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残念な「当て物件」にもされる「ダメだこりゃ物件」 何が入居希望者をUターンさせるのか?

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スタッフを悩ませる「ダメだこりゃ」物件

賃貸住宅の入居者募集をもっぱら扱う、いわゆる「客付け」仲介会社。そのスタッフらを時々悩ませてしまう面倒な課題がこれだ。

「あの物件にお客様を連れて行っても、どうせ決まらない……」

つまりその物件、入居希望者を車に乗せ、時には遠い道のりを走り、わざわざ連れて行っても、大抵誰もが、

「ダメだこりゃ」
「やめときます」

契約に至らない。

なかには、写真だけはキレイな(それは新築時のものだったりする)ポータルサイトの広告を見て、そんな物件ばかりをいくつも内見希望してくる人もいるので、スタッフは参ってしまう。

「時間を奪われ、ガソリン代も無駄にし、1円分の成果もナシ」

そんな結果になるからだ。

そこで、こうした「ダメだこりゃ物件」の何がダメなのか。ケースは無数にあるが、そのうち現場からよく聞かれる声のいくつかを下記に掲げてみたい。

なお、これを読んでほしい相手は賃貸住宅オーナーだ。

自分の物件が「ダメだこりゃ物件」になっていることを知らないオーナーは、結構多いのだ。

間取りや広さ、駅徒歩分数、設備など、スペックでは多くの客の希望に沿っていても、現場で見捨てられることが多い……そんな実例の紹介となる。

入り口から荒れている

車から降りた入居希望者の顔が、サーッと暗くなる。連れてきたスタッフも思わずバツが悪くなる。エントランス周りが汚く、荒れている物件だ。

もっとも、エントランスは入居者が寝起きする場所ではない。食事する場所でもない。ほぼ通過するだけの場所だ。だが、その印象の度合いは大きい。エントランスは物件の大事な「顔」なのだ。

暗い照明、黒ずんだ壁や天井、床に散らばったチラシ、時には虫の死骸、こぼれた飲み物の跡……。ここに住み、この場所を毎日出入りするのかと思うと、誰もがうんざりだ。

部屋がクサい

スタッフが部屋のドアを開き、「どうぞ」と言われて入居希望者が中に入る。その時……

入居希望者 (うっ、クサい…)
スタッフ (ヤバい…)

微妙な空気の流れる瞬間だ。そのあと申し訳程度に室内を見て回った入居希望者が、

「ここはわかりました。じゃ次で」

そう言ってきた瞬間、案内は徒労に終わってしまうというパターンだ。

部屋がクサい――最もよくある原因は2つ。ひとつは排水口の奥のトラップの中の封水が乾いていて、下水管のニオイが上がってきているケース。もうひとつは、換気扇の内側や周辺にクサい汚れが蓄積しているケースとなる。

そばの道路がうるさい

物件は車通りの激しい幹線道路沿い。しかも現場は坂道になっている。あるいは、信号が近いので車がさかんに発進、停止する。エンジン音や排気音、タイヤの鳴らすノイズが周りに最も響くロケーションがこれだ。

そんな物件の部屋の中で、内見中に入居希望者がスタッフに何か尋ねても、グッドタイミングで(?)トラックが「ゴゴーッ」と窓の向こうを通過。いちいち会話が途切れてしまうようでは、結果は推して知るべしだ。

汚れていてほしくないものが汚れている

部屋探しをする入居希望者にとって、部屋の中で汚れていてほしくないもの。人にもよるだろうが、その筆頭といえそうなものを挙げるとすれば、便器・トイレとエアコンだ。

さらに、これに続くのが浴室・浴槽、キッチンのシンク周辺といった、トイレ以外の水まわりとなるが、汚いトイレと汚いエアコンは、とりわけ概して印象が悪いようだ。

迷惑な人が住んでいそう

管理会社によるこんな張り紙が、ある物件の掲示板に貼られていたらしい。

「夜間のテレビやゲーム、人を集めて騒ぐなどの行為により、多くの苦情が寄せられております。騒音源だと間違えられ、ドアにクレームの紙を貼られた入居者さんもいます。皆さん非常に迷惑しておられます。つきましては―――」

これを見た入居希望者、即、「ここはやめておきます」と。あたりまえだろう。さらには、こんなケースもある。

「玄関ドア前にうず高くモノを積み上げた、室内はおそらく汚部屋=ゴミ屋敷になっているであろう部屋が存在する物件があるんです。その光景が目に入った入居希望者さん、当然ですが、全員入居を避けますね」

「当て物件」として使われる「ダメだこりゃ物件」

以上、「ダメだこりゃ物件」の例を選りすぐって5つ挙げてみた。

ちなみに、こうした物件の問題点を逆手にとって、上手に使うスタッフもいる。たとえば、入居希望者が「ダメだこりゃ物件」の実情を知らずに内見希望してきた際、彼・彼女はこう言うのだ。

「承知しました。では、それらを見たあとで私からおススメしたいもう1物件も見に行きませんか? ご希望よりも少しお家賃が上がるんですが、とてもいい物件なんです。参考までにぜひ見てほしいんです」

そのおススメしたい物件こそが、そのスタッフにとってはオイシイ「決め物件」なのだ。家賃が上がる分、仲介手数料が増えるだけでなく、実は成約時のインセンティブもたくさん用意されていたりする。

また、責任をもって勧める以上は、実際に入居希望者にとってもそれらは家賃を除けばよい物件であることが多いのも事実だ。

一方、「ダメだこりゃ物件」の立場は厳しい。ダメだこりゃ物件は、このとき「当て物件」の役目を担わされるハメになる。最後に華々しく登場する「決め物件」の魅力を引き立てるだけの存在となってしまうわけだ。

実際、結果としてこうした流れを経たうえで、本来予算オーバーなはずの「決め物件」を契約する入居希望者は少なくない。

「気付く」ことから対策を

さて、こうした「ダメだこりゃ物件」、普段自身の物件をロクに見に行きもしないオーナーなど、そんな状況にまるで気付けないでいる人も多い。

それではマズい。まず気付こう。

内見段階で見捨てられる物件とは、裏を返せば、客を「内見段階までは惹きつけている」物件なのだ。つまり内見さえしてもらえない物件に比べ、挽回は容易なはずなのだ。

たとえば、さきほどの5例――

「入り口から荒れている」「部屋がクサい」「汚れていてほしくないものが汚れている」

――これらは単に物件管理の問題だ。人が原因なのか? お金なのか? 管理会社が存在する場合も、そうでない場合も、いくらでも改善策はある。

「そばの道路がうるさい」

――道路に引っ越してもらうわけにはいかない。なので、その物件はそもそも買ったり建てたりすべきではなかったのかもしれないが、それでもできることはある。一番は、防音性能の高い窓への投資だ。

「迷惑な人が住んでいそう」

――こちらは入居者管理の問題だが、根気よく対応せざるをえないケースも多い。問題の人物を物件ごと手放すような選択肢を採れない場合は、誠意と努力、慎重かつ冷静な判断が鍵を握ることになる。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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