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感情を揺さぶって思い通りに物件を売り込む!

お客さんだけが知らない 普通の物件を「最高」と思わせる不動産仲介マンのストーリー営業術(3/5ページ)

大友健右大友健右

2017/02/07

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最初に見せるのは「がっかりしてしまう物件」

営業マンはお客さんをまず、回し物件(当て物件)に連れて行きます(3件案内する場合は、2番目の物件を中物件ということもあります)。写真で見るよりも暗い印象だったり、古く汚れていたりする残念な物件です。

営業マン:「最初の物件はここです。ちょっと築年数は経っていますがおすすめですよ!」

お客さん:「いや、ちょっと薄暗い感じの部屋ですね。うーん…(ちょっとここはないなぁ。こんなところには住みたくないよ)」

営業マン:「そうですか? なかなか人気の物件なんですけどね(よしよし、いい感じに引いてるぞ…)。では、次の物件を見てみましょうか」

後から案内する「本命物件」で契約を決める

こんなふうにお客さんをがっかりさせた後に案内するのが、本命物件(決め物件)です。回し物件と比べると格段に良い物件で、魅力に欠ける物件を見せられてきたお客さんからすると、実際の実力以上にその物件が魅力的に見えることでしょう。

営業マン:「実は僕もこの物件を案内したのは初めてなんですけど、思っていた以上に良い部屋ですね(本当は初めてじゃないけど、そう言っておかないと最初からここに連れてこいって言われちゃうからね…)。お客さんは運がいいなぁ!」

お客さん:「今日見た物件のなかではここがダントツです。ここは前向きに考えたいですね(ここに決めてもいい気がするけど、ほかの不動産会社でも物件を見てみたいな…)」

営業マン:「(ここまで“感度”が出てれば、あと一押しだな。一発、“あおり”でも入れておくか!)あっ、そういえば今朝、ウチの営業がこの部屋を検討中のお客さんがいるって言っていましたよ。これはすぐに決めないと取られちゃうかもしれませんね」

お客さん:「えっ、本当ですか? うーん…。 わかりました。ここに決めます。契約お願いします!」

営業マン:「ありがとうございます! この物件なら間違いないですよ。お客さんは本当に運がいいですね(よっしゃ! これで今月のノルマ達成だ!)」

営業マンが心のなかでつぶやいていた「感度」とは、物件を見たお客さんの興味や関心のことです。そして、「あおり」とは、迷っているお客さんの決断をうながす殺し文句のようなものをいいます。たとえば、「ここは人気物件なので、早く決めないと取られちゃいますよ」とか、「これほど条件のいい物件は、めったにないですよ」といったセリフがよく使われます。

最初にがっかりする物件を見せて、最後に本命物件を見せるというストーリーのなかで、営業マンはお客さんの「感度」、つまり感情がどれだけ動いているのか、注意深く観察しています。そして、ここぞというときに「あおり」を入れて、契約に結びつけます。

営業マンは最初から、本命物件(決め物件)で契約を取ろうと決めてストーリーをつくり、お客さんはその戦略にはまってしまったのです。

賃貸の場合、いまでは、店頭でお客さんといっしょにパソコンの画面を見ながら物件を探していくスタイルが増えてきているので、ここまで露骨なケースは減ってきていると思いますが、昔ながらの営業スタイルをとっている会社もまだ残っています。

また、物件の販売を行なう営業マンは、いまもこうした手法を活用していることが多いようです。 

次ページ ▶︎ | 営業マンの「本命物件」に隠された裏事情とは? 

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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