわけで、本作には69年に出版されたアンリ・シャリエールの自伝小説とともに、ダルトン・トランボとロレンツォ・センプル・Jrが手掛けた73年版映画脚本が原作としてクレジットされている。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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